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日給20万を超える

 アプリでマップを見ると、昨日壊した壁のところには赤いマーカーがついていた。

 視聴者に見せると、現役の探索者がコメントを打った。


『こんなの見たことがない』


『壁破壊二キ専用機能かな』


『まあ、誰も入れないからな』


「記録してくれるの、ありがたいですね。昨日入ったところは、とりあえず後回しにします」


 スライムの出現エリアを探索する。

 この辺りはすでに2カ所発見した。

 道がいくつか交錯する形で形成されているエリアで、透視スキルで見た壁はほんの一部。

 クールタイムをやりくりしつつ、瞳を青く光らせ壁を見つめる作業を繰り返した。

 中々見つからず、時間が経過した頃――ようやく、新たに1カ所見つけた。


「壊します」


 ガンブレードで“線”をなぞり、壁を破壊する。

 先にある通路は同じで、クモが降りてきた。

 武器を構えつつ、コメントに昨日のことを思い出して報告する。


「ちなみにこいつの糸は、昨日10万で売れました」


『っ!?』


『高くて草』


『マジかよ』


『Dランクモンスターなのに!?』


『こいつを狩りまくれば儲かる!』


 クモが糸を吐く。

 体が軽く、糸の飛び出したスピードも前より適格にとらえることができた。

 コンパクトに斜めへ跳び、距離を詰める。

 透視スキルを発動――まずは足の“線”を斬り、そして腹部の“点”を撃った。

 シャドウスパイダーは苦悶の声を上げる。

 そして自身の動きの遅さと、糸を吐けなくなったことに、混乱したように足をバタバタさせた。


『くっそ手際よくなっている』


『レベルアップで動き早くなっているね』


『エグいな』


『レベル4で、Dランクモンスターソロ狩り安定か……』


『こんな探索者、他にいるのだろうか』


『まあ、ありえないよね』


 しかしこちらが格下なのにはかわりない。油断はせず、透視スキルのクールタイムは距離をとって時間を稼ぐ。

 焦って攻撃したところで、影山の攻撃力はまだ6である。

 体の軽さや、スピードが上がったことは実感できるが、パワー面は多少強くなった程度。

 硬いシャドウスパイダーにダメージを与えられるとは思えなかった。


「……よし」


 クールタイムが終わり、透視スキルを発動。

 動きが鈍くなり、厄介な糸を吐かなくなったその頭部を、安全に斬る。

 シャドウスパイダーはその場に倒れた。

 しかし糸は落とさない。確率があるのだろう。


『かなり慣れたね』


『これはスカウトされる』


『未来の逸材である』


『さすがはヒーローである』


 大手ネオ・ファンタジアからのスカウト、暴れたDQNの無力化と、話題が一気に溢れてリアクションに困った。


(社員時代は“チー牛くん”なんて呼ばれて、バカにされてたのにな……)


 つなぎで始めた探索者で、人生が変わりはじめたと思った。

 胸の奥が少し熱くなる。

 しんどいことが多かったが、少しは報われたと思ったのだ。


「……次行きます」


 その後、さらにもう一か所見つけてシャドウスパイダーを狩った。そちらでも危なげなく、足、腹、とデバフを付与してから、急所の“線”を斬って撃破した。

 スライムエリアの隠し通路はここまでのようであった。昨日の分と合わせて、合計4カ所。そして次に、ゴブリンがいたエリアを探索する。

 そこでは合計、2カ所を発見した。

 ブラックドッグがいたエリアでは、3カ所だ。

 2回射撃を外し、糸を吐き出す攻撃にヒヤリとする場面はあったが、シャドウスパイダーを5体共撃破。

 そして糸は合計、4つ手に入れることができた。

 時刻は18時過ぎ。

 夢中になっていたので、つい、のめり込んでしまった。

 隠し通路が出ながら、目の奥が硬くなるような、強い疲労感に苛まれる。


「目が疲れたので、今日はこれで戻ります」


『そうしよう』


『大丈夫?』


「はい。帰って休みます」


 糸は1つ10万円もした。

 影山は今日の査定が楽しみだと思いながら、配信を終え、ダンジョンを出た。

 接続数、7090。

 フォロワーは9880。

 10000突破が、ついに見えてきた。

 さらに帰り道はコメントが賑わい『いつも面白いぜ!』『これからも壁破壊に期待』『職員さん助けたのかっこいいです』などと様々なスパチャが投げ込まれ、合計5000円もの投げ銭を受け取ることになった。


「え。あ、ありがとうございます……」


 いつも通りの淡泊とした反応だが、コメント欄も慣れたものであった。


『ええんやで』


『受け取って』


『応援してます!』





 相変わらず頬を赤らめる若い女性職員さんに査定してもらった。

 手取りは280000円を超えた。

 査定書を貰って、おお、と小さく声を上げる。


(もうこのまま探索者でもいいかもな……)


 この調子でいけば、社員時代の年収を超える。

 個人事業主の税金や国民年金などの支払いはどれほどになるか、まだはっきりとは把握していないが、楽しさと充実感もあるので、探索者でもいいかもしれないと思った。

 上機嫌な足取りで、自宅のアパートへと戻る。

 夕食は外でとり、ノートパソコンを立ち上げた。

 久しぶりにあさひチャンネルが更新されていた。

 出かけている間に、突発的に3時間配信をしている。

 社員時代は彼女の配信に、心支えられていた部分があった。

 推しあるあるだが、彼にとってあさひちゃんは“神様”みたいなものである。


(ああ、久しぶりに元気な姿を見れそうだ……って、んん?)


 配信のタイトルには――“最終回”の文字があった。

 その神様、消える模様。

本作の閲覧ありがとうございます。


もしここまでの内容がよろしければ、★★★★★評価・ブックマークをいただけると、とても助かります!


何卒、よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
こんにちは。 影山さんの推し、「お前…消えるのか……?」状態な模様。 推しは推せる時に推せ…な悲しい現実になってしまうのか?
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