コカトリス&爆発ピヨピヨ
午後。予定通りの時間から、配信は開始された。
「さて。今日はもうちっと奥の方にまで挑戦してみっか」
リーダーのユーマの宣言と共に、一行はリザードマンを倒しつつ遺跡を進んでいく。
影山は携帯でコメント欄を確認したが、今のところミカ関連の書き込みは見受けられない。
向こうは動画など諸々の件で炎上中だが、一旦こちらは大丈夫なようだ。
こっそりユーマの方も聞いてみたが、穏やかな雰囲気だという。
「――ニキさん。この通路を左に曲がった先に、コカトリス1体とピヨピヨが3体います」
「了解」
影山が短く返事をする。
ユーマが目を丸くした。
「毎度のことながら、ニキのオペちゃんは仕事が早いな」
影山が頷く。
「しごできオペちゃんです……ふひひひ……」
「小声でボソっと笑うな、こえーよ。つーか、デレデレだな」
デレデレ、というキーワードに朝日がすかさず反応した。
「そ、そうなんですか? 嬉しいな~、ふひ、ふひひひ……」
『同じ笑い方で草』
『敵の近くでイチャイチャすな』
『はいはい』
『2人の推し合っている感じすこ』
『やっぱりニキの推しの正体は……』
『いやいやいやいやいやいやいやいや』
『ダメダメダメダメダメダメダメ』
『聞こえない聞こえない聞こえない』
『ガチ恋勢発狂』
『接敵するんだから気を引き締めてもろて』
『ふざけている場合じゃないよ』
『ピヨピヨは危険だよ』
コメント欄にやや怒られつつ、4人は進んでいく。
そして報告通り、4体のモンスターが現れた。
「コケェェェェェ!!!」
広い室内でもビリビリ響き渡るほどの、高く不快な鳴き声であった。
一番大きな、全長3メートルの鶏がコカトリスだ。
頭と体は鶏だが、足と尻尾がトカゲに似ていて、鱗と毛皮がちょうど半分の割合で同在している、アンバランスな見た目である。
そんなコカトリスの周りにいる3体が、ヒヨコに似たボールのように真ん丸なモンスター、ピヨピヨだ。
名前の通り、可愛らしいヒヨコの見た目をしている。ただし全長は1メートルを超える大きさである。
「ピヨ~~~」
なぜか気だるげなオッサンに似た低音を発しながら、ピヨピヨが一体飛び出す。
その体が膨らみ始めた瞬間、ユーマが氷魔法を詠唱した。
「おっと、ウチのメンバーに近づくなよ!」
ピヨピヨの前に、氷のぶ厚く高い壁が瞬時に現れる。
「ヒ゛ヨ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛!!!」
『ピヨピヨが膨らんだ!』
『来るぞ!』
ピヨピヨは絶叫しながら、ドゴオオオオオ!!! という爆音と共に、ダイナマイトのような勢いで爆発した。
氷の壁が揺れ、表面がクレーターのようにえぐれ、ヒビが入る。
「エゲつねぇ威力だぜ……マモル先生、いけるか?」
「ああ。任せておけ」
『こっわ』
『絵面残酷ってか、ちょい怖いんだが』
『ピヨピヨはこんな感じよ』
『なんでこんなおっさんっぽい鳴き声なの』
『シラネ』
『ビジュアルはヒヨコで可愛いのに……』
『一部熱狂的なファンがいてぬいぐるみ化されてます。爆破時のおっさん声つきで』
『こえーよ』
『可愛くねぇよ……』
『先生いけるんか』
影山は透視スキルを発動し、ピヨピヨの“点”と“線”を見る。
額:爆破無効+スタン付与
「ユーマ。ピヨピヨの爆破は、透視スキルで消せるみたいだ」
「え、マジか!?」
早撃ちで2体のピヨピヨの“点”を撃ちぬく。
正確な射撃はピヨピヨの額に当たり、その場で跪いた。おっさん声で苦しそうにピヨピヨ鳴いている。
ユーマも氷の刀を握り、前へと出た。
「さすがだぜ! とどめは任せろ!」
その間、マモルはコカトリスの攻撃を盾で受け止めていた。
しかしその嘴による攻撃はパワ―が凄まじく、辺りへ大きな金属音が鳴り響くほどであった。
腕が痺れるのか、マモルは苦しそうな表情を浮かべる。
リディアが痛みを和らげるため回復魔法をかけた。
影山も透視スキルがまだ続いている状態なので、接近して剣を振り下ろす。
だが、コカトリスは危機を察知してバックステップ。
本能が反応するのか、やはり大ダメージ付与は警戒されやすい。
「コケェェぇ!!!」
高い鳴き声を上げた後、紫色のブレスを放つ。
毒属性の付与された、ポイズンブレスだ。
「ニキくん、俺の後ろに来てくれ」
「はい」
(透視スキルがクールタイムへ突入してしまった……)
マモルは盾をかざし、魔力の障壁を形成。
紫色のブレスを受け止め、周囲へ流した。
ブレスは床に着弾すると、じゅううううっ、という音と共に白煙を上げる。
当たったら猛毒状態になるようだ。
「ガラ空きだぜ!」
ピヨピヨを片づけたユーマが、コカトリスの背後へ。
しかしコカトリスは瞬時に対応し、ブレスを止め、ユーマめがけて嘴の連続突きを放った。
「おっと、あぶねぇ! 元気なやつだな!」
ユーマは素早く跳躍して、巧みに攻撃の全てを回避する。
素早い攻防。
タイミングを計り、マモルはユーマの前へと出た。
コカトリスはマモルを払おうと、嘴を槍のごとく振り下ろす。
しかしそれが悪手となった。
「――スタンシールド!」
バチバチ! と、コカトリスに電撃が走り、動きが鈍くなる。
完全なスタン状態とはならないが、大きな隙が出来た。
今の透視スキルは、クールタイム9秒。効果時間は5秒。
クールタイムは発動時からカウントするため、すでにこの時に再発動を可能としていた。
「ニキ、出番だ! いいとこもってけ、イケメン!」
クールタイムを見越しているのか、ユーマが大きな声を上げる。
「いきます」
影山も声を上げ前へ飛び出し、透視スキルを起動。
コカトリスの胸にある“線”を一閃した。
「コッ、ケェ!?」
コカトリスは全身をビクッとさせ、硬直。
そのまま力を失って、バタリと倒れた。
体が消滅していき、魔石だけが残る。
『88888』
『ナイス!』
『ピヨピヨ怖かったけど、倒せた!』
『ええやん』
『みんなおつかれ!』
よし、とユーマがガッツポーズをとった。




