マナーとルールを守って、楽しくダンジョン配信をしよう!
リザードマン、コカトリス、爆発ピヨピヨと癖の強く、油断のできないモンスター揃いのCランクダンジョンだが、ユーマ新パーティーは安定して狩りをすることに成功していた。
タンク特化のマモル、サポーターのリディア、オールラウンダーのユーマ、火力担当の壁破壊ニキ。
それぞれのピースが上手くハマっている。
当初は荒れ気味であったチャット欄も、空気感がかなり柔らかくなっていた。
『良い感じ!』
『連携とれてる』
『おもろいわ』
『フォローした』
『やっぱネオファンよ』
『壁破壊ニキ最強! 壁破壊ニキ最強!』
『ニキが頭1つ抜けてるんよなぁ』
『おおきくなったら、おじさんと結婚する~』
『ニキに人気集中してるなぁ』
『そういうグループあるよね』
『あるある』
『まあ、それはしゃーない』
「この調子なら、明日にはボスへ挑んでみてもいいかもしれねーな」
ユーマがそう言うと、影山にコメントから質問が来た。
実は戦闘中に1カ所、隠し通路を見つけていたのだ。
『隠し通路はどうするの?』
『壁破壊は?』
『パーティーでいくの? ソロ?』
「俺はユーマ達となら、パーティーで入ってもいいと考えてます」
お、とユーマは声を上げる。
「マジか。けど、ニキの配信通りボスを倒してからにするか。隠し通路は通常ルートより強力な傾向があるんだろ?」
「そうだな」
「なら、まずはボス討伐だ。このメンツならいけんだろ!」
と、そんな雑談を休憩でしていた時であった。
4人組の20前半と思われる、若い女性パーティーがこちらへ近づいてきた。
「こんにちは! あの、壁破壊ニキさんですよね?」
「きゃ~♥ 本物だ、可愛い!」
「ルナティック・ガールズです!」
「会えて嬉しい~」
ずいずい、と影山の方へと群がっていく。
(またこのパターンか……もういいよ。お疲れさまでした……)
すすすす、とユーマの影に隠れた。
「おい。俺を盾にすんな」
「あとは任せた……」
「お前目当てなんだから、俺じゃ撒けねーよ」
『ルナティック・ガールズか』
『マジかよ!』
『ニキすげー逃げてるw』
『本当にグイグイ来られるの嫌いなんだな』
『これガチで偶然?』
『いや。わりとワンチャン狙ってた感じだよ』
『やっぱか』
『どういうこと?』
『1人ニキファンだから』
『1人というか、4人共メス声出してるんですがそれは』
『有名なの?』
『フォロワー50万超えだし、有名だよ』
『モデル業とかもやっている』
『探索者としては中の中ぐらい』
『顔で売れたタイプか』
『正直、ニキとは釣り合わんよなぁ。ミルキーハートぐらいじゃないと』
『ミルハーと絡んだら、大荒れだろ……あの子達、アイドル売りだし』
コメント欄がなにやら賑やかだ。
しかしそちらへ気を配っている余裕はない。
ルナティック・ガールズがすごく近づいてきて、なにやらきゃあきゃあ騒いでいる。
「……」(ドンドンっ!)
『オペちゃん無言で台パンしてて草』
『マイクで拾われてますよ』
『結構デカめで草』
「はっ!? ち、違いますよ、これは……貧乏ゆすりですっ」
『同じようなものだろw』
『フォローになってないw』
『貧乏ゆすり、美容にいいしね』
「っ!? そうなんですか???」
『食いついてて草』
『なんだこのカオスな状況』
影山がユーマを盾にしているので、結果的に彼の近くに美女達が集まっている構図のため、リディアが遠くからそれをじーっと見ている。
マモルはふむ、と腕を組んで様子を見守っていた。
ユーマが両手を上げる。
「あー、君達? ニキはこの通りシャイだから、そんな騒いで近づいちゃダメだぞ?」
「え~、めっちゃ可愛いですね♥」
「キュンってしましたぁ」
「じゃあ、最後に握手してください!」
「ほっぺにチューでもいいですよぉ」
「もう~、こら! なに言っているの♥」
「「「「あはははははははっ!」」」」
ユーマの表情がひきつる。
「なにを見せられてんだ、俺は……ほれ、壁破壊ニキ。握手ぐらいしてやれ」
すっ、とユーマの横から影山の腕が伸びる。
「俺に隠れたまま握手会すな」
が、影山は最後までユーマを盾にしたまま、4人と握手をする。
賑やかな4人はお礼を言って、去っていった。
影山が重いため息をついて、ユーマの背中から出てくる。
「疲れた……」
『モンスターの相手よりもキツそう(笑)』
『今日一ゲッソリで草』
『変わってんなぁ。普通の男なら鼻の下伸ばしそうだけど』
『普通に可愛いしね、ルナティック・ガールズ』
『でも、凸行為はイメージ下がったな』
『まあ、マナー違反ではあるよね』
『どういうこと?』
『配信義務づけの都合上、探索者は有名人が多いからね。だからすれ違った時の、不用意な声かけはマナー違反なの』
『なるほど』
『実際、ちょっと迷惑だったしなぁ。ニキが嫌がっているなら尚更』
ユーマはうーん、と考えた。
「ぶっちゃけ、声かけ行為はもう避けられないと思うぜ? 俺らはともかく、壁破壊ニキは人気ありすぎだしな」
「はぁ……」
「でっけーため息つくなって。しゃーねーだろ。まあ、悪質だったら、その時は対応するけどよ。あれぐらいのレベルだったら、迷惑行為とは言えねーからな。適当にあしらうぐらいにはなってくれ」
「はぁ……」
「どんだけ嫌なんだよ、お前……」
マモルは肩をすくめた。
「やれやれ。世の男達は、代わってやりたいぐらいだろうな。そうだろ、みんな?」
『それな』
『女選び放題とか羨ましすぎる』
『俺ならあの場で連絡先交換する』
『全員お持ち帰りする』
『俺もイケメンになりたい』
ええ……と、影山はコメント欄にドン引きしていた。




