推しの正体
15時。行き止まりの通路に、宝箱があった。
「ん?」
『おっ』
『宝箱だ!』
『ついにゴールか』
『意外と早かったな』
だが、朝日が解析結果を告げる。
「ニキさん。モンスターの反応があるから、宝箱に擬態したミミックだよ」
「これがモンスターなのか……」
『解析はやっ』
『ミミックか。残念』
『憎たらしいことに、倒してもただの魔石落とすだけだしなぁ。普通のモンスターと変わらん』
「倒せるかな」
「スケルトンと同じくらいの魔力だから、特別強いわけじゃないと思う」
「じゃあ倒そう」
影山は透視スキルを起動。
青白く光った瞳で、ミミックの“線”と“点”を見抜く。
少し後ろに下がりつつ、ウォールブレイカーを構えて箱の真ん中にある“点”をベーシックマガジンの弾丸で撃ち抜く。
ずどんっ! という音と共に、大ダメージ付与が発動。
ミミックはなにもできず、魔石へと変わっていった。
『草』
『奇襲する側のミミックが奇襲されてるw』
『しかも一撃』
『びっくりしたやろなぁ……』
そしてミミックは予測通り平凡なモンスターで、魔石を落としただけであった。
うっかり近づけば不意打ちをされるいやらしいモンスター。
だが、解析で見抜かれればただの的であった。
「進みますか……」
分岐点にまで戻り、無言で進んでいく。
地味な絵面が続く迷路であった。
モンスターの出現頻度も、高いわけではない。
それでも接続数を確認すると、39802を記録している。
スタート時よりもかなり伸びていた。
他の配信では見られない未開のエリアの探索、というのが注目されるのだろう。
なにか雑談でもして、視聴者を楽しませた方がいいだろうか、と考える。
コメント欄を見ると、例の動画の影響なのか、壁破壊二キの推しの正体について言及するものが見受けられた。
『ニキの推しの正体って、Vtuberのあの子で合ってるの?』
『なんか動画上がってバズってたな』
『壁破壊ニキ本人が明かしてないんだから、そっとしてやれや……』
『オペちゃん説を押していきたい』
『ニキ様オペレーター男に変えて』
『コラボしてほしい』
『もっとパーティー組んでほしい』
『ニキは基本、ソロやで』
『毎回こういうコメント湧くよな』
『新規多いからなぁ』
「推しの正体は内緒です」
『お、コメント読んでくれた』
『だよね』
「本人に迷惑かかるかもしれないので」
朝日は内心でドキドキしていた。
(わ、私のことを話している……ドキドキ)
『でも正直、オペちゃんが正体だったとしたら、見つけられる気がしない』
『違いない』
『絶対バズってない』
『可愛い声だけど、特徴ないよね』
『マイナーな配信者推してたパターンか』
『そういう人って距離が近いというか、親近感湧くもんね』
『センターには絶対いけないけど、一定のファンはいるアイドル的な』
『的確な例えだなぁ』
バンバンバン! と、朝日はマイクが拾わない程度に台パンした。
バズらない声というのが彼女には一番に効いた。
「朝日ちゃんはとっても魅力的ですよ。特徴ないとか言わないでください」
と、影山がそんな抗議をする。
『すいません』
『まあ、言い過ぎたかな』
『すまんな、オペちゃん』
「はっ!? い、いえ、そんなに気にしてないので!」
(きゃ~! 影山さんが守ってくれた~! そういうところも推せますありがとうございます~~~~!!!)
朝日ちゃん、大盛り上がりである。
「……まだ迷路は続きそうですね。時間かなり経過したので、戻ります」
影山はそう宣言して、マッピングをした朝日の指示に従い迷路を出た。
罠だらけの地下エリアといい、今回の隠しルートは中々に手応えがあるなと思った。




