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【透視チート】会社をクビになった俺、ダンジョン配信でバズって人生逆転する【更新休止中】  作者: 音有五角
第三章「新パーティー結成」

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幕章「小さな捨て猫」

 夜。影山が家に帰ってから確認した例の動画は、現在70歳の元・探索者「神崎 武蔵」という者が主役のチャンネルであった。

 神崎は"元祖・ガンブレードマスター"と言われるほど、マイナーなネタ武器ガンブレードを使いこなし、全盛期はAランクダンジョンを突破したパーティーに所属していたのだという。

 Sランクダンジョンのクリアは叶わなかったが、挑戦し生還した経験もある。

 いわばレジェンド探索者の1人だ。

 ただ、マイナーなガンブレード使いということと、配信では自己主張が控えめだったことから、他のレジェンドと比べるとやや影が薄い……という立ち位置だ。

 探索者を引退した今は、ガンブレードの道場を開いている。

 しかしかなりニッチな世界のため、弟子の人数はわずか5人。

 かつてAランクを突破したパーティーメンバーという、1流の探索者にして有名人なのに、こじんまりとしていた。

 だが、その腕前はかなりのものならしく、ガンブレードに興味を持った者の多くは彼の道場の扉を叩くようだ。

 動画では、カメラを持った若い男が神崎に問いかけた。


「――今回見ていただいた映像は、急上昇中のガンブレード使い“壁破壊ニキ”です。師匠、いかがだったでしょうか」


 撮影場所は昼の広々とした道場内。

 神崎は硬い床に正座していた。白く短い髪に、貫禄のある鋭い顔立ち。


「うむ……強いね」


 しかしその声は小さく、ボソボソとしていた。

 ガンブレード使い、陰キャ多い説。

 だが、ガンブレードのことになると饒舌になるのか、その後はすらすらと言葉が出てきた。


「しかし粗が多い。無駄な動き、不要な力みがある。スキルの影響か、当てようという意識が前に出すぎている。

 動きが良く、銃の腕前も常軌を逸しているが、これは多くの努力と優れた才能によって身につけたものだ。技術自体はそれほど高くない。

 それと、彼の武器が素晴らしい。規格外なほど、技術者の熱意と技術を感じる。重量、重心、グリップ……全てが彼の動きに合わせ、調整されている。彼の能力が200%は引き出されるのではないだろうか」


 影山は少し驚いた。

 200%という数字は、朝日も言っていたことだ。

 偶然かもしれないが、映像を見ただけで正確な分析が出来ている、という可能性も浮き上がってくる。


「では師匠、点数はいくつになるでしょうか?」


 採点は100点満点中でつける。

 この動画はガンブレード使いのレジェンドが、現役のガンブレード使いを分析するという企画なのだ。


「40点だ」


「っ!?」


 神崎の言葉に、画面の前で影山は衝撃を受けた。

 40。

 かなり低い点数だ。

 そしてこの辺りが、炎上した理由である。

 コメント欄はこのようになっている。


『これ許可とってんの?』


『はい老害』


『若者を認められない老害はここです』


『お前ごときが壁破壊ニキに勝てんの?』


『ぷぷぷっ。ザコがなんか言ってまーす』


『なんでこいつ上から目線なの? 偉そうでうざい』


 低い点数と、点数評価という上から目線、無許可という3点がネット民を怒らせた。

 しかし過剰といえば、過剰の炎上だ。

 引退したアスリートが選手を評価したり、試合結果を分析・予測したりする動画はよくあること。

 無許可はたしかに失礼だが、それを言い出したら世の中に出ている様々な個人のスポーツチャンネル、SNS、レビュー動画が成立しなくなる。

 ましてや、神崎のチャンネルはフォロワーが5万人。

 大した規模ではない、こじんまりとしたチャンネルだ。

 動画の内容も上から目線と言われているが、神崎の実績は十分だ。ガンブレード使いの元トッププロと評しても良い。

 現役の影山を分析・コーチングしても、失礼にはならない立場とも考えられた。

 ユーマが“悪意のある内容じゃない”と言ったのは、この辺りである。

 とはいえ……影山は、ショックであったが。


「40点……そんな……」





「ち~~~っす! 夜血ブラッディ・騎士ナイトです! 今日はCランクダンジョンをソロで探索しようと思います」


 20代後半の金髪でイケイケとしたギャル男が、ダンジョン配信を開始する。

 無所属だが、Dランクダンジョンを突破した中堅探索者だ。

 今回の視聴者も300人を超え、そこそこ賑わっている。


『ちっす』


『え、お前ごときがCランクソロ?』


『壁破壊ニキの影響かな?』


『死ぬの期待』


『事故期待』


(今日も視聴者うぜーな……まあ、いいが)


 ダンジョンの中を進んでいく。

 今日限定で雇ったオペレーターの指示に従い、あえてモンスターを避けて移動する。

 そして裏で打ち合わせした通り、右腕を上へ上げる合図を夜血ブラッディ・騎士ナイトすると――オペレーターがカメラを切った。


「どうぞ、今はライブ放送に映像も音声も流れていない状態です」


「よしきた!」


 夜血ブラッディ・騎士ナイトはアイテムボックスから、ペットキャリーを取り出した。

 中には一匹の白い猫が入っている。種類はシンガプーラで、瞳の色の緑、毛の色はブラウン。すらりと細く、体は20センチで小柄だ。人間の肩に乗れるほどで、実際、この子は人の肩へ乗りたがる癖がある。


(アイテムボックスに入れても生きてるのか。頑丈なやつ)


 ペットキャリーの扉を開けると、猫は外へ出てきた。


「ニー?」


 知らない場所に、不思議そうな声を上げる。

 そして夜血ブラッディ・騎士ナイトは逃げるように走り出した。


「たく、猫でも飼えばモテるかと思ったが、そんなことはなかったぜ! じゃあな、役立たず!」


 ステータス補正もあり、夜血ブラッディ・騎士ナイトはトップアスリートのようなスピードで駆け出していく。


「ミャ~」


 こんなしょうもない飼い主でも、飼い主なので、猫は不安そうに鳴きながら夜血ブラッディ・騎士ナイトの後を追う。

 しかし速度に追いつけず、やがて猫は置いていかれてしまった。


「ニャー……」


 寂しげににゃあにゃあ鳴くも、それに答える者はいない。

 辺りをウロウロと歩いた後、やがて壁にぴったりとくっつけて、イカ耳になりながら体を丸めた。


「……」


 そしてそのまま、固まって動かなくなる。

 知らない場所に突然1匹にされて、怖いのだ。

 そんな猫に――ダンジョンは容赦なく、牙を剥く。

 どすん、どすん。

 槍を持った1体のリザードマンが、猫へ近づく。

 そしてその槍を――猫へ向けて、突き出した。


「にゃああああ!?」


 突然の攻撃行動に、猫は悲鳴を上げながら飛ぶ。

 なんとか槍の回避に成功するも、リザードマンは猫をじっと見ている。

 猫は身の危険を感じ、走り出した。


「ニぃー! ニぃぃぃぃ!!!」


 悲痛な鳴き声を上げながら、猫の逃亡劇が始まる。





「カメラの電源切れてたみたいですねー! いやいや、そろそろ買い替え時かなぁ」


『なんか白々しいな』


『ナニをしていたんですかねぇ』


『BANされんぞ』


『不法投棄じゃないだろうな』


「違いますって。ただの放送事故ですよ~」


(放送が固まるとか、よくあるし。これくらいならバレねーっての)


 夜血ブラッディ・騎士ナイトは何事もなかったかのように、ダンジョン配信を適当に続けた。

 しかしオペレーターの解析ミスもあり、彼は運悪く、近くに探索者がいない状態で5体のリザードマンと遭遇してしまう。


「「「「「ぐるるるっ!!!」」」」」


「うわあああああ!? さ、さすがにこの数は無理だ! 助けてぇぇぇぇぇ!」


『さよなら』


『はい終わり』


『バイバーイ』


 夜血ブラッディ・騎士ナイトの冒険は、ここで完全終了した。

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