髪を切りにいこう
コメントの指摘が気になったので、髪を短くしようと考えた。
ただ1つ、気になることがある。
ダンジョンに潜り初めてから、体に変化があったのだ。
(レベルアップで稀に容姿が整うらしいけど、俺がそうなるとは……身長も少し伸びたし……)
原型はあるものの、新しい顔・容姿はどうにも恥ずかしかった。
短くするのは、少し勇気がいる。
商業施設の中にある、近所の床屋へ行った。
1000円カットのお店だ。
店内はガラガラで、待ち時間なしで席に座ることができた。
店員は若い女の子だ。黒髪ショートカットで、活発そうである。
「今日はどうなさいますか?」
「短めで……」(ボソボソ)
陰キャな影山は、床屋が苦手だ。
店員が髪を切っていく。
徐々に明らかになる影山の顔に――店員は、頬を赤らめて手を止めた。
(どうしたのだろうか……)
「はっ!? す、すいません」
そして店員は、やたらと質問をするようになった。
「お仕事はなにされてるんですか?」
「今は探索者です……」
「趣味はなんですか?」
「配信を見ることです……」
「私も配信者さん好きですよ~。どんな動画見るんですか?」
(あさひちゃんのことを言うのは、なんか恥ずかしいな……)
「えっと……色々……」
人見知りを発動する。
影山はあまりしゃべらないタイプの店員の方が好きだ。
そしてカットが終わり、店員さんの「お疲れ様でした。また来てくださ~い」という声を受けながら、お店を後にする。
(疲れたな)
陰キャにとって、美容院は少し疲れる場所だ。
学生の頃は1人で知らないところに入れなかったり、お店の店員に声をかけられなかった、というレベルだったので、これでも成長した方であった。
☆
配信4日目。慣れた様子で、影山はいつも通りダンジョン配信を開始した。開幕のあいさつはないが、オープニングからコメントがものすごい勢いで流れる。
『ごめん。誰?』
『どちら様?』
『イケメンで草』
「髪をバッサリ切りました」
『こんな顔してたんか』
『女性視聴者増えそう』
『絶対切った方がええんやんけ』
「いや、違うんです……レベル上がったら、顔と体が少し変わったんですよ」
『最初の方は、レベルで見た目変わるらしいね』
『個人差あるし、変わる人はかなり珍しいんだけどな』
『壁破壊ニキは変わるタイプなのね』
『いいなぁ』
『知り合いが何人か探索者はじめたけど、全員フツメンのままだった』
『俺もイケメンになりたい』
(恥ずかしいな)
影山は逆に恥ずかしかった。
彼は目立つのが苦手だ。
「それじゃ、進みます」
練習中のガンブレードを手に取り、歩みを進めた。
目指すは、隠し通路だ。
『イケメン化で忘れてたけど、昨日はお手柄でしたね!』
『さすがです』
『DQNを素手で無力化した動画、出回っているよ』
「……え?」




