道場破りへ、いざ出陣!
「……本当に行くのか?」
影山の問いに、車を運転するユーマが答える。
乗っている車は国産の普通に高い車で、某GT―○だ。
「おうよ! ごちゃごちゃ外野に言われるのは、お互いにうぜーだろ? だったら俺らで会った方が、色々とスッキリするぜ」
昼。炎上してるし、道場破りしようぜ――などと言い出したのは、ユーマだ。
影山は人見知りを発動して、断ろうとしたが、勢いに負けて車の助手席に乗せられた。
(元祖ガンブレードマスター、か)
最初は断ったものの、神崎に会いに行くこと自体は楽しみでもある。
ガンブレード使いの元祖……Aランクダンジョン突破、そしてSランクダンジョンからの生還。
間違いなく実力者だ。
ただ……1つ、懸念点がある。
(なぜユーマは、道場破りなどと言うのだろうか……)
ユーマは騒動を面白がっている節がある。
その証拠に、あともう1人――同伴している朝日に、カメラマンを頼んでいた。
車内の会話の様子も、撮影している。
「神崎さんは今も現役の探索者と手合わせできるから、得られるものはあると思うよ」
「まあ……そうだな……」
朝日の言葉に、影山はボソボソと相槌を打つ。
運の良いことに道場はあまり遠くなく、30分ほどで到着した。
近くのコインパーキングで車を停め、調べた住所へと向かう。
街中、見えてきたのは黒く四角い2階建ての建物だ。
出入口はガラスの引き扉であり、中はロッカールームと階段、観葉植物ぐらいしか見えない。
しかし頑丈そうな黒い壁と扉があるので、その中がトレーニングルームということなのだろう。
探索者を対象とした施設なので、ダンジョン産も取り入れられた強度の高い設備だ。
「おし、いくぜ! 朝日ちゃん、カメラ頼んだぜ」
「はい。えっと、ニキさん、大丈夫?」
朝日の問い、影山はこくりと頷いた。
「まあ、うん」
ユーマを先頭に、影山、カメラマンの朝日の順番で中へ入る。
そして彼は黒の扉を、ガチャリと勢いよく開けた。
「おらぁ! 神崎 武蔵、ケリをつけにきたぞ、こらぁぁぁぁぁ!!!」
「ちょちょちょ、ちょっと、ユーマ!?」
いよいよ面白がっているのが確定したユーマに、影山は慌てた。
動画としてエンタメ意識し、プロレス感を出しているのだろうが、影山はそういうノリが苦手だ。
エンタメじゃなくて、本当にケンカになったらどうするつもりなのだろうか、とか考えて不安になってしまう。
「んなっ!? なにごと……あ、あなた達は!?」
道場内には2人、ガンブレードの模擬剣を持つ男がいた。
1人は神崎 武蔵。
もう1人は、高い身長のアイドルのように整った顔立ちをした、若いイケメンであった。
声を上げたのは、イケメンの方である。
「む……」
神崎はリアクションが薄く、小さく唸っただけだ。
イケメンが模擬剣をアイテムボックスへ収納し、こちらへ近づいた。
「もしかして、ユーマさん、壁破壊ニキさんですか?」
「おう、そうだよ」
ユーマが答えると――イケメンは、頭を勢いよく下げた。
「今回はすいませんでした! 師匠に壁破壊ニキさんの映像を見せ、企画を出したのは僕です! 申し訳ございません!」
3人が固まる。
ユーマはあれぇ、と小首を傾げた。
「なんかすげー真面目そうなのが出てきた……なんだよ、せっかく“壁破壊ニキ、因縁の元祖ガンブレードマスターのケンカを買う”ってタイトルで動画アップロードしようとしたのに――いでで、ニキ、脇腹をつねるな!」
「人のことをオモチャにするな」
炎上した当事者同士のプロレス動画が伸びるのは知っているが、当然、影山はそんな動画の許可は出さない。




