元カノからの5万円スパチャ
4人でダンジョンを進み、3体のリザードマンと戦闘を開始する。
初のパーティー戦。
影山は少し緊張しながら、前へと出る。
前衛の2体の槍&盾持ちのリザードマンは、影山とマモルが相手をする。
前回戦った身としては、後衛の矢を使うリザードマンが気になるが、放たれた矢はユーマが魔法で形成した氷の壁によって阻まれる。
さらに味方へ向けて、リディアがバフ魔法を詠唱する。
ネオファン製の杖が光った。
「――クイック!」
初のバフ魔法というものをかけられた影山は、自身の変化に驚いた。
クイックはステータスの“俊敏”を30%上昇させるバフだ。
これによってより体が軽くなり、素早い移動と攻撃を可能にすることが出来る。
(これはありがたい)
1体のリザードマンとの戦闘に専念できる上、ステータスの底上げ。
影山は透視スキルを発動し、すんなりとリザードマンの盾を破壊した。
そして素早く一閃し、リザードマンを撃破。
その間にユーマも弓を持ったリザードマンを、氷の剣で撃破していた。
「2人共早いな……スタンシールド!」
マモルの宣言と共に、巨大な盾に黄色い魔力が光る。
その状態で、リザードマンが放った突きを盾でガードした。
瞬間、リザードマンの体に電撃が走る。
「ぐるっ!?」
リザードマンは悲鳴と共に、全身が痺れ一時的に動けなくなる。
ただしこのスタン状態は長くは続かない上、攻撃スキルではない。
マモル自体には攻撃力がほとんどないので、ここはリカバリーが必要だ。
「カートリッジ、スイッチ――ショットガンマガジン」
影山が動けないリザードマンへ近づき、ショットガンを放つ。
散弾を打ち込まれたリザードマンは倒れ、魔石となって消えていった。
そんな感じで、ユーマパーティーによる狩りは安定していた。
急造チームであるが、連携は悪くない。
各々役割もはっきりしていて、ユーマパーティーの課題であった火力不足も、影山の参加によって一気に解消されていった。
そうして狩りを続け、時刻は17時すぎ。
最後には4体のリザードマンを撃破した。
『――影山 光のLVが21へ上昇しました。HP+37 MP+13 攻撃+13 防御+15 魔力+13 精神+14 俊敏+19』
影山 光 LV20→21
HP 389→426
MP 145→158
攻撃 144→157
防御 162→177
魔力 145→158
精神 160→174
俊敏 247→266
(パーティーになっても、上昇値が下がることはない……まあ、午前ソロだったっていう恩恵もあるかもしれないけど。この辺り、可視化が出来たらありがたいのにな……不便だ……ゲームならクソゲー確定……)
『良い感じ!』
『ナイス!』
『ええやん』
『ニキ様かっこいい♥』
『この感じならCランク突破はいけそう』
コメント欄の空気もだいぶ変わり、徐々に新パーティーが受け入れられつつある。
ユーマも上機嫌そうな声を上げた。
「おーし! じゃあ調子良いところで、今日はそろそろ引くとするか」
ミカチャンネル『ユーマ復帰できたみたいで嬉しい♥ 新しいパーティー強そうだね、これからも応援するよ! ファイト! 50000円』
『は?』
『おい』
『これは草生えない』
『元カノビッチが何の用ですかねぇ……』
『なに5万スパチャしてんだよ』
『セカパにでもしようとしてるのかな?』
『帰れ』
『出てけ!』
『NTRで出来た子供でも育ててろよ、こっちくんな』
『どうせ頭わりーガキに育つだろうがな』
『きたねぇ女だぜ』
「うげ……あいつめ」
ユーマが苦い表情を浮かべる。
彼のチャンネルに5万円スパチャを投げたのは、元カノこと“ミカ”だ。
動画のチャンネルアカウントでやる辺り、完全なる話題作りと言えた。
影山はため息をつく。
「せっかく良い流れだったのに……」
マモルも肩をすくめた。
「やれやれ。中々に悪意のあるタイミングだな」
ミカのスパチャ投稿により、コメント欄の雰囲気は悪くなっていった。
『ユーマ、返金処理しとけ』
『あんな女の金を受け取るな』
『受け取ったら負けだぞ』
『まーた、あの女は燃えそうなことを……』
『話題になるって思ってるんだろうな。まあ実際、これは話題になるだろうが不快すぎ』
『代わりに俺が払ってやるから。こっちを受け取れ 50000円』
「大丈夫だ、受け取らねぇよ――って、なんか漢気あるやついるな!? いいのかよ! あー、あと、お前らあれだ。気持ちはわかるが、ミカの家族への誹謗中傷はやめてくれ。特に、生まれてきた子供に罪はねーんだからな」
ユーマがいつもの明るい雰囲気で対応する。
「……」
リディアはむっとした表情を浮かべ、ミカへの怒りをひっそりと燃やしていた。




