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アックスオーガ

 まずはクモを狩るところから始めた。

 マップで合計8か所の点滅するエリアへ向かい、壁を破壊。

 そして慣れた様子で、クモを討伐した。

 しっかりと弱らせた後、透視スキルで大ダメージを付与。

 戦いの流れは安定していた。

 危なげなく、8体を狩り、糸を4つ入手した。

 そしてマジカルゴブリンの出現するエリアへ移動し、透視で壁を見ていく。

 しかし新たな隠し通路は見つからなかった。


「これからボスへ挑もうと思います」


『マジ?』


『レベル5でEランクボス、ソロか……』


『しかし壁破壊二キだと、そんな無茶に聞こえない』


『いやいやいや』


『ヤバいって、さすがに』


『怖い』


『普通は絶対に死ぬ状況なんだよなぁ』


『二キ様、気をつけてね~(泣)』


「はい。危なかったら相手を遅くして、逃げます」


 いまだ低めな基礎ステータス。

 無茶をすれば、上昇値を上げることができる。

 影山としては、可能なら格上狩りをやってきたいところだ。


「配信で何度もオックスオーガは見ました。大振りで単調、透視スキルとの相性がいい。勝算はあります」


 視聴者とやりとりしつつ、ボスフロアへ続く場所へと移動した。

 土壁に空いた、丸い穴。

 その先に、こちら側よりも大きく開けた四角い部屋があった。

 広い場所の一番奥に――そのモンスターが、静かにあぐらをかいて座っている。

 アックスオーガ。

 名前の通り、斧をもった緑色のオーガだ。

 全長は3メートルで、筋肉質な威圧感のある見た目。

 腰に巻いた黄色の布。

 丸顔は見る者に恐怖を与える迫力があった。


『Eランク冒険者の死因ナンバーワンのボス』


『緊張してきた』


「……いきます」


 影山が室内へと、走りながら入っていく。

 瞬間――アックスオーガは立ち上がった。

 斧を握り、地響きのような足音で迫ってくる

 両者の距離が詰められ、アックスオーガが斧を振り上げる。


「オオオオオオオオオぉぉぉぉぉぉ!!!」


 地面が揺れるような、力強い咆哮だ。

 影山は透視スキルを起動した。


【手】 生物の道具動作を司る部位。攻撃ダウン付与。

【足】 生物の走行を司る部位。俊敏ダウン付与。


(大ダメージ付与がない……さすがに、ボス相手をすんなりと倒させてはくれないか)


 後ろへ下がりつつ、ガンブレードを構える。

 斧の刃。その根本に、青白い“線”と“点”が見えた。

 ズドおおおおんっ! と、土床へ亀裂を入れながら、斧が降ろされる。

 影山は横へ素早く回り込んだ。

 アックスオーガが斧を引き抜こうとした瞬間――動きが一瞬止まった。

 この時を狙う。


(少し距離をとりすぎた。早撃ち……俺に出来るだろうか)


 カチャリ、と構える。

 青白い“点”へ向けて、ガンブレードの引き金を引いた。

 青い弾丸は、点をしっかりと撃ち抜く。

 バゴおおおおん!!! と、大きな音を立て、斧がくだけた。

 斧の刃は、地面へ突きささったまま、柄と分離させられる。


「お、いけたか」


『銃弾一発で斧を破壊した!?』


『マジかよ』


『アックスオーガ、なにが起きたかわかってなさそう』


『突然の出来事すぎる』


「……?」


 アックスオーガは、刃を失った斧を茫然と見つめた後。

 叫んだ。


「オォォォォォっ!?」


 武器を一撃で破壊されることなど、想定していなかったのかもしれない。

 アックスオーガはしばらくキョロキョロと混乱した様子を見せた後、ゴミとなった斧を捨てた。


「ンゴォォォォっ!!!」


 今度は拳で殴りかかってきた。

 重い。速い。だが大振り。

 影山は呼吸を整え、横へ、後ろへとステップし、拳を避け続ける。

 心臓が跳ねる。

 だが、恐怖よりも集中が勝っていた。

 不思議と、体も軽い。

 戦えているこの感覚に、楽しさすら感じる。


(よし。やっぱり、ムダの多い動きで戦いやすい。昨日、何度も他の配信でイメトレしただけある。対応できるぞ)


『すげぇ……』


『なんて良い動き』


『この短期間で上達しすぎだろ……』


『ていうか、アックスオーガは斧なくなるとこうなるのか』


『素手で戦うのね』


『こんなのはじめてみた』


 透視スキルをもう一度起動する。

 足を狙うため、前へと踏み出した。

 素早い動きでアックスオーガの懐へ潜り込み、右足を斬る。

 横へ走り抜けながら、反対側の左足も斬った。


「ごおおおっ!?」


 アックスオーガが右足を折り、その場で膝をついた。

 左足は“線”を外してしまったが、右足は見事に命中させた。

 アックスオーガは叫びながら再びこちらへ近づこうとするも、先ほどより動きが鈍い。

 青宮は距離をとりながら、ガンブレードを撃った。


「ぐっ、ゴゴォ!」


 アックスオーガがうっとうしそうに腕を振るう。

 魔力の弾は大したダメージにならないが、牽制になる。

 弱らせたとはいえ、振るわれている拳は強力だ。

 万が一のダメージを避けるため、必要以上には近づかず、銃弾で軽く攻撃する。

 そして。3度目の透視スキルを起動。


 【胸】 生物の生命活動の大部分を司る部位。大ダメージ付与。


「そこが弱いのか」


 影山は迷いなく、前へ踏み出す。

 アックスオーガが迎撃するため、右拳でストレートを放つ。

 しかし影山は華麗にジャンプし、腕の上へ。

 そこを台にするかのように、もう一度跳躍。

 身軽な動作で胸へ接近し――胸の“線”を斬った。

 刃が“線”を断ち切る感触が、手に確かな手応えとして残る。


「ゴッ、オオオ……!」


 巨体がのけぞり、胸を押さえ、濁った声をもらす。

 そのまま、ゆっくりと、しかし重力に引かれていく。

 ドォンッ!!! と、土床が震え、砂埃が舞い上がった。

 影山はその揺れの中で、静かに着地した。

 呼吸を整える。

 心臓がバクバクと高鳴っている。

 視界の端で、倒れたオーガの巨体が微動だにしない。


「……終わりました」


 その一言を放った瞬間。


『うおおおおおおおおおおおおお!!!』


『マジで倒した!? ソロで!?』


『心臓バクバクしてるの俺だけじゃないよな』


『二キ様、今日から推します』


『これは伝説の瞬間』


『Eランクボスをレベル5で……意味わからん……』


 コメント欄が爆発したように流れ続ける。

 影山はゆっくりとガンブレードを下ろした。

 震えてはいない。


(勝てた。なんか、楽しくなってきたな)


 静かな実感が、胸の奥でじんわりと広がっていき。

 探索者という仕事に、のめり込んでいった。

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