リディアにゃん
「倒せましたね」
影山が短く、小さい声で勝利を宣言。
『888888』
『キター!』
『さすが』
『いけたやん!』
『安定してたな。Bランクもいけるのでは?』
『もうちょっと魔法攻撃への対応を高めた方がよくね。いちいち角破壊する手間がダルいし無駄だろ。ニキもすぐに大ダメージ付与を狙った方がいい』
『面白かった!』
『ユーマはネオファンキング!』
『ニキ様、素敵だった♥』
『おじさんすごーい』
『リディアちゃんもよかった!』
『先生もおつ!』
『みんなお疲れ様 600円』
『Cランクダンジョン突破記念! 1000円』
コメント欄が賑わう。
ふう、と影山は息をつく。
疲労感と共に、強い達成感があった。
元社畜だった男が、ここまで来られたのだ。
感慨深いものがある。
「ニキさん、大丈夫?」
朝日の音声に、影山はうなずく。
「うん。ありがとう、大丈夫だよ」
トゥンク。朝日ちゃんの胸が高鳴った。
(たくましいニキさんかっこいい……!)
(心配してくれる朝日ちゃん尊い……声可愛い……)
(スクショしないと。録画は当然してます!)
(耳が幸せだ)
ユーマがパーティー全員とハイタッチをしつつ、魔石を回収した。
「相場が大体13万ぐらいならしいから、1人3万だな。たく、ステなしの生身だったら即死であろうバリバリ電撃牛さんで3万ぽっきりなんて、難儀な仕事だぜ」
『だね』
『え、高いと思う俺はおかしい? 貧乏人だからかな』
『ボスはリスポーンに時間かかるから、討伐制限がかかる』
『みんなで分け合おうってね』
『1パーティーでボス魔石じゃらじゃら持ってたら、ペナルティが与えられます』
『Cランクはリザードマンの魔石が1個2600円前後。ざっと、Cランク帯の探索者は年収2000万~3000万ぐらいならしいね』
『うーん。顔晒して命がけで、これは微妙。改善した方がいい』
『他のランク帯の年収気になる』
『思ったより貰ってないな』
『ん? 多いと思うけど。余裕で高所得じゃん』
『あくまでも参考だが……Eランクは魔石1個200円前後で、年収200万~300万。Dランクは魔石1個1000円前後で、年収900万~1000万』
『Dランクから余裕をもって飯食える感じか』
『高いか安いかは、人の感覚によるんじゃね』
『探索者は配信業務でもあるから、エグい奴はエグいぞ』
『女儲けているイメージある』
『エロで釣れるしな』
「お前ら金の話好きだな~。ま、俺の感覚じゃあ全然少ないぜ。探索者なら、でっかくロマンを追えってな! なあ、マモル先生」
「そうだな。金、最強、名声。その全てを手に入れられるのが、探索者だ」
お金の話で盛り上がるリスナーにユーマ達はそう締めくくり、4人はボスフロアを出た。
☆
「……」
借りているマンションの部屋に戻ったリディアは、シャワーで汗を流し、夕食を摂った後、ノートパソコンを立ち上げた。
ユーマには気にするなと言われたが、つい、エゴサをしてしまう。
大手の動画サイトには、ユーマパーティーの切り抜き動画が上げられていた。
それを視聴すると――例のシーンが、ハートマークが入り乱れる編集付きで使われていた。
『――リディアです。今日もダンジョン配信を始める、ニャン♪』
「うにゃああああああああ!?」
絶叫。リディアは恥ずかしさのあまり、悶絶した。
なお、コメント欄は比較的好評である。
『リディアちゃん可愛い』
『ニャン助かる』
『次からリディアにゃんって呼ぼう』
『がんばっている感じ好き』
『リディアにゃん応援するわ』
「黒歴史……はぁ……」
リディアはしょんぼりと、肩を落とした。




