ネオファンの対応
次の日。ネオファン本社会議室にて、橘が4人へ向けて今後の方針を話した。
「みなさん、お疲れさまです。ミカさんとリクさんは弊社の所属ではないものの、ユーマさん、そしてリクさんの所属するパーティーが弊社所属です。騒動に対する貴重な探索者への負担や影響は大きいと判断し、炎上への介入を決定しました」
ユーマ達当事者への確認もとったようで、そこから動き始めたようだ。
そして橘はテキパキと、影山達へ説明していく。
「ミカさんとミカさんのご両親へも話をしております。主に対応していくのは、家族への誹謗中傷及び殺害予告に対する開示請求、そして法的処置になります。また、SNSや掲示板での度が過ぎた書き込みに対しても、対応をしていきます」
「なんか悪いッスね、いつもいつも」
ユーマがそう言うと、橘はにこりと微笑む。
「これが我々の仕事です。むしろ、対応が遅れてしまったと痛感しております」
「い、いいッスよ、そんなの」
「それで……ここからは、余計なおせっかいかもしれませんが。ミカさん、ミカさんのご両親、そしてミカさんのお子さんについての状況を、説明していきます」
ユーマがミカとの接触を継続してしまったのは、ここが原因だ。
だからこそ、橘はここに触れたのだろう。
「現状、ミカさんがシングルマザーとしてお子さんを育てるのは困難だと思われます。生活の乱れ、金銭面での困窮など、多くの問題を抱えています。脱税などの負債も多く、自己破産するようです」
「脱税って……んなことまでしてたのか」
「ミカさんのご両親は、ミカさんのお子さんを引き取る意志のようです。また、お子さんは三か月ほど前から、ミカさんのご両親の元にいたようですね」
ちょうど、例の動画よりも前の時系列だ。
「まあ、そうなるッスよね……」
ミカを知るユーマは、なんだか予想通りだとため息をつく。
「私は直接お会いしたのですが、ミカさんのご両親は胸を痛めているようでした。今回の炎上や、ユーマさんの件も。娘の言動は自分達の教育の結果だと、強い責任を感じているようです。お子さんを引き取っている意志が強いのも、そういった責任感から来ているようです」
「……俺は大丈夫ッスよ」
「伝えておきます。幸い、ミカさんのご両親は経済的に豊かなので、子育てに致命的な問題は発生しないと思われます」
「それは、良かったッス」
「ミカさんは今回のことで、更生することを願いましょう。責任ある、一児の母なのですから」
「あいつは今後どうするつもりなんスか?」
今は連絡をとらないようにしているユーマは、彼女の今後を把握していなかった。
「実家に帰るようです」
「じゃあ、子供とは一緒になるんスね」
「ええ。ミカさんのご両親は、ミカさんの更生を促すために、色々考えているようです。知り合いの伝手で、仕事をしたり……SNSでも、モデル業でもない、今とは違う世界に関わることが、彼女にとっていい薬になるのでは、という方針のようです」
「あいつ、チヤホヤされる環境しか知らないッスよ。怒られたことなんて、絶対にない」
「ふふふ、いいんじゃないでしょうか。ビシバシ鍛えられた方が、彼女の今後のためです」
こうして、ミカにまつわる騒動は収束へと向かっていった。
大手ネオファンが声明を出したことにより、インターネットでの炎上は一気に鎮火へ向かっていく。
ミカの更生はそう簡単にはいかないだろうが、ミカの両親はこの問題に全力で向き合う予定のようだ。
☆
4人はネオファンの会議室を出た。
「とりあえず、一件落着になりそうだね」
マモルが言うと、リディアがじっとユーマを見る。
「あの。ミカさんと連絡とか、とってないですよね」
「ああ。もうとってねーよ。まあ、心配ごとは大丈夫そうだし、俺に出来ることはなさそーだし……そもそも、あいつのために連絡とってたわけじゃねーしな」
「……それなら、良いです」
リディアは少し頬を膨らませている。
本当は、彼女は怒っているのだ。
「また、辞めるとか、言わないでください。苦しいこと、相談、してほしいです」
「お、聞いてくれんのか?」
「はい」
「……サンキューな。まあでも、昨日ので結構スッキリしたからよ。いい加減、前を向くぜ」
そんな会話を交わしつつ、本社を出る。
ふと、ユーマがあることを思い出した。
「そういや、話題はつきねーもんでさ。ニキ、なんかお前関連でネットが盛り上がってんぞ」
「え……なにかしただろうか」
不安になり、影山は少し震えた。
「ああ、べつにお前が悪いってわけじゃねーよ。トラブルじゃないしな。ただ……お前を題材にした動画があって、それが炎上してるって感じだな」
「炎上なら、まずいのでは」
「あー、そういうタイプの炎上じゃねーよ。動画の制作主も、べつに悪意ねーし内容も問題ないからな。ただ、なんで炎上しているのかっていうのは……あー、まあ、見たらわかる。後でURL送るぜ」
「わかった。確認するよ」
トラブルじゃないというのなら、身構える必要はないだろう。
家に戻ってから、動画をゆっくり確認しようと考えた。




