炎上系(?)配信者と出くわす
次なる獲物、ブラックドッグが出てくるエリアへと移動を完了。
奴らは名前の通り黒い犬で、全長は1メートルほど。
犬と言うと可愛いらしいイメージがあるだろうが、全く可愛くない外見だ。その顔つきは凶悪で、目の色は血のように真っ赤で不気味だ。
基本は3体の群れで行動するという特性上、集団戦になりやすい。
ゴブリンほどの俊敏・パワーはないものの、数で押されるのは厄介だ
ましてや影山はソロだ。
コメント欄はざわざわした。
『マジか』
『このままゴブリンで練習するかと思った』
『普通に危険だと思うけどな~』
「ダメだと思ったら、すぐに逃げます。俊敏は高いですし……ん?」
影山は警戒し、立ち止まった。
視線の先には、ブラックドッグ3体にトランクス一丁で立ち向かう男がいた。
わけがわからない。
「は?」
目をゴシゴシ、とこする。
見る。疑う光景だが、見る。
が、それは幻覚ではなく”マジ”であった。
ケガはしていないものの、武器を持たない男が、ブラックドッグの攻撃をかわし続けている。
そしてそんな謎の光景を遠くからドローンで撮影する、男2人と女1人がいた。
なにがおかしいのか、3人共ゲラゲラ笑っている。特に派手なギャルの見た目をした女が、サルのオモチャみたいに手を叩いて爆笑。
色々と理解に苦しむ状況であった。
「ウケんだけど~。つーか、視聴者も40人突破してきて、良い感じじゃね? ガンバ~」
が、トランクス一丁男は限界なのか、ヒーヒー言っている。
「死ぬ! マジ死ぬって、早く助けてよ!」
しかし助けを求めるほど、3人にとっては面白いようで、より爆笑していた。
『あー……』
『察したわ』
『他のルートいこうか』
「あれはなんですか?」
『気にすんな』
『迷惑系だろ』
「迷惑系? あ、前にちらっと言ってた……」
『そうですね』
『なんかの罰ゲームじゃないの。知らんけど』
『くっだらね』
『特定した。あいつら「ぴえんクリエイターズ」だ』
『名前ダッセ』
『でも、あのギャルの子可愛いし胸デカい』
『そんなのどうでもいいわ』
『絶対底辺配信者だろ』
「でも男の人、危ないですよ。助けた方がいいのでは」
『優しいなぁ』
『純粋かよ』
『ほっとけ』
『自業自得』
視聴者と色々やり取りをしていると、事態が変化。
トランクス一丁男が影山をちらりと見る。すると3体のブラックドッグをしっかり引き連れながら、こちらへ向かって走ってきた。
「そ、そこの人! 助けて、助けて~!」
不快な行動に、コメント欄が加速する。
『は?』
『ふざけんな』
『なんでこっち来るんだよ』
『二キの方確認して、わざとやん』
『逃げよう』
「いえ。助けます」
『マジ?』
『壁破壊ニキ、優しいな……』
練習中のガンブレードではなく、扱いやすい斧へと切り替える。
成長した透視スキルを起動。
青く光った瞳は、様々な情報。そして線と点を映し出した。
【頭】 生物の急所。大ダメージ追加。
【足】 生物の走行を司る部位。俊敏ダウン付与。
【尾】 バランス維持をする部位。スタン付与。
ゴブリンとの戦闘経験上、急所はちゃんと避けられる傾向にある。
頭はよじったりなどして、ずらされるかもしれない。
厄介だ。
しかし尾は、そんなに警戒されないような気がした。
(すれ違いざまに狙ってみよう)
与えられた時間はたった2秒。
そこで一気に状況を良くする。
クルクルパーな男が引き連れたブラックドック。
その横へと素早くステップし、尾へめがけて斧を振るった。
1体目。どすん、と見事に命中した。
「キャン!?!?!?」
ブラックドッグは甲高い悲鳴を上げる。そしてその場で、痺れたように動けなくなった。
これが透視スキルの力だ。続くもう1体目にも命中させる。
が、かなり警戒され始めたのか、最後の1体には攻撃を横っ飛びで回避された。
「ガルルルルっ!」
透視の効果が終わり、影山の瞳が元に戻ってしまう。
斧を持った影山と、動けるブラックドッグが対峙した。
トランクス一丁男は振り返らず、どんどん遠くへ逃げる。
罪悪感ゼロのようだ。
ブラックドッグが前へと勢いよく飛び出した。
影山は後ろへと跳躍し、かみつき攻撃をひらりとかわす。
すぐさま斧を横で一閃することで、反撃。だが、これをブラックドッグは伏せる形で、ギリギリ回避してきた。コンパクトで良い戦い方である。小回りのある動きはカウンターを素早く成立させた。ブラックドッグは前へと飛び出し、影山の足めがけ鋭い牙を向ける。
「っ!」
一瞬の攻防。回避が間に合わないと、影山は判断。
思いっきって右足を上げて、前へ突き出す。
放たれるキック。足の裏は、ブラックドッグの鼻へ突きささった。
「がふっ! ううううっ!」
「鳴き声はワンコだな」
微妙にズレた感想を口にしつつ、どんどん攻める。すかさず斧を斜めへ振り降ろした。
ブラックドックの横っ面に見事命中し、ばたり、と床へ倒れた。
スタンで動けないブラックドックは、斧で斬り倒して安全に処理。
戦闘不能になった3体は、魔石となった。
「ふう……」
『ナイス』
『すげええええ』
『ソロなのにガンガン進むね』
『ブラックドックもいけそう!』
『透視上がったのデカいな』
『安定してた』
「そうですね。当てる難易度が低くなりました」
コメントと会話していると、爆笑していた3人がズンズンとこちらへと近づく。
その顔は不機嫌そうなものであった。
ギャルの女の子が、イラだった低い声を上げる。
「おい、そこの陰キャくせーやつ! 邪魔すんなっての!」




