デュフフフ!!
次の日の朝。ネオファン本社のトレーニングルームにて、影山とユーマが対峙していた。
両者の手には、ネオファンが制作した模擬剣が握られている。
距離を置いたところには、朝日がハンディカメラを持って2人を撮影していた。
「いくぜ、ニキ!」
先に動いたのは、ユーマだ。
ステータス補正によって、常軌を逸した踏み込みによるスピード。
その勢いのまま、振り下ろされる剣。
影山はハイパーブーストを起動し、素早く右をとる。
見えるユーマの無防備な左腕。
そこへ向けて、横へ剣を振るった。
「おっと」
しかしユーマは素早くそちらへ向き直り、剣で受け止める。
キン、キン、キン! と3撃ほど影山が振るうも、全てさばかれた。
そしてユーマが放った一閃が、影山の右足に当たる。
「うし、7本目! ま、俺の方が優位だな~」
「ぐぬぬ……」
影山は悔しそうに唸った。
午後の配信前に模擬戦をしよう……と、ユーマに誘われ、ここまでやって来た。
そうして始まった訓練なのだが、先に剣を当てた方が1本というルールでやったところ、ユーマが7本、影山が3本という勝ち星の数となった。
今でも素振りなどの基礎練習をしている影山にとっては、苦い結果である。
「けど、探索者始めたばかりでこれなら、かなりのもんだけどな。正直、驚いたぜ」
「基礎はこんなに差があるんだな……」
「経験の差ってやつだな。まあ、そう落ち込むな」
ユーマは昨日、マモルと同じように訓練していたらしい。
明日には、リディアと訓練をする予定のようだ。
「映像OKでーす」
「おう。サンキューな」
朝日の報告に、ユーマが礼を言う。
映像はユーマのチャンネルで、ショート動画としてアップロードするらしい。
(ちゃんとSNS使っているんだな……)
ユーマはこれ以外にも雑談配信などもしていて、配信者としても活発だ。
年収のことを考えれば、こういったことに力を入れるのも正解なのだろうが、影山は性格的に気が向かない。
「それにしても……ちょっと来てくれ、影山」
「ん?」
ユーマが影山の首へ腕を回し、小声で喋ってくる。
「朝日ちゃんめっちゃ可愛いし良い子じゃん。お前も珍しく、すげーリラックスした感じで会話してるし。付き合ってんのか?」
「そういうわけじゃないが」
「なんだよ、付き合っちまえよ。あの感じは絶対いけるぞ!」
「付き合う……朝日ちゃんと……」
~影山の妄想タイム~
「ただいま」
影山が帰宅すると、朝日がお迎えに来てくれた。
「おかえり! ごはんにする? お風呂にする? そ・れ・と・も」
朝日はパチンっ☆ とウインクをした。
「朝日にしちゃう?♥」
~影山の妄想タイム終了~
「ありがとうございます。デュフ、デュフフフ……」
「おい。おーい。ダメだこいつ、デュフデュフ笑いながら、意識がどっかいってやがる」
そして2人がコソコソしている所を、朝日はむむむ、と見ていた。
「仲が良い……負けられない……」
投稿したショート動画は、ただ鍛錬しただけの内容であるにも関わらず、100万再生を突破したらしい。




