未登録モンスターのドロップアイテムを入手する
「そ、そうなんですか?」
『昨日の迷惑系でしょ?』
『あいつらアカウントBANされてて草』
『壁破壊ニキはヒーロー』
『これからも推します』
(情報が早い……もしかして、誰か映像をリークしたのかな……)
同時にDQN達も晒されることになるが、それはどうでもよかった。
ただ、影山の手柄が拡散されるのは気恥ずかしい。
そんなことを考えながら、前回の記憶を頼りに壁を壊した地点へと移動。
アプリが表示する地図には、隠し通路の記載はまだなかった。
なにせ、たった1人しか出入りできない話だ。対応に困っていると考えられる。
「たしか、ここだったかな」
ぱっと見は普通の、土壁の前へと立つ。
そして透視スキルを発動させた。
“線”へ向けてガンブレードをふり下ろし、壁を破壊する。
瞬間、ズドドドドォォォォ、と土壁が音を立てて、粉々に崩れていく。
『何度見ても草』
『ガチでエグいな』
『あのクモはいるのかな?』
『さて、隠し通路にはなにがあるか』
『wkwk』
隠し通路へと入った後、土壁が自動で修復される。
アカウントにはなにか処理がされているのか、ドローンは今回、やかましい警告を発しなかった。
そして前回同様に上から、クモが1体降りてくる。
「……来たか」
まだ透視スキルはクールタイムに入ったまま。
回避に専念すると判断。クモはこちらを威嚇しながら、糸を勢いよく吐き出した。
初見ではないので、動きがよく見える。
しかし緊張感は高く、心臓がドクドクと高鳴った。
最悪の事態は、透視スキルが使えない状態で糸に捕ること。そうなれば、逃げる手段はない。
動きを観察し、冷静に判断。横へ跳ぶ。
宙を舞った糸がべちゃり、と土床に付着した。
ガンブレードを構え、引き金を引く。
青い魔力の銃弾は空気を切り裂いて、クモの体へと命中。
だが、威力が足りない。クモはそれがどうしたと、怯まずにこちらへ突っ込んできた。
(俺の低い魔力じゃ、ほぼダメージなしか……)
ガンブレードの弾丸の威力は、魔力の数値に依存する。
レベル差がある上に、影山は俊敏以外のステータスは平均以下。
動きの早さ以外は、あまり期待できない。よって火力不足は否めなかった。
小回りの利く立ち回りを意識。距離を取りながら、突進をひらりと回避し、隙を見ては銃撃を素早く放つ。
そして危険な糸攻撃は、絶対に避ける。
前回より気持ちに余裕があるが、油断できる要素はない。
『見てるこっちがハラハラする』
『でも、戦い方が上手くなっている』
『動き回るの大事!』
『マジで気をつけて』
そしてここからが反撃。透視スキルの、長いクールタイムが終わったのだ。
影山の瞳はスキルの発動と共に、幻想的に青く光った。
情報が視界に映る。
【足】 移動を司る部位。俊敏ダウン。
【腹部】 糸を生成する部位。糸による攻撃を完全停止。
(【足】で動きを遅くした後に、腹部を狙おう)
素早い判断。ためらいなく、前へと出た。
距離を詰めた後、ガンブレードを振り抜く。
空気を裂く刃が“足”の“線”をなぞった。
鋭い音とともに、クモの足へ致命的なダメージが走る。
「キィィィ!?」
切断には至っていないが、これでクモには強力なデバフがかかった。
動きが明らかに鈍くなっている。
すぐさま横面へと向かうも、接近では間に合わずクールタイムへ入ってしまうと考えた。
射撃で腹部の“点”を狙う。
「この距離なら……!」
飛び出した青い弾丸が、その制限時間ギリギリで“点”へと命中。
クモは顔を勢いよく上げ、大きな悲鳴を上げた。
口と尻を動かすも、ご自慢の糸を外へ吐き出すことはできない。
「キイイイイ!!!」
なにをしたんだと憤るように、クモが真っ直ぐに突っ込んでくる。
だが、俊敏を下げられ、糸を吐けないクモは脅威じゃない。
距離をとり、回避行動をとり、安全に時間を稼いだ。
『クモの様子がおかしい』
「腹を攻撃したことにより、糸の吐き出しができなくなりました」
『おおっ!』
『さっき腹に打ち込んだ銃弾か』
『そんなこともできるのか』
『いっけえええええ!』
時間稼ぎが終わり――再び、透視スキルを起動。
影山は目にも止まらぬ速さで接近し、ガンブレードを振るった。
大ダメージ付与である“頭”の“線”を刃でなぞる。
キィン! と、クモの頭から大きなダメージが与えられた。
「きぃ、いぃ……」
クモはバタン、とその場で倒れる。
「……よし」
『強い!』
『またしてもDランクモンスターをソロ撃破(笑)』
『しかも安定してたなぁ』
『ガンブレードの扱いも上手くなってきたね』
『これは武器、決まってきたか?』
『臨機応変に、すぐ遠距離攻撃できるのはやっぱ相性良いね』
クモの体が魔力となって消える。そこには魔石と共に、バスケットボールぐらいの大きさの、白い糸の塊が現れた。
「……これは?」
影山は魔石を回収した後、糸をじっと観察した。




