平和(?)な休日
次の日は休日にした。
配信は1日だが、色々あったので気疲れしているのだ。
休みを気楽にとれるのは最高の気分になる。
社畜時代は一週間に一日程度しか休みをとれなかったので、ものすごくありがたい。
しかし鍛錬は欠かせなかった。
朝の8時すぎ。タワマンのゲストルームを出て、トレーニングルームへ。
そこで敵をイメージしながら、飛行の練習をした。
昼食をとった後は、ネオファンへ行って射撃練習と飛行訓練もする。
休憩室を使っていいと言われているので、広々とした部屋で椅子に座り、社内の自動販売機で購入した水を飲む。
すると、休憩室に立ち寄ったネオファンの社員が、何人かあいさつに来た。
「壁破壊ニキさんですよね? これからもよろしくお願いしますね!」
「配信が休みの日は射撃訓練してるんですね~。努力家ですごいです!」
「あ、あの、私、こういう者でして。名刺をどうぞ。なにか困ったことがあったら言ってください! 力になります!」
いずれも影山は「あ、はい」(小声)といった感じで返事するのみ。
というか……あいさつに来た社員のほとんどは、女性ばかりである。
最後になんとなく事態を知った橘が、苦笑いを浮かべ影山に声をかけた。
「ウチの社員がすいません。影山さんがここで訓練をしていると、話題なので」
「いえ……使わせてもらってますし……」
「影山さんが配信を休むと、女性社員達の化粧がいつもより気合入るんですよね。あまり迷惑をかけないようにと、言っておきますので」
「どうも……」
(どこへ行っても目立ってしまうな……)
複雑な心境になりながらも、17時に会社を出た。
☆
フォロワーが早くも40万を突破した。
切り抜き動画もいくつか出回っており、エゴサがてら見てみる。
無難に“ネオファン公認「壁破壊ニキ ライブ放送切り抜き」”みたいな内容のものはいいのだが、尖ったものだと“壁破壊ニキ様、可愛いシーン集♥”みたいなものもあるので、そういうのは恥ずかしくて見てられなかった。コメント欄になにが書いてあるかは、言うまでもないだろう。
昨日のライブ放送の切り抜きを見ると、気になるコメントがあった。
影山はすぐさま、朝日に電話する。
1秒ぐらいで、朝日はすぐさま電話をとった。
「はははは、はい! そんな、私の声が聞きたいなんて、影山さん、大胆すぎっ。いやんいやん」
「??? いや、違くて。たしかに朝日ちゃんの声は推せるけど、それを言いにきたわけじゃないよ」
「はっ!? ま、間違えた! な、なにかな!」
「いや、この間の配信さ。1台、ドローンを上の方へ待機させてたんだね。全然気がつかなかった」
コメント欄で“オペちゃん、すぐさまドローン待機させてるの、気が利くな”というものがあったので、ようやく気がついた。
狩りに集中していたから……というと言い訳だが、冷静に考えると、下から脱出する時の床破壊はかなり危険だ。
偶然そこに冒険者が通行しようものなら、悲惨である。
なので、朝日はあらかじめドローンを地上に待機させて、通行人がいた場合はなにか対応しようとしていたのだ。
幸い、その地点で近くに人はいなかったので、出番はなかったようだが。
「えへへ、ニキさんの周りをサポートするのが役割だからね~」
「そっか。ありがとう」
「どういたしまして!」
用件はそれだけであった。
メッセージでよかったような気もする。
「えっと。それじゃあ、また明日」
「はいっ! 明日の配信、がんばりましょう!」
通話を切る。
ゴロゴロ、と大きなソファの上へ寝転がった。
タワマンの豪勢なゲストルーム。
最初は落ち着かなかったが、今はそうでもない。
「住むところ、どうしようかな」
影山はこれからのことを、のんびりと考え始めた。
そんな時である。
ピンポーン。
部屋の中に、来訪者を告げるチャイムの音が鳴り響いた。




