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鬼の宴 - ENN -  作者: 星夜 燈凛
12/19

シードル





  その時、ふわりと甘いりんごの香りが雄太の鼻をくすぐる。香りの主はシードルだった。



「きよちゃん、あんまりゆうくんの事いじめちゃだめだぞっ!めっ☆」



 シードルは日本酒に向かってそう言いながら、指先で可愛らしくバツ印を作って見せて(ほお)(ふく)らませる。


 噛み付く日本酒の事を余所(よそ)に、シードルは雄太に向き直ってこう言った。




「さぁ、ゆうくん。盃を出して?」


「え?盃を出す?」



 雄太は言われている意味が全くわからずに、(いぶか)しげに首を(かし)げる。



「そっか、私が初めてだから知らないのか。じゃあ、教えてあげちゃうから、私の真似をしてね?……さかずきよ。ハイッ!」


 シードルはそう言って「さぁ、言ってごらん」と言わんばかりに両手でどうぞと雄太を示す。



「……さかずきよ。」


 雄太がシードルの言葉を真似するとシードルは満足そうににっこり笑って言葉を続けた。




「我が求めに応じてその形を示せ。ハイッ」

「……我が求めに応じてその形を示せ。」



鬼盃召喚(きはいしょうかん)!」

「鬼盃召喚……!」






 雄太がそう呟いた瞬間雄太の左手が眩しい光を放つ。


「えぇー!?左手が、左手がぁあぁっ!」


 自分の身に何が起きているのか分からず雄太は驚き声をあげる。




 ────どうなっちゃってるのぉー!?




 光が収まり雄太は絶句(ぜっく)した。



 雄大の目の前に現れたのは、己の背丈をゆうゆうとこえる朱色の大きな盃だった。この盃を使って風呂でも入れそうだ。


 それを見た鬼達も同様に言葉を失っている。




「……なっ、なっ、なんだこれっ!」




「わぁ!こんなに大きな盃初めて見た~♪

 これが酒鬼の盃だよ。これだけ器が大きいならうっかり鬼に落ちちゃう事もなさそうだね☆」




「え……?鬼に落ちるって鬼になる事あるの?」




 何気ないシードルの一言だったが、雄太には一大事である。


 シードル曰く、お酒を飲めば飲むほど強力な技を出せるが、昏睡(こんすい)するまで飲み続けると鬼になってしまうのだという。過ぎた力は諸刃(もろは)の剣なのだと(くぎ)を刺された。



「でも、この大きさじゃお酒が飲めないから、この盃が小さくなるように頭の中でイメージしてみて?」



 雄太は言われた通りに、(てのひら)に収まるよく見かける大きさの盃を想像する。


 すると不思議な事に雄太の視界を(ふさ)いでいた盃がみるみるうちに縮んでいったのだった。




「うんっ!完璧っ☆慣れたら盃の召喚もイメージするだけで出来るようになるから頑張って♪」




 そう言ってシードルはにっこり笑うと、床に転がっていた盃を広い上げ雄太に渡して向き合うようにして正座をする。


 そして、そのまま盃が収まった雄太の両手を握ると何か呪文のようなものを小さく唱え始めた。




 突然近づいた可愛らしい鬼との距離の近さにドキリと心臓が()ね自分の顔が熱を持っていくのがわかった。


 雄太の手を握り瞳を伏せているシードルに幼い少女の面影(おもかげ)はない。




 ────……わぁ、まつ毛なっがっ…………





「……鬼酒生成(きしゅせいせい)。」


 シードルがそう呟いた瞬間、雄太の持つ盃が光輝き、盃の中身が黄金の液体で満たされる。




「さぁ、ゆうくん。召し上がれ。君に私の力を分けてあげる。」




「えっ……?でも、鬼の酒は信頼の証じゃ……」




「そうだよ☆鬼は強者(きょうしゃ)に従う。私から見たらゆうくんは十分強い子だと思ったの。

 だって、まさか酒呑童子様に掴みかかろうと思う人間がいると思わなくてさっ。笑っちゃったよぉ〜!私だったら、初対面の……しかも鬼相手になんて、恐ろしすぎて無理だもん。」



 シードルは至極楽しそうにキャハハッと笑っているが、そこを突かれると痛いと思う雄太であった。




「だから、力を貸してあげる。今よりもっと強くなって私が間違ってなかったこと証明してみせて?」



 経緯はさておき、信用を得られたのが嬉しい。

 雄太はコクリと頷いた。




 改めて「召し上がれ」と言われたお酒に視線を落とす。

 ゆらゆら揺れる黄金色の水面にしゅわしゅわときめ細かい泡が浮かび上がっては弾けている。


 雄太はこんなに美しいお酒は見たことがないと思った。


 口元に近づけると華やぐりんごのいい香りがした。


 雄太は盃に口を付けそっと盃を持ち上げた。舌の上に優しい甘みが広がり、シュワシュワとした泡の弾ける爽快感が喉を駆け抜けた。


 あまりの美味しさに一気に飲み干してしまったほどだ。





「美味しい……!」



「えへへっそうでしょ♪

 さぁ、これでゆくんにも力が宿ったよ!」



「え、特になにも変わった様子はないけど。」





「ふふふっ☆そんなことないよ♪

 ここじゃ危ないから建物の外に行きましょう♪

 ついてきてっ!力の使い方を教えてあげる。」




 シードルはにっこり笑ってそう言った後、障子を開けて中庭に向かって行った。雄太もシードルの後を追っていくのだった。




 おまけ


 シードルの鬼、しいちゃんのどーでもの宴


 はいはっーい!

 キュートでラブリーなみんなのアイドルっ

 しいちゃんですっ☆


 いつもお話を読んでくれてありがとう!

 やっと出番だよ〜!嬉しい♪

 これから、他のキャラの濃〜い鬼たちも沢山出てくるから期待しててねんっ☆


 さて、ここでどーでも情報ー!

『酒鬼には漢字の名前が必ずある』んだよっ!

 私は『椎愛』

 日本酒は『清光』

 みりんは『三鈴』

 今は眠ってる鬼達にも、瑠璃、千華、神龍なんて鬼もいるんだよ~☆


「俺が部下にする時に付けてるんだ。可愛いだろう。」


 あっ、酒呑さまっ♪


「椎愛、読者の方とお話していたのか。」


 そうだよ!ここまで読んでくれたんだって!


「有難いな。ちなみにちゃんと名前にも意味がある。椎愛は親しまれ愛されるようにとの思いから名付けたのだ。」


 えっへへっ〜♪私、前と違って今はとっても可愛いから、その辺はもうばっちりだよっ☆ありがと、酒呑さまっ♪


 さて、そろそろゆうくんを鍛えに行かなくちゃ!


 他のみんなの名前の由来は後々……ねっ☆


 それじゃ、私が大活躍の次のお話で会いましょー!


 ばいば〜い!



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