男達の飲み会 後編
「マモル先生は、前職なにしてたんだ?」
ユーマの問いかけに、マモルは答える。
「冴えないサラリーマンだったな。出世争いに負けて、下っ端のままだったんだ。だから、探索者になって一山あてようって、考えだったのさ。独身だし、勝負できる自由があった」
「出世争いかぁ……そういうの経験してねーからなぁ。つーか、マモル先生独身なのか。意外だぜ、絶対イケメンだったろ。つーか、今もイケオジだしよ」
「ま、若い頃にヤンチャしていたからな。そのバツとして、落ち着く相手が見つからなかった、というところだ。神様ってのは案外、見ているのかもしれない」
「ふーん。そんなもんか……で? どんなヤンチャしたんだ? エロい話出てくるやつだろ!」
「ははは。そういう話、好きそうだな。ユーマ君」
「先生! 教えてください!」
そんな感じで、マモルとユーマは男同士らしい、中々にエグい下ネタ&武勇伝トークが始まった。
マモルの若い頃は、今の落ち着いた雰囲気からは想像できないが、ヤンチャで女関係にだらしなかった。
ワンナイトなどエロい話もポンポン出てくる。
影山はそんな中、肉を食べていた。
ユーマは話しかける。
「ここの肉うめーよな」
「ああ」
「紹介しておいてあれだが、実は行ったことがない店だったぜ! がはは!」
「冒険したんだね」
「探索者だからな!」
ユーマは時々こうやって、影山に話をふっていた。
だけどこういう場で、影山が喋りたがるタイプじゃないことは、なんとなくわかっているのだろう。
話題をふっても、大きく広げるようなことはせず。
といって、なにも話をふらないわけではないので、影山が孤立している感じはない。
絶妙な立ち回りをしていた。
(飲み会って良い思い出なかったけど。悪くないかも)
影山はそんなことを思う。
社畜時代の飲み会は、散々であった。
同僚達は影山を執拗にイジっていたのだ。
『おいお前、静かでおもんないぞ』
『え? チー牛くん、喋った?』
『みなさ~ん。チー牛くんが喋りませ~ん』
ただ1つ、気になることがある。
「ビール! おかわり!」
(……飲みすぎじゃないか?)
ユーマの飲むスピードが、酒豪のそれであった。
空白期間なにをしていたのか、なんとなくわかった気がした。
☆
マモルが提案したタイミングで、飲み会はお開きとなった。
というのも、ユーマが出来上がってしまったのだ。
ユーマは外へ出るなり、顔を真っ赤にして叫ぶ。
「うおおおお~~~~~~~!!! 俺が天下とってやる! 見てろよ、お前ら! 俺はオワコンじゃねええええええええええ!!!」
「おいおい……完全に酔っぱらってるな、これ。俺もつい喋りすぎたのが悪いが、女の次は酒で失敗する気か……?」
マモルが呆れたように肩をすくめる。
影山はふらつくユーマに肩を貸しつつ、告げた。
「同じマンションなので……タクシー呼んで、送っていきます」
「すまないな。頼んだよ、ニキくん」
「はい。お疲れさまでした」
「ああ。お疲れ」
マモルと別れ、影山はユーマと共にタクシー乗り場へ向かう。
「う~。迷惑かけてわりーな、ニキ……」
「いや、べつに」
「すげー心配なやつがいるからさ……これから頑張らねーとなぁ」
「? 誰のことが、心配なの?」
「これから大変なのに、まだ1人じゃなんもできねーからよ……う、ううううっ。涙がとまらねぇなぁ」
「情緒がすごいな……」
(なんか、ユーマって……今まで会ってきた人間の中で、一番不安定なのかも)
ユーマのことは、明るくてとても良い奴だという印象だ。
しかしそのメンタルは、とてつもなくギリギリな気がした。
☆
調整に書類作業と、多忙な朝日はベッドへダイブし、ニキぬいぐるみを抱きしめた。
「ただいま~、ニキさん! ちゅっ、ちゅ~~~♥」
いつも通りのキスをした後、携帯をいじりゴロゴロする。
壁破壊ニキをサーチしていると、気になる投稿が出てきた。
影山、ユーマ、マモルの3人で飲み会をしている画像だ。
ユーマのアカウントが、このメンバーで飲んだことを報告している。
『――新しい仲間候補と飲み会! これも俺のカリスマが成せる技だな~。これからのネオファンキングに、注目してくれ!!!』
プルプルプル、と朝日は震えた。
お約束したデートは、まだ、果たされていない。
「ニキさん獲られたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! うわあああああああああああんっ!!!」




