Cランクダンジョンの隠し通路へ
午後から始まったユーマパーティーの配信は、前回と同じCランクダンジョンだ。
ただし今回は、影山が見つけた隠し通路のポイントへと向かう。
なんの変哲もない、通路の角。
その前へ、4人は立ち止まった。
「さて、再確認だ」
ユーマが3人へ向き合う。
「ニキの配信を見てもらうとわかるが、隠し通路は事前情報がない。正直、かなり危険だ。落とす素材が高額だったり、強力なモンスターと戦えたり、メリットは計り知れねーが……一緒に来るとなると、覚悟をきめてもらう必要がある。もし引き下がるなら、今だぜ」
『ニキはガンガン潜っているけど、まあ、危ないよなぁ……』
『意思確認大事』
『相手がなにしてくるかも、トラップがあるかもわからない』
『ゲームと違って、残機1だしね』
『初見殺しあったら終わる』
『やっぱ情報は大事だよね』
『事前に対策できない……』
先に、マモルが意志を表明した。
「俺は進むぞ。成り上がりたい脱サラオッサンとしては、これ以上にないチャンスだ」
リディアもこくりと首肯した。
「私も、進みます」
『リディアにゃんファイト』
『リディアにゃん必要だもんね』
「……」
音声コメントのイジりに、リディアは無言で顔を赤くした。
うし、とユーマは声を上げた。
「じゃあニキ、頼んだぜ」
「うん」
影山は透視スキルを起動し、壁の“線”を斬る。
ゴゴゴゴゴゴゴ、と石壁が崩れ、目の前に銀色の階段が現れた。
こちら側の遺跡とは違う材質だ。
綺麗な銀色は、豪華な建物の中であるかのよう。
「ニキさん、Bランクにはギリギリ届かないけど、通常ルートより強力な魔力反応があるから、気をつけて」
「わかった」
朝日の警告に、影山はこくりとうなずく。
いつも通りといえば、いつも通りの流れだ。
マモル、影山を先頭に中陣にユーマ、最後にリディアという形で階段を上がる。
破壊されたダンジョンの壁は、ゴゴゴゴゴゴゴ、という音と共に戻っていく。
『銀色でピカピカしてんな』
『階段を上がった先にはなにがあるか……』
『wkwk』
『なんやこのルート……』
『みんな無事でいてくれ』
『ドキドキしてきた』
『これぞ壁破壊ニキ!』
4人が階段を上がると、四角の広々としたフロアへ出た。
「おっと、これは……殺意の強いダンジョンのようだな」
マモルが思わず、そんなことを呟く。
フロアの天井、壁には槍のように鋭い銀色のトゲがびっしりと生えているのだ。
ボールでも投げたら、そのままトゲに突き刺さるだろう。
『ヒェッ……』
『やっば』
『あぶねぇ』
『○イワナみたいやな』
『なっつ』
『孔明でもおるんか?』
『ポンポン落ちて来ないよな?』
『普通にそのパターンだと思う』
『アーカイブ見ろ。隠し通路はトラップ多いぞ』
『ヤバすぎる』
『鬼畜難易度の予感……?』
『残機1で死にゲーはしゃれにならんぞ』
4人は一旦立ち止り、オペレーター達の解析を持つ。
朝日が代表して、音声でパーティーへ結果を告げる。
「トゲには毒反応があるので、接触したら状態異常が付与されます。近辺に緻密な魔力回路は見当たらないので、トラップの反応はありません。ここのフロアと、先の通路については進んでもらっても問題ないです」
「わかった。ありがとう、朝日ちゃん」
「う、うんっ。引き続き解析するね」
『オペちゃん声震えとる』
『やっぱ解析重要よ』
『オペチーム頼んだで』
『うっかりは許されない』
『しっかりやれよ』
『探索者の命綱である』
『本当に進んで大丈夫か?』
『透視でちょっと見ておいた方がよくない?』
『なんか今回、ギミックが怖い気がする』
『おじさん、気をつけて~』
『ニキ様……』
ユーマがコメントを確認する。
「ニキ。一旦、見える範囲で良いから、透視でもざっと確認してくれ」
「わかった」
透視スキルを起動。
トゲには反応があり、“点”と“線”が見える。
やろうと思えばトゲを破壊できるようだが、これはダンジョンのギミック。
壊したところで、復活してしまうだろう。
「今は、俺にできることはあまりなさそうだ」
「了解。先生とニキを前に、俺が真ん中、リディアちゃんが後ろで引き続き進むぞ。なにかあったら、互いにフォローし合うんだ。いいな?」
3人は頷き、ユーマパーティーは隠し通路の探索を開始した。




