表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/10

スライム

 スライムは影山を視界にとらえると、大きく弾みながらこちらへ距離を詰めていった。


「っ! さっきより、早い」


 ウロウロしていた時とはまったく違う、素早い動きであった。影山はナイフを右手で持ち、構える。だが、ステータス補正があるといえど、所詮は戦闘の素人。隙だらけであった。スライムは勢いよく弾み、影山の胸を突き飛ばした。


「っ、あぁっ!?」


 骨がきしむほどの衝撃。まるでガタイの良い男にタックルされたかのようだ。

 ふわり、と。

 体の浮遊感と共に、硬い地面へ背中から落ちていった。

 ゴロン、と地面の上を転がる。

 背中をタイヤにするかのごとく、後ろへ二回転する。そのたびに視界が白く弾けた。

 勢いが止まると、すぐ後ろにある岩が目に入る。

 ゾッとした。

 あんな勢いで、もしも後頭部を岩にぶつけていたら……。

 ステータス補正によって体が頑丈になっているとはいえ、まだ低レベル。

 なによりも生き物としての本能が、恐怖を与えた。

 だが、ボーッとしている暇はない。

 怖さで震える手を止めるように、ナイフを強く握りしめ、立ち上がる。

 再び視界に迫るスライム。だが、右へ飛び出してギリギリ回避した。


「うああああああ!」


 久々に大きな声を出す。

 スライムは岩へ勢いよくぶつかる。そういうのもきちんと痛いのか、スライムはその場でポヨンポヨン悶えていた。

 チャンス。

 影山は近づき、ナイフを振り下ろした。

 ややへっぴり腰ながらも、ステータス補正もあり力強い一振り。

 ナイフの刃はスライムの体をそぎ落とし、青い液体が血のように辺りへ飛び散った。


「当たった……!」


 初の攻撃に嬉しくなったが、スライムが再び弾んで飛び出す。

 もうあんなのに当たりたくないと思った影山は、ギリギリ右へ飛んで回避。


「よし、ステータスのおかげで体が軽い」


 ナイフを構え、スライムと相対。

 互いはにらみ合い、ジリジリと空気が張り詰めた。

 不思議な感覚であった。

 一度タックルを食らった時は、本気で怖かった。

 安全な探索をかかげているくせに、軽い座学だけで終わらせた協会は案外、適当だとも思った。

 だけど――今、気分がとてもアガっている。

 楽しい。

 危険と立ち向かっているこの状況は、生きている実感がわく。


「……きた!」


 先にしかけたのは、スライム。

 ここ一番に体を変形させ、弾丸のごとく飛び出す。

 タイミングよく、短く右へズレてそれを回避。

 そこまでは上手かったが、右足が小石に少しひっかかり、バランスを崩す。

 しかしなんとか踏みとどまりながら、スキル“透視”を発動。

 世界が導いてくれたかのように――スライムのてっぺんに、青白い線が描かれている。


「そこだ!」


 ナイフを線めがけて振り下ろす。

 刃がそこへ当たった瞬間――ずるんっ! とバターのごとく、鋭くスライムが縦へ切れた。

 びちゃっ! というねちっこい音と共に、スライムが地面へ落ちる。

 その液体は青い光となって、消えていった。

 影山は肩で息をしながら、その様子を眺めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ