元・ネオファンキング
訪問者という単語に、影山は軽いトラウマすら覚えていた。
慎重にモニターへ視線を向ける。
映っていたのは――以前、影山を助けてくれたユーマだった。
「……なぜ、ここに?」
「そんな嫌そうな声出すなよ!? いや俺も驚いたけどさ。ゲストルームの隣、俺の部屋なんだよ」
「本当に?」
「なんで疑うんだよ! 男同士でストーカーはねぇだろ! ……いや、まあ事例はあるけどよ。でも違ぇから!」
「配信、少し見たけど……ホモだって……」
「あれは視聴者のネタだよ! ちょっと色々あって、女が苦手なんだよ」
「まあ、ちらっと調べたが……」
ユーマ――“元”ネオファンキング。
18歳でダンジョン配信を始め、瞬く間に男性部門トップ候補とまで言われた男。
だが、当時の恋人を同じ所属の有名配信者にNTRされた。
しかも浮気期間は長期間。
さらに、その裏切り者の男と同じパーティーだったという地獄のオマケ付き。
徹底的な“裏切り”だった。
もし彼がなろう系主人公なら、盛大なざまぁ展開が起きているはずだ。
だが現実は残酷で、元カノと裏切り者は今も幸せに暮らしている。
「……お気の毒に」
ユーマはNTRをくらった後、2年も活動を休止した。
その間に別の配信者が台頭し、今では“元”ネオファンキングとネタにされている。
昔の嫌なことも明るい性格で笑い飛ばすタイプだが、女性嫌いが治っていないあたり、傷は深いようだ。
「やめろって、その言い方。視聴者にも散々言われたわ。いんだよ、もう昔のことだから。大体あんな女、こっちから願い下げだぜ」
「で、何の用なのだろうか」
「ほんと冷てぇな……いや、なんか縁がある気がしてよ。挨拶しに来ただけだ」
「よろしくお願いします。では」
「切り替え早ぇな……まあいいけどよ」
「あ、待った」
「ん?」
「助けてくれた時、どうしてあのダンジョンに? ソロとはいえ、ユーマって高レベルなのでは」
ユーマは、ふふんと胸を張った。
「気になるか〜? どうすっかな〜! あんま出回ってねぇ情報なんだよな〜! まあ配信で普通に喋ってるけど!」
「では、またお会いしましょう」
「そこは食いつけよ!」
(ちょっとめんどくさい人だ……)
「気になる」
「配信者の映像でよ、一瞬だけ映ったんだ。エクストラ・モンスターが」
エクストラ・モンスター。
ダンジョンで過去に観測されていない、期間限定で登場するという超レア個体だ。
透視スキルが暴く隠し通路のように、良素材獲得のチャンスでもある。
「金色の狼だった。画面越しだったけど、強さを感じたぜ。すぐ逃げられたし、配信者たちも逃げちまったけどな」
「なるほど……良い情報ありがとう」
「お前、絶対狙う気だろ……言っとくが、金色の狼は俺が狩るからな! 負けねぇぞ!」
宣戦布告を残し、ユーマは去っていった。
第二章のタイトルが元に戻りました。
申し訳ございません。
”強欲の魔女”という単語はおそらく、今後出てこないと思います。
全ボツってやつですね。
難航してしまい申し訳ないです。




