幕章「壁破壊ニキ、同期達のその後」
Case1“ドン引きしてた女性探索者達”
「はぁ。伸びないなぁ。もう辞めようかな~」
女子大を卒業し、探索者になったものの。
芽が出ず、フォロワーはたったの1090人であった。
女の子オンリーの5人組パーティーなのだが、人気が出ない。
「あたし達こんなに可愛いし、話も面白いのに~。視聴者って2軍ばっかりだから、1軍の女の子ってダメなのかな?」
マンションの一室。パソコンで自分のチャンネルの数字を見ながら、そんな独り言をこぼす。
井の中の蛙とはよく言ったもので、学生時代は陽キャでチヤホヤされた女の子といえど、インターネットの世界に出れば凡庸な才能として埋もれる。
1軍を自称することもあり、ルックスは整っているのだが、外見だけで売れる世界ではなかった。
他のチャンネルでも見て勉強しようかと、定番のネオ・ファンタジア所属の探索者達を見る。
すると、とあるチャンネルが目についた。
「壁破壊ニキ……? え、うそっ。透視能力? ってことはこの人、あの時の!?」
鑑定の時、印象に残っていたので覚えている。
「あの時は、いかにも陰キャの上、スケスケ透視能力とかキモすぎって思ったけど……しかも絶対、私のこと見てたし。え! ヤバっ! こんなイケメンなの! え、え、ちょ、エグっ! めっちゃ好みなんだけど!」
パンパン、と両手をサルのオモチャみたいに叩き、興奮した様子で壁破壊ニキのアーカイブを見る。
そして彼女はあっという間に、壁破壊ニキのファンになった。
パーティーの女の子達にも勧めると、彼女達もファンになった。
そして彼女達は満場一致で、“女のオペレーター媚びっててうざい”という陰口を叩く。やがてその思いは表面化した。
ライブ放送になると、友達と共に朝日へ強めのアンチコメントを打ったのだ。
他のコメントから“ガチ恋勢がまた暴れとる”“厄介ファン減らないねぇ”と煙たがられるも、全く気にしない。
「はぁ~♥ ニキ様かっこいい~! しかもお金持ち! 結婚したいなぁ~」
浮かれた様子で、壁破壊ニキにガチ恋していた。
ちなみに。
ネオファン本社の会議室にて。様々なことが話し合われる中、橘 遠矢はとある議題を出した。
「壁破壊ニキチャンネルにて、女性オペレーター……朝日さんへの誹謗中傷コメントが多くなっています。異性のサポーターというところで、多少は仕方ありませんが、中には度を越してひどいものや、常習しているアカウントがいくつかあります。今後のためにも、厳しい処置を考えておりますが、実行に移してよろしいでしょうか?」
Case2“笑っていた男性探索者”
大学を卒業し、探索者になったが、成功しなかった。
すぐに見切りをつけ、今はアルバイトから仕事を始めている。
22歳という若さもあり、周囲から“就職しないの?”“早く落ち着かないと”などと言われてしまう。
「はぁ。中々決まらねぇんだよ、クソ」
アパートにて毒づきながら、休日にてパソコンで動画を見て時間を潰す。
やがて“壁破壊ニキチャンネル”というものに辿り着いた。
「透視能力!? もしかしてあの時の……こ、こんなイケメンだったのかよ。つーか、人気すげぇ」
アーカイブを見ると普通に面白くて、つい全部見てしまった。
「強くてかっこいいのかぁ。そりゃ人気出るよな~。しかもめっちゃ良い人そうだ」
すっかりファンになったようで、生放送をリアルタイムで視聴するほどになった。
コメントをひっそりと打つ。
『あの時は笑ってごめんなさい』
だが、賑わう放送のため、コメントはすぐに流れていった。
「まあ、もう成功者だもんな~。見てもらえないか。謝って許してもらおう、だなんて都合よすぎるし。あーあ、俺も成功して~~~」
なんてことを、つぶやいたのであった。
数か月後、彼はアルバイト先で正社員雇用され、真面目にコツコツ働き始めた。
そして壁破壊ニキのライブ放送をたまに見ては、陰ながら応援していた。
Case3“無能な男性職員”
あの時。男性職員が影山の鑑定時に、透視スキルのことを大声で喋ったりしたことは、問題行動として厳重注意されていた。
法的処置もありえる事態だったという。
そしてその後、透視能力の探索者は“壁破壊ニキ”として活躍したり、職員を助けたりと有名になっていった。
「うぜ~」
二十代の男性職員は、ストレスを溜めていた。
「こっちは仕事で怒られたり大変なのに、億とか稼ぎやがって~。俺が鑑定してあげたんだから、俺にも分けろ!」
そしてそのストレスの捌け口として、掲示板で壁破壊ニキの悪口を書きまくった。
具体的には、住所晒しの時に炎上していたタイミングだ。
ここぞとばかりに、ネオファンと壁破壊ニキの悪口を投稿する。
『不正だらけのネオファン終わったな』
『壁破壊ニキの部屋からアンアン声が聞こえるwww ハ○撮り流出はよwww』
『元陰キャが調子に乗っているwww』
『現役職員だけど、ネオファンはヤバいことしてるよ! 晒しちゃおうかな~』
悪口を書くと、気分がスッキリした。
1週間後。
アパートにとある書類が届いた。
「か、開示請求!? そんなぁ! マジになるなよぉ、ネオファンさんよぉ。ちょっとした冗談じゃん! ええっと、業務妨害、名誉毀損で金額は……ひゃ、100万!? そんな貯金なんてねぇよ! てかこれって、協会にバレたりしないよな……? チクんないよな? ね、ネオファンさん、そんなにひどいこと、しないよな! はは、ははははははは! 壁破壊ニキだって、気弱そうだし、なんだかんだ優しいっしょ!」
1週間後。
この職員は協会をクビになった。
度重なる問題行動がバレて、協会にいられるわけがない。
そして彼は守秘義務違反や名誉毀損罪で、後ほど刑事罰を受けることとなる。
ネオファンに、慈悲はなかった。




