運命の赤い糸?
『レベル2つも上がった!?』
『まあ、強かったもんな』
『宝箱、なにが入ってるんだろ』
トレントの魔石を回収した後、宝箱を開ける。
ギギギ、という音と共に開くと――底に小さな、金属があった。
「……指輪?」
指を通せるほどの輪で、竜の頭が描かれているデザインだ。
RPGでいうアクセサリーのような、ステータスアップなどの効果が現れるアイテムが手に入ることがある。
おそらくこの指輪も、その類なのだろうと影山は考えた。
『装備品かな』
『おお!』
『未開エリアの宝箱……!』
『絶対すごいやつじゃん』
『はめるなよ』
『呪われたり、トラップつきのがあるから、鑑定に回してから!』
「わかりました」
前回のオリハルコンのような、なにか圧力を感じるものはない。
今のところは、ただの指輪であった。
アイテムボックスへ収納した後、罠フロアへ戻り、地上へ出る。
「それでは、今日もお疲れ様でした」
『おつ!』
『またね』
『ニキ様、おつかれ~』
ドローンも回収し、外へと出ると――扉の前で、ばったりとユーマと会った。
「お? なんか、お前とはすげー偶然会うな。赤い運命のなんたらってやつだったりしてな」
「えぇ……」
影山がジリジリと後ずさる。
「だから、そんな警戒しなくていいだろ! マジで偶然だし! 色々あったのは知っているが、さすがに自意識過剰だぞ!?」
(いや……赤い運命発言にドン引きしただけだが)
ユーマファンがネタにしているホモ説がよぎった。
世の中には両刀がいる。
そういう人じゃないという可能性は、ゼロじゃないだろう。
しかし影山はノーマルなので、しっかりと距離をとった。
「せっかく会ったんだしよ、メシでも一緒にいかねーか?」
「そういう作戦か……」
「どういう作戦だよ!?」
ユーマには助けてもらった恩がある。
正直人見知りは発動しているが、あまり無碍には出来なかった。
「まあ……ごはんくらい、いいけど」
「おし。じゃあ、決まりだな」
そんなわけで、勢いでユーマと夕食を摂ることになった。
★
協会で手続きを終えた後、外へ出る。
ユーマは堂々としていたが、影山は黒い帽子を目深にかぶっていた。
「なにコソコソしてんだよ」
「……顔を出すと、声をかけられるんだ」
「マジか。ファンとかか?」
「ファンはまだないけど、この間スカウトされた……」
「へー! まぁでも、そういうのあるよな。俺もお前ほどじゃないけど、ダンジョンで顔が良くなったパターンだしよ。逆ナンされたことあるぜ」
「そうか……」
「なんつーか、変わってんな」
「え?」
「普通は喜ぶもんだぜ? 女の子にモテモテ。やろうと思えば、今のお前は遊び放題の身分だ」
「そうだな……」
「なぜテンションが下がる?」
ユーマに連れられて入った店は、うなぎのお店だった。
格子戸を開けると、炭火による良い香りが2人を迎えた。
(高い店だよな、きっと……)
影山は黒い帽子を深くかぶり直しつつ、そっと値段表を確認した。
ユーマに勧められたのは二段重であった。
(二段重、九千円……)
月収二十万の元・社畜にとっては、お高い値段だ。
今となっては注文しても問題ない収入だが、身に染みた庶民が、金額を気にしてしまう。
注文を終えると、ユーマが水を飲んで一息。
帽子は脱ごうと思い、影山はそれをカウンターに置いた。
店内の客はそれぞれ食事に集中しており、誰もこちらを気にしていない。
店員も影山へ注目することはなかった。
(案外、落ち着くことができそうだな)
しばらくすると、注文したものが運ばれてきた。
おぼんに乗るのはお吸い物と、漬け物、そしてメインの二段重だ。
焼きたてのうなぎの香りと、ごはんのホカホカとした湯気。
箸でパクリと食べると、タレの旨味が口内を走る。
柔らかいのに身が厚い。これが二重で楽しめる。
甘く粒の整っているお米も最高で、うなぎと共に高め合う最高の相性だ。
(うまっ)
空腹な胃袋へ美味い食べ物が流れる、幸せな瞬間。
こういう贅沢も良いなと、影山は思った。




