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【透視チート】会社をクビになった俺、ダンジョン配信でバズって人生逆転する  作者: 音有五角
第一章「ダンジョン配信者、影山 光」

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スライム

 スライムは目と鼻がないので、どこが前面かわからないが、影山の存在に気づく。

 大きく弾みながら、素早く距離を詰めていった。


「っ! さっきより、速い」


 ウロウロしていた時とは違う、良い動きであった。影山はナイフを右手で持ち、戦闘態勢へ。だが、ステータス補正があるといえど、所詮は戦闘の素人なので、明らかに隙のある構えであった。スライムは勢いよく弾み、影山の胸を突き飛ばす。


「っ、あぁっ!?」


 ギシっ、と骨がきしむほどの衝撃。まるでガタイの良い男にタックルされたかのようだ。

 ふわり、と。体の浮遊感と共に、硬い地面へ背中から落ちていく。

 背面に強烈な衝撃が走り、地面の上を転がる。

 背中をタイヤにするかのごとく、後ろへ二回転もした。そのたびに視界が弾け、白く揺れる。

 勢いが止まると、すぐ後ろにある硬い岩が視界に入る。

 ゾッとした。あの転がった勢いで、もしも後頭部を岩にゴツンとぶつけていたら……。

 ステータス補正によって体が頑丈になっているとはいえ、生き物としての本能が恐怖を与えた。

 しかも彼はまだ、低レベル。まだ並の感覚で十分だ。

 そして、ボーッとしている暇はない。

 怖さで手が震える。それを止めるように、ナイフを握りしめ立ち上がった。

 再び迫りくるスライム。だが、右へ勢いよく飛び出して、回避した。


「うああああああ!」


 久々に大きな声が出る。

 攻撃を外したスライムは、岩へ勢いよくぶつかった。そういうのもきちんと痛みを感じるのか、スライムはその場でポヨンポヨンして、悶えている。


「っ!? これは、チャンスか……?」


 勇気をふり絞る。

 影山は足を前へ運び、ナイフを振り下ろした。

 ややへっぴり腰な上、素人の動きだがステータス補正もあり、十分に力強い一振り。

 ナイフの刃はスライムの体をそぎ落とした。青い液体が血のように、辺りへびちゃりと飛び散った。


「当たった……!」


 初の攻撃に嬉しくなるが、戦闘は終わらない。

 スライムが再び弾んで飛び出してくる。

 もうあんなのに当たって転がりたくないと思った影山は、右へ飛んで攻撃をギリギリに回避。


「よし、大丈夫だ。体が軽い」


 ナイフを構えて、スライムと相対する。

 互いはにらみ合いながら、ジリジリと動いた。

 張り詰める空気。不思議な感覚だ。

 タックルを食らった時は痛くて、本気で怖かった。

 こんなに危ないのに、軽い座学だけで終わらせた協会は適当だとも思った。

 だけど今、気分がとても良い。

 楽しいのだ。

 敵と立ち向かう危険な状況が、生きているという高揚感になった。


「……きた!」


 先に動いたのは、スライムだ。

 体を変形させ、勢いよく飛び出す。

 瞬時に短く、右へズレて攻撃を回避。

 その動作は上手かったが、右足が運悪く小石にひっかかり、バランスを崩した。

 しかしなんとか踏みとどまり、スキル“透視”を発動。

 強化される視界。スライムのてっぺんに、青白い”線”が現れた。


「そこだ!」


 ナイフを”線”めがけて、思いっきり振り下ろす。

 刃が見事に当たった瞬間――ずるんっ! とバターのごとく、スライムが縦へ切れた。

 びちゃっ! びちゃ! という音を立てながら、スライムが地面へ落ちる。

 その液体は青い光となって、どこかへ消えていった。

 影山は肩で息をしながら、その様子を眺める。

 これが彼の初戦闘にして、初の勝利であった。

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