透視能力に目覚める
今から、三十年前のことだ。
地下に突如として“ダンジョン”と呼ばれるものが、天災のごとく現れた。
日本では自衛隊が先行して探索を進め、現状を確認。そうして情報を集められた後、ダンジョンが一般公開された。
ダンジョンから得られる魔石やアイテムは新たなエネルギー及び資源となり、人類を次なるステージへと導く。莫大な経済効果を生み出し、魔石を原料とする兵器や機械が開発された。
やがてダンジョンは、エンタメ化した。
創設された組織”探索者協会”は探索者に「ダンジョン配信」を義務づけたのだ。建前としては“無法地帯になりやすい探索者の監視”というものがだが、実際はインターネットを利用した金儲けである。
この世界におけるダンジョン攻略とは、大衆を楽しませるスリリングな娯楽なのだ。
☆
そんな少しの闇と、大人の事情を抱える探索者業界の支部へ、決心を固めた影山は向かった。
駅近の六階建てビル。その二階で、ライセンス発行のための研修と試験を受ける。
とはいえ、内容は誰でもこなせる座学だ。
“ダンジョン攻略におけるモラル”や“心構え”といった眠たい内容である。
筆記試験は、三時間の講義をしっかりと聞いてさえいれば、誰でも合格できる程度のものだ。
稀に眠って落ちるヤツもいるが、本当に珍しい存在だ。
影山は寝なかったので、無事に合格した。
試験会場には30人以上の受講者がいる。探索者はそこそこ人気の仕事だ。室内はにぎわっていて、慌ただしかった。
「これから鑑定を行います! 終わった方から、一階でライセンスを受け取る流れです。では、順番に並んでください!」
三人の鑑定スキル持ち職員が、並んだ新人探索者たちを調べる。
ステータスはダンジョンに入った瞬間に覚醒し、身体へ反映されるのだが、鑑定を使えば事前にその内容を確認出来るのだ。
「はい、じゃあ次の方。えーっと、影山さん」
「……はい」
小さな声で、返事をして前へ出る。
影山も髪を切ればいいものを、顔がほとんど見えないくらいの長い髪型にしている。
そのせいで、より陰キャっぽい見た目になっていた。
「えーっと……ん? おぉ、これはピーキーな……」
男性職員が難しそうに首を傾げているので、影山は不安になった。
あまり、良い反応には見えない。
影山 光 LV1
HP 20
MP 3
攻撃 1
防御 3
魔力 2
精神 3
俊敏 11
スキル 透視 LV1
「もしかして、悪いですか……」
問いかけると職員はうなり、どう答えるかと考えた。
「まず、ステータスですが。とがってますね。強いところと弱いところの差がすごい」
「とがっている……」
「初期値の平均はHPが20、MP10、それ以外が5です。なので、全体的に平均以下ということになりますね。が、弱いとは言い切れないです。俊敏は驚愕の11。初期値11という値は、7年この仕事をやっていますが、はじめて見ましたね」
「はあ……そうですか」
「そしてスキルは「透視」というものだそうです」
「……透視? 透視って、あの超能力の?」
「ええ。裸がスケスケに見える! で、有名なあの透視です。なんちゃって」
ぷぷぷっ、と吹き出し、笑う数人の男が後ろから聞こえた。
女性からは敵とみなされたのか、ジト目を向けられる。
これでは影山が、女性の裸をみたい変態のようだ。
(はぁ。ここでも理不尽だ……)
「ですが、喜んでください。いま端末で検索したところ、“透視”というスキルは出てきませんでした」
「ユニークスキル?」
「そうですね。残念ながら、まだ内容はわからないですが、あなた1人だけのスキル。ユニーク持ちは人気が出やすいので、配信が楽しみですね」
そして周りからはヒソヒソと、主に女性探索者の声。「あの人の近くは通らないようにしよう」「ね、そうしよ」なんてことを、言っていた。
(受付へいこう……視線が痛い)
前の会社といい、理不尽な運命に晒されやすいようである。
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