女性視聴者も増えてくる
家に帰ってから、ネオ・ファンタジアと専属契約をしている配信者のアーカイブを見た。
そこには、別世界が広がっていた。
「こ、これがダンジョン配信というものなのか……」
まず、映像は最新の超高性能ドローンカメラのため、画質がケタ違いだ。
さらにライブ放送なのに、どういう技術が使われているのか、リアルタイムでダメージ解析というのを行っており、各メンバーのダメージ貢献度が画面の右にランキング形式で表記されている。
回復の貢献度も含まれているらしく、状況に応じて右側のランキングがコロコロ変わる。見ていて面白い。
まるでゲームのようだ。
企画によっては、1位を獲れば褒美を貰えたりする。
衣装も可愛かったり、かっこいいものであったり、様々。
定期的に変えて視聴者を飽きさせない工夫もしているようだ。
また、時には戦闘時の動きに、“映え”を意識している場面もあった。
配信者によっては、決め台詞や定番のあいさつを決めている者もいる。
終わったら雑談配信へ切り替えて“スパチャ読み”というのもしていた。
パーティーの組み合わせはワンパターンではなく、色んな配信者同士で絡む。
中には人気の“カップリング”というのもあるようだ。
……と、こんな感じで盛りだくさんである。
なんだか、お手本を見させられた気分だ。
そして……確信した。
「……俺にはムリだ」
豪華な配信を見ながら、つぶやく。
人生は変わりはじめた。
だが、影山にはとある自覚がある。
あまり良い言葉ではないが……その性格は、陰キャなのだ。
こんなキラキラなスターの真似事なんて、できない。
やりたいとも思えなかった。
「ネオ・ファンタジアさんの話は、このまま自然消滅かな」
影山は個人勢になる意志を固めた。
……しかし彼には1つ、誤算があった。
“壁破壊二キ”はもはや、世界中から注目されている。
彼が1人になりたがっても、周りが放っておかないのである。
☆
配信7回目。スタート時から、接続数は9080を超えていた。
そして開始早々――ドローンのカメラへ向かって透視スキルを発動させ、顔を右手でかざす中二病っぽいポーズをとった。
「――今日も世界と怪物を、透視する。逃がしはしない。どうも、壁破壊二キです」
『??? 急にどうした』
『今度はなに』
『推しの引退でおかしくなった?』
あれ、と影山は首を傾げた。
「昨日、ネオ・ファンタジアさんの配信を見まして。みんな決め台詞とか、定番のあいさつがあるので、俺も考えました」
『あー。なるほど(笑)』
『やめとけ』
『俺らが恥ずかしい』
『近くに人いなくてよかったね』
『はっきり言おう。センスない』
『明日、今日のアーカイブ見返してみて。二キ顔真っ赤になる』
「そうですか……じゃあ、いつも通りいきます……」
不評だったので、しょんぼりと肩を落とす。
配信者は難しいな、と影山は落ち込んだ。
だが、ここでコメントの流れが変わった。
そしてその文体は、これまでとは違うものであった。
『かわいかったよ!』
『落ち込まないで、かっこいいから♥』
『私は良いと思うよ!』
これまで男性視聴者ばかりであったが、ここにきて女性視聴者と思われるコメントが出てくるようになった。
『女性ファン出来てきたね』
『まあ、だろうね』
『女が湧いてきたか。ガチ恋とかうっとうしいからやめろよ』
『べつにいいだろ(笑)』
『女性視聴者が出たくらいでカリカリするなよ……』
『そんな性格だから非モテなんやで』
「えっと、女性も男性も、よかったら楽しんでいってください……」
コメント欄が荒れないように、軽くフォローしておく。
(ガチ恋なんてフレーズが、俺の配信で出てくるとはな……)
影山とて男なので、意識がないわけじゃない。
女性職員に熱い視線を送られるのも、ドキドキする。
正直、どんな人かわからなくても、女性から好意的なコメントを書かれるだけで、ドキドキした。
というか、嬉しい。
あわよくば……なんてことも、考えなくもない。
しかし一方で混乱もしていて、どうしたらいいかわからない。
それに女の子と付き合うなんて、ハードルが高く感じた。
「今日もボスフロアへ向かって進みますので……よろしくお願いします……」
ボソボソと呟きつつ、ガンブレードを手にダンジョンを進んだ。
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