シャドウスパイダーの糸に高値がつく
『ドロップアイテムだと思う』
『良かったね』
『さて、未登録モンスターのアイテムはどれほどの価値になるか……』
「まあでも、Dランクモンスターですから。1万円、とかじゃないですか」
とりあえず糸を回収し、アイテムボックスへと収納する。
そして探索を続行した。
隠し通路はあまり広くなく、一本道であった。
部屋へ通ずるなにかがあるわけでもなく、ただ真っ直ぐに伸びているだけ。
何カ所も透視スキルで壁を見つめたが、そこから次の道や部屋に繋がるものはなかった。
「行き止まりみたいですね」
『ここはこれで終わりなのか』
『なんかガッカリ』
『いや、他にも隠し通路があるんじゃないか?』
「その可能性はあると思います。ここから出ます」
出口である壁を壊し、通常の通路へと戻る。
クールタイムのもどかしさを感じながら透視し、隠し通路を探すこと2時間。
ようやく、とある土壁に青白い“線”が浮かんだのを発見。
ガンブレードで再び、壁を壊した。
中に広がる光景は、前の隠し通路と同じ内容だ。
土が赤黒く、湿っていて、空気が重い。
破壊した壁が修復されるのも同じであった。
そして空から、クモが降ってくることも。
「シャアアアアアアアアア!」
「……やります」
2体目の戦闘は右足に少し糸が絡むというアクシデントが発生。
だが、動きに支障は出なかったので、被ダメはほとんどない状態で撃破。
格上のDランクモンスター相手だというのに、ソロという形で安定した戦いっぷりである。
そして2体目の撃破時、影山はレベルアップをした。
『――影山 光のLVが4へ上昇しました。HP+7 MP+3 攻撃+2 防御+2 魔力+2 精神+2 俊敏+7』
影山 光 LV3→4
HP 31→38
MP 7→10
攻撃 4→6
防御 6→8
魔力 5→7
精神 6→8
俊敏 22→29
『おめ!』
『ちょい上がったけど、やっぱり平均以下かな……?』
『ただ、俊敏はやたら高いから、判断に困るタイプ』
『透視スキルの強化が一番嬉しいよな』
(まあ、今はそうかもしれない)
そしてクモはまたしても、糸を落としていた。
中々に運が良いのかもしれない。
そして隠し通路を探索しつつ、透視スキルで壁を確認。
しかし前回見たものとほぼ同じ内容だ。
影山は目の中心を左手の指で揉む。
「目が疲れた……」
『大丈夫?』
『出た方がいいかもね』
『あのクモはリスポーンしないんだな』
『すぐ湧くはずなんだけどね』
『1日1回限定?』
『通常モンスターのルールとは違うのか』
「少し早いですけど、疲れたので、今日はもう帰る準備します」
『りょ』
『そうしよう』
影山は壁を破壊し、帰りのルートを辿っていった。
17時ちょうど。配信終了時には、接続数は5380人へ到達していた。
☆
「退室とアイテムの売却をお願いします」
「え!? あ、は、はい。影山、さんですか」
「まあ、はい」
「ず、ずいぶんと髪、短くされたのですね……そ、そんなに綺麗なお顔を、されていて」
「……どうも」
「た、退室ですね。お待ちください」
若い女性職員が顔を赤くしながら、手続きをする。
「えっと、映像の方はもう確認済みでして。新規のアイテムは、ここで査定することができません。結果は速くても明日になりますので、よろしくお願いします」
「わかりました」
「あ、明日も……来られるんですか?」
「まぁ、多分……」
イケメン化した上、昨日の騒動だ。DQNを鎮圧した姿は、乙女達のハートを射抜いた。何人かの女性職員は影山へ熱い視線を送っている。
しかしそんなものに全く慣れていないので、影山は照れながら支部を後にした。
☆
翌日。冒険者を始めて、5日目となるフォロワーの人数は8024人。いよいよ10000人が見えてきた。
協会で入室手続きをすると、男の職員がクモの糸の査定結果を告げた。
「昨日“シャドウスパイダー”の糸が正式に値段がつきました。合計20万円になりましたので、お受け取りください」
「え? 20万? 1つ10万円ってことですか」
「ええ。実際は、ここから手数料を引かれるのですが……」
Dランクモンスターのドロップアイテムは、大体1万円前後が相場だ。
それを大きく上回る10万円。
なにが起きているのか、頭が追いつかなかった。
「あと“シャドウスパイダー”というのは」
「協会があのクモのモンスターを認定し、名づけました。申し訳ございません、命名権は協会に譲渡されているんです」
「ああいや、そういう意味では……」
「糸はBランク級の高い質を持ち、高性能な道具制作に繋がるという査定結果が出ています。それに加え、とあるメーカーが高額で独占購入したので、ここまで値上がりした形になりました」
「は、はぁ……ありがとうございます……」
査定書を貰った。
30パーセントの手数料を引かれても、手取りは14万円。
たった1日で手に入れる額としては高額だ。
(すごい……あさひちゃんにスパチャでも投げようかな……でも、あんまり高額だと引かれるだろうか……というか最近、あさひちゃん配信してないんだよな。どうしたんだろう。元気だろうか。心配だ)
そんなことを考えながら、ダンジョンへ向かおうとすると――50代ぐらいの男に、呼び止められた。
「すいません。影山 光さんで、間違いないですね?」
「えっと、はい……」
メガネをかけた、高身長の頭の良さそうな男であった。
「お忙しい中、呼び止めてしまい申し訳ございません。私、株式会社ネオ・ファンタジアの営業担当取締役、橘 遠矢という者です」
すっ、と丁寧な所作で名刺を渡される。
職員の方をちらりと見るも、こくこくと頷いている。
容認のようだ。
案件配信などもあるので、企業の人間が支部を出入りすることはある。
ただ、影山はまさか自分のところへ来るとは思わなかった。
「もしよろしければ、お時間をいただけないでしょうか。今後のことで、ご相談したいことがございます」




