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【透視チート】会社をクビになった俺、ダンジョン配信でバズって人生逆転する  作者: 音有五角
第三章「新パーティー結成」

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冒険イノベーションズ、検挙される

 冒険イノベーションズのオフィスは、ビルの4階にある。

 朝の9時。社長が出勤していなかった。

 誰もが不思議に思いつつ、9人が業務をスタートさせようとした、その時だ。

 ドンドンドン、とオフィスの扉が荒々しくノックされる。従業員の1人が怪訝そうに、扉を開く。

 通路には、ゾロゾロと20人を超える警察官がいた。

 警察の1人が、礼状を突きつけてくる。


「――警察だ。無許可製造、販売、違法取引によるダンジョン法違反、無許可営業、安全基準適合義務違反、商標法違反で令状が出ている! 強制調査だ、入るぞ!」


「え? え?」


 従業員が目を丸くするが、警察はズカズカと厳めしい雰囲気でオフィスへ入っていく。

 社員は誰もがなにが起きているのかわからず、顔を青くする。

 影山の元同僚の男は、我に返って怒鳴り声を上げた。


「お、おい! ふざけんな! 俺達はなにも悪いことしてねぇだろ!」


 だが、若い男の刑事が奥に保管された製品を取り出していく。


「ありました。これですね」


「ああ……しかし、こんなことは初めてだ」


「初めて?」


「彼らの顔と雰囲気を見ればわかる。違法なことをしているという自覚が、本当にないんだ。ECサイトを使った無許可営業を取り締まったことはあるが、こんなにも無知な容疑者達は初めて見る。異様な光景だ……」


 ベテランの男刑事がため息をつく。

 影山の元同僚が両腕をオラオラ振りながら近づいた。


「おい! 勝手に触るんじゃねぇ!」


 ベテランの警察はパチモンガンブレードを持ち、影山の元同僚へ見せた。


「お兄さん。協会に無断でこういったものを販売したり、素材を売買することをどう思っている?」


「画期的なビジネスモデルだろ! 俺達の会社の武器だ! バカには思いつかない、唯一無二のアイデアだ! それを違反だなんて、言いがかりだ!」


 若い警察官が口をあんぐりと開けた。

 逮捕される時に出る、見苦しい言い訳とはまた違う。

 本気で状況を理解できていない人間の顔と声であった。

 従業員達も、なぜこんなことに……? なにが悪いんだ……? と、不思議そうにしている。

 彼らはインターネットでの炎上もちゃんと把握しているが、”バカ共が嫉妬して騒いでいるだけ”という認識だ。

 やはりか、とベテランの警察は肩をすくめた。


「許可というのは、必要だから法律で定められているんだ。例えばだが、世の中に流通している車だって、国土交通省やNTSELから安全性確保のため、厳しい調査と監査が行われている。君達が加担したことは、これを無視した、ということなんだ。きっちりとした機関の安全テストを無視した、ルール違反の車に君は乗りたいかい? そしてそれがコスト削減になるからと、無視する行為が世間から許されると、本当に思うのかな?」


「え、あ……」


「少しは、事態がわかったようだね」


 ベテランの警察は声を上げる。


「ここにいる従業員全員、取り調べの対象となる。署までご同行願いたい!」


 こうして社長を除く、冒険イノベーションズの連行が始まった。

 子供のように諭された影山の元同僚は、しょんぼりと肩を落としながらも、歯ぎしりをした。


「くそ……なんで、俺ばっかりこんなことに。あのチー牛が成功したのに! おかしい! そうだ! 俺は悪くない! なにも悪くないんだ!」


 パトカーの中で、彼はいつまでも、俺は悪くない、チー牛に負けるわけがない、と連呼していたという。





 時間は少しだけ遡り、早朝。


「ちくしょう、話が違うぜ……!」


 アパートから出た冒険イノベーションズの社長は、ガサ入れのタレコミが入ったので、飛ぶために駅へと向かっていた。


「出来るだけ遠くに……クソ。最悪、海外か?」


 しかし明確な逃走プランがない。

 迷っていた、その時だ。


「よう、にーちゃん。どうした、顔青くして」


「っ!?」


 一目見て、ヤバい奴だとわかる“危険”な人間が、社長の前に立ちふさがった。

 170後半の身長。オールバックの前髪。肉食獣のような凶悪な顔立ちに、体に掘られた入れ墨。

 そしてその右手には、ロングソードが握られている。

 早朝とはいえ、駅前だ。

 それなりに人通りはある。

 それなのに――なにか探索者のスキルを使っているのか、通行人に認識されない。

 社長だけが、彼を認識していた。


「あ、あぁぁ……」


「今回はちっとばかし、おイタがすぎたなぁ。この世界に足を突っ込んだからには、ケジメをつける覚悟はあんだろ?」


「けけ、ケジメ?」


「にーちゃんにタレコミしたヤツも、通さなきゃいけねースジがあった。だから、にーちゃんもスジを通さねーとなぁ」


「おお、俺は、ちょっとお前達みたいなヤツらに、協力してもらっただけだ! ちょっとだけだ! だから、や、ヤベー情報なんて持ってねーし、不義理もしてねぇ!」


「そりゃ、にーちゃんは小物だからなぁ。パクられたところで、まずいことは起きづらいだろう。けどよ、わりーがそういう問題じゃねーんだ。この世界に来たからには、こっちのスジってモンを通さねーといけねぇんだ。わかるだろ?」


「ひぃ……」


 身の危険を感じた社長は駆け出そうとした――その瞬間には、胸にロングソードを突き刺さっていた。

 男は腕を前へ押し込み、とずぶぶぶっ!!! と、刃が社長の胸を貫く。


「がはっ!?」


 社長が口から大量の血を吐く。

 そこまでいってようやく、通行人の1人が気づき、悲鳴を上げたが――まだ、ロングソードを持った男に気づいた様子はない。


「安心しな、にーちゃん。そのタマに免じて、社員に関してはサツの連中に任せるからよぉ。俺達からヤキを入れられるのは、にーちゃんだけだ。それだけは、絶対に約束してやるよ」


「ぐ、ふっ、ああぁぁぁぁ……」


 剣を抜かれ、血だまりの中に社長は倒れた。

 ロングソードを持った男は、剣をアイテムボックスへ収納した


「じゃあな、にーちゃん。次は地獄で会うかもなぁ」


 そう言って、静かに去っていく。

 社長は薄れゆく意識の中で、譫言を呟く。


「俺は、成功、するんだ……! ネオファンを、超える会社を……! チー牛を、潰して……!」


 それが社長の、最期の言葉であった。

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― 新着の感想 ―
こんにちは。 蛇の道は蛇、例え悪党で有っても守るべき決まりはあった…ってことですね。因果応報ですなぁ…。
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