初配信、初ダンジョン
国内で確認されているダンジョンは、ランク分けがされている。E~SSSランクの8段階評価だ。先行部隊である自衛隊による解析と、ダンジョン法が定めている様々な基準によって、そのランクが決定されており、ダンジョンごとの難易度の目安となる。
駆け出しのレベル1、影山 光が入るのは当然、最低のEランクダンジョンだ。
電車とバスを乗り継ぎ、30分ほどで目的の場所へたどり着く。
受付にいる職員へライセンスを見せると、初回特典を案内された。武器のレンタルと、回復アイテムの譲渡だ。
ステータスに目覚めると共有スキルである「収納」というとても便利なものに目覚める。が、今はまだないので、初回だけリュックを背負うことにし、もらった物を入れていく。
ちなみにレンタルに選んだ武器は、短いナイフだ。ダンジョン産の金属でできているらしく、通常のナイフよりかなり頑丈で、刃こぼれしづらい。
モンスターと戦うにはもってこいだ。
(よし。行こう)
探索者協会支部の地下。設置された重い扉を開けると、階段が下へ続く。それを数十段降りていくと、ダンジョンが現れる。高さは7メートルほどで、広々とした空間であった。とても頑丈な茶色の土壁が左右にあり、一直線に通路が伸びている。本来なら光のない地下だが、、魔力濃度によって辺りは昼間のように明るかった。
「ステータスオープン」
探索者として覚醒した影山は、宣言と共に目の前に浮かんだステータス画面を操作し、まずは回復アイテムをリュックから格納へと移していった。そして携帯でアプリを操作し、退職金で購入した協会推薦の20万円の配信用ドローンを飛ばした。
アプリの開始ボタンを押すと、すぐに接続数が“1”になり、コメントが書かれる。
『探索者協会のAIです。あなたを見守り、ダンジョンを記録・分析します。良き探索になるよう、願っています』
「AIが監視しているのか」
AIとはいえ常に見張られているというのは、ソワソワするし落ち着かない。
だが、配信なしでの探索はライセンス停止処分となる。
この仕事をしたいなら、配信義務には逆らえない。
ナイフを右手に持ちつつ、携帯を左手に持って道を進んだ。アプリには先駆者達によって記録された、地図が表示されているので、全体と現在地が把握可能である。道に迷うことはない。
「おっと」
足に硬い感触。こけそうになる。道にはところどころに、大きな岩が転がっていた。
左右に分かれた道を右に曲がったり、しばらく進んでいくと。やがて、ぽよん、ぽよん、という柔らかい音が聞こえてきた。戦闘の邪魔になるので携帯を格納し、大きな岩陰に隠れて様子を見る。
青いゼリー状のモンスター、”スライム”だ。50センチほどの高さで、変形しながら跳ねたり、地面をナメクジのように這ってウロウロしている。
時々モゾモゾとして、雑草を食べていた。
スライムはRPG同様、初心者向けのモンスターで有名だ。死ぬことはほぼないというほど、狩りやすい相手である。
「相手は一匹……アレ、使ってみるか」
名前的には良さそうだが、せっかくのユニークスキル。
“透視”を発動しようと考えた。
「透視スキル――起動」
両目に熱が宿る。瞬間、影山の長い前髪の下にある瞳が、青く光った。視界がより良くなって、スライムの頭のてっぺんに、青白い線が浮かんでいる。
が、変化は1秒だけ。目の熱はあっという間に戻った。視界も通常の状態となる。
「あれ。もう終わり……?」
ステータス画面をオープンし、指で操作して透視スキルの説明を確認した。
透視 LV1
あらゆる現象・物体の欠点を見抜き、可視化する。クールタイム20秒。効果時間は1秒。
「い、1秒……?」
まばたきしたら見逃してしまうほどの、とんでもない短さだ。しかも再使用まで20秒と長い。
欠点を見抜くという説明は使えそうだが、扱いづらすぎて、とても実用的ではない。まだ期待はしない方がいいのかもしれない。
「……よし。今度こそ行くぞ」
初戦闘は緊張し、胸が高鳴る。怖い気持ちもあるが、ビビっていては前へ進めない。
ナイフを強く握りしめ、呼吸を整える。
影山は意を決して、岩陰から飛び出した。




