エリア・アナライザー
「飛行は多くの魔力を使うので……しかも、いまの速度は短距離を全力疾走したのと同じ負荷になります」
「ううっ……一気に疲れた……」
『毒じゃなくてよかったな』
『そりゃ消耗するわ』
『まだ実戦レベルじゃないのね』
『でも、あの速度は普通にバケモン』
『高レベル帯と並走できる速さだぞ』
『ポテンシャルの塊すぎる』
(……もっと練習しないとダメだな)
影山は息を整えながら、ひとり静かに反省した。
配信が終わったら、飛行を徹底的に鍛えよう――そう心に決める。
「しばらく休んでてね。次は通路の解析をするから」
「頼んだ……」
朝日はドローンを空中でピタリと停止させ、通路へ向けて緑色の薄膜のような魔力を広げた。
網状の魔力が前方へ静かに伸びていく。
『解析?』
『どういうこと?』
「ふふふ、驚く準備はできてますか? この私が開発した“エリア・アナライザー”はですね――」
朝日は胸を張り、早口でまくしたてる。
「搭載魔石を媒体に、極薄の魔力超音波を放ちます! マテリアル・ダンスの原理で空間の広がり、対象物の距離・形状・オドを同時解析!
さらにタイム・オブ・フライトを測定し、高速変換で全波形を取り込み――未踏エリアの状況すら把握できる、超天才的機能なんです!」
『???』
『なんて?』
『なるほど。わからん』
「反応が微妙すぎる!?」
『つまり、通ったことのない場所でも、事前にわかるってこと?』
「あ、そういうことです! 敵の位置もわかりますよ~」
『は?』
『マジ?』
『それ、実現不可能って言われてたやつじゃん』
『ダンジョンのオドが音波を乱すって話だよな』
『そんな技術使ってる配信、見たことないぞ』
『海外でも無理って言われてるレベル』
「ふっ、疑われると思って、解析結果を配信に映す準備はしてました! では――じゃじゃーん!」
朝日が操作した瞬間。
配信画面に映ったのは、解析結果ではなく――朝日のデスクトップ。
壁紙には、影山がウインクしている画像がどアップで表示されていた。
『っ!?!?!?』
『放送事故(笑)』
『壁紙、二キがファンサした時のやつやん』
『あ……(察し)』
「ぎゃああああああああ!? 違うの! これは違うの!!」
「朝日ちゃん……あの時のこと、壁紙にしてるの……?」
「二キさんが怒ってる!? ち、違います! はいっ、こっち見てくださいっ!」
慌てて画面を切り替えると、ようやく解析結果が表示された。
緑色の線が通路の形状を精密に描き、その一部が赤く染まっている。
『すげぇ……』
『マジで解析できてる』
『範囲広いな』
『二キもヤバいが、オペちゃんもヤバい』
『天才すぎるだろ』
「えへへ……そうなんですよ。天才なんです」
『デスクトップもう一回見せて』
『壁紙の話しよう』
「その話は終わりですっ!」
『赤い部分、なに?』
『さっきの触手と形似てない?』
朝日は真剣な表情でうなずいた。
「はい。そうです。二キさん、視聴者のみなさん……ここからは悪いお知らせです」
一呼吸置き、声を落とす。
「この先、モンスターは観測されていません。ですが――大量のトラップが設置されています。しかも、どれも先ほどと同じタイプ。魔力が高く、致死性が高いと予測されます」
配信コメントが一瞬で静まり返った。




