ライトニング・バイソン
ユーマの宣言通り、この日の配信はボスへ挑むこととなった。
モンスターを討伐しつつ、オペレーター達の指示の元、最短ルートでどんどん突き進んでいく。
そのおかげで辿り着いたのは、1時間後であった。
重々しく、大きな横開きの扉。
この中に、ダンジョンの大将――ライトニング・バイソンがいる。
「おし。マジで強いから、みんな油断するなよ」
ユーマの言葉に、影山達がうなずく。
コメント欄も賑わっていた。
『ドキドキしてきた』
『がんばろう』
『Cランクボス……撃破したら、中の上ぐらいかな』
『だね。そのくらいの箔がつく』
『大体ここでつまづくか、事故るからな……』
『中級者脱出感あるよな』
ユーマが扉の中央に触れる。
ゴゴゴゴゴゴゴ、と扉が横に開いた。
目の前には石の階段が現れる。
そこを上がると、サッカーグラウンドのような大広間が目の前に広がった。
そして部屋の中央には、大きな茶色の牛が佇んでいる。
全長は4メートル。見た目は牛をより筋肉質にしたようなものだ。
額から伸びる2対の角は鎌のように曲がり、先端が中央へ向いていた。
「モ゛オォォォォ!!!」
牛が咆哮を上げる。
そしてさっそく先手を打ち――角の中央に、バチバチバチ!!! と、雷の光が迸った。
「雷魔法、広範囲! 来ます!」
朝日が音声で全員に伝える。
ユーマが氷魔法で氷の壁を生成し、パーティーを守った。
バチンっ! ジジジジジっ!!! と、氷の壁を雷が焼き尽くしていく。
濃厚な白煙が上がり、氷が弾け飛んでいく。
しかしそれでも、氷の壁はなんとか持ちこたえていた。
やがて鳴りやむ雷。
『うわあああ』
『初手からヤバいって』
『殺意高い』
『画面眩しい』
「おし、いくぞ!」
ユーマの言葉と共に、4人は飛び出した。
影山は靴の魔力で空を飛びながら透視スキルを起動し、角へ向かって銃を撃つ。
ベーシックマガジンによる弾丸は、“点”を見事に撃ち抜いた。
右の角が、ばごんっ! と砕けて、落ちていく。
「モオォ!?!?!?」
『一発で角を砕いたw』
『さっすが』
『牛さんもびっくり』
『もう1本いけば魔法を防げる感じか?』
「そうですね」
左の角も狙う。
しかしさすがに警戒され、ライトニング・バイソンは顔を動かし、着弾点をずらされた。
5秒が経過し、透視の効果時間が切れてしまう。
マモル、ユーマが接近してライトニング・バイソンへ攻撃。
しかしこのボスは見かけ通りパワーがあり、マモルのガードも大きく後ろへノックバックされるほど、力強かった。
「モ゛オォォォォォ!!!」
ライトニング・バイソンは咆哮と共に、再び雷魔法を角から放った。
1本破壊されたからか、先ほどよりも範囲も威力も低い。
しかしそれでも、強力な雷が、辺りに何本も解き放たれる。
ユーマは氷の壁で、影山は空中飛行でやりすごす。
「ぐっ!?」
だがマモルに被弾し、苦悶の声を上げた。
右肩を中心にジュウウウ、と焼かれ、黒煙が上がる。
高い耐久があるといえど、高威力の雷魔法の被弾は一瞬にして肌を焼いた。
リディアがすぐさま回復魔法をかける。
傷が塞がるも、やはりこの雷魔法が大きな脅威だ。
次こそは、と影山は再び透視スキルを発動させた。
1発がわずかに“点”とズレる。
しかし2発目にして“点”へ命中し、角が砕けた。
『キター!』
『これで魔法を防げる!』
『いけるぞ!』
「おっしゃ、ナイスだニキ!」
ユーマが声を上げる。
ライトニング・バイソンは怒りの咆哮を上げながら、ドスドスドス、と空中の影山へ向けて突進する。
その前をマモルが立ち塞がった。
「赤い布はないが、こちらにいらっしゃい」
マモルの大きな盾へ向かって、ライトニング・バイソンが突進。
パワフルな衝撃音が、ズドオオオオオんっ!!! と、辺りに木霊した。
角を2本砕かれた影響か、ライトニング・バイソンのパワーとスピードに若干の乱れが生じている。
マモルのノックバックが、先ほどよりも勢いがない。
「――スタンシールド!」
盾から迸る雷。
しかしライトニング・バイソンには効果がなく、そのままマモルを押し出した。
『雷耐性か?』
『まあ、ボスランクだしね。これで止められるほど簡単じゃない』
マモルが苦悶の表情を浮かべる。
横からユーマが氷魔法を放ち、ライトニング・バイソンへダメージを与える。
すると今度はそちらへヘイトが向き、ユーマへ向けて突進。
だが、ぶつかるかと思われたその時に氷の壁を生成。
ライトニング・バイソンは勢いよく、壁に額をごちん!!! と打ちつけた。
これほどの突進を受け止められる氷の壁の耐久は、かなりのものだ。
ライトニング・バイソンは暴れ、ユーマとマモルに攻撃を続ける。
その動きは確実に鈍っていた。
マモルへ突進が放たれた瞬間を狙い、ユーマは氷の剣を地面へ突きたてた。
「ニキ、頼んだぜ! ――アブソリュート・ゼロ!」
ギギギギギ! という鋭い音と共に、地面が凍っていく。
氷はライトニング・バイソンの足元を縫い付けるように、一気に広がった。
「ンモォ!?」
ライトニング・バイソンは暴れ、氷にヒビを入れるも、その一瞬の足止めがこのパーティー相手には致命的となる。
影山は透視スキルを起動し、ハイパーブーストを使い接近。
ライトニング・バイソンの大ダメージ付与――右前足、左後ろ足を一閃。
「ン゛モ゛ォ゛! ン゛モ゛ォ゛ォ゛!!!」
ライトニング・バイソンが絶叫を上げる。
そして最後に――頭のてっぺん、脳天へ向けて兜割り。
金色の刃が、ライトニング・バイソンの頭に突き刺さった。
「ンっ、モぉ……」
ライトニング・バイソンは背中を仰け反らせ、どすん、と硬い床へ倒れる。
その体は消え、魔石となった。
『――影山 光のLVが23へ上昇しました。HP+38 MP+13 攻撃+13 防御+15 魔力+13 精神+14 俊敏+20』
影山 光 LV22→23
HP 463→501
MP 171→184
攻撃 170→183
防御 192→207
魔力 171→184
精神 188→202
俊敏 286→306




