待ち合わせのハードルは高い
次の日。前日と同じ流れで、午前中はソロ狩りをした。
探索の途中でレベルが上がり、俊敏が20上昇したので、コメント欄がざわついていた。
『――影山 光のLVが22へ上昇しました。HP+37 MP+13 攻撃+13 防御+15 魔力+13 精神+14 俊敏+20』
影山 光 LV21→22
HP 426→463
MP 158→171
攻撃 157→170
防御 177→192
魔力 158→171
精神 174→188
俊敏 266→286
そんなところでこの日のソロ探索を終え、昼食を摂りにいく。
定食屋でしょうが焼きを食べた後、パーティーの待ち合わせ場所である協会へと向かう。
受付にはパーティーで行った方がいいので、協会内で待ち合わせになるのはあるあるだ。
今日は早めに協会へついてしまい、30分前に到着してしまう。
多くの探索者達がロビーチェアに腰かける中、1人の見知った銀髪がいた。
リディアだ。
北欧の美女、というか外見だと美少女に見える彼女は目立つので、すぐにわかった。
無表情で携帯をいじっている。
隣には誰も座っていなかった。
マモルやユーマの姿はない。
(話かけづらいな……というか、話しかけたとしても、その後気まずくなってしまうような気がする。隣に座って、お互い無言で携帯をいじっていたら、変な空気になるんじゃないだろうか。ここは気づいていないフリをして、ちょっと遠くの席に座ってユーマ達を待とう)
リディアは出入口近く。
影山は遠目のところへと座った。
ただ、視界はリディアや出入口が見えるポジションである。
携帯の画面を見つめていること20分後、ユーマが入ってくるのが見えた。
リディアの方に気がつき、そちらの方へ話しかけた。
「よう。お前は毎回早くて、真面目だな~」
「っ!? ゆ、ユーマさん。お、お疲れ様です」
「そんな頭下げなくていいっての……」
「いえ、先輩なので!」
「体育会系みてーなこといいやがるな……いいっての、そういうの。俺はかてーの嫌いだからよ。タメでいーよ。俺、マモル先生にもタメなんだぜ?」
「え、えっと、が、がんばります……」
ちなみに過去の配信で、コメント欄から“ユーマ、女性にお前呼びは失礼”というこのご時世らしい指摘を何度も受けているのだが、ユーマは『そんなめんどくせーこと言うなよ。多分、これから仲間になるやつなんだし、こまけーことは気にすんな』と返している。
ユーマが隣に座ると、リディアは顔を赤くした。
「ユーマ、さん。相談が……」
「なんだよ?」
「ユーマさんとニキさんが有名で、とても注目されているパーティーなので……私、色々と厳しいコメントをもらってまして」
「そうなのか? 全然みてねーや」
細かいことを気にしないユーマは、指摘コメントなんて見ようともしない性格だ。
ただ、リディアは繊細なようで、色々とチェックしてしまうようである。
「その、まとめると地味で影が薄いという意見が多いようで……」
「どうでもいいこと気にすんだな。やりたいようにやればいいじゃねーか」
「で、ですが、ユーマさんの足を引っ張りたくなくて……」
「真面目だな、おい」
「キャラ作りというか、おしゃべりが上手になるコツとか、ありませんか」
(なんか、ニキと似たようなこと言ってくるな。ただあいつは、悩んでたわけじゃねーけど)
正直、ユーマとしてはこの手の質問を真面目に答える気はなかった。
正解を自分の中に持ち合わせていないからだ。
なので、適当に答える。
「語尾に“にゃん”ってつければいいんじゃねーか?」
「っ!?」
「最近、獣人? ってのが、流行ってるらしーからよ。いずれは猫耳でもつけて、にゃんにゃん言えばキャラづけになるんじゃねーか?」
リディアは想像するだけで恥ずかしいのか、耳まで赤い。
「わ、わかりました……やってみます!」
「おう。まあ、コメントなんか気にするなよ」
と、ここでマモルが到着し、2人のところへ行った。
「お嬢さん、ユーマくん、待たせたね」
「おっす、先生」
このタイミングで、しれっと影山が混ざりにいった。
「こんにちは……」
ユーマはにかっと笑みを浮かべて、影山の首に片腕を回した。
「よう! 今日もよろしくな!」
「ああ……」
(近いです……)
ユーマだと不思議と嫌ではないが、こういうタイプの人間と関わって来なかった影山は、不慣れな距離感である。




