そのうち死ぬ人Ⅲ
ヘンリー・アダムズはフォクストロット鉄砲兵が肩に担がれ、あるいは担架に載せられて運ばれてくるのを見た。
そのことごとくが負傷していた。
そして急所の大通りと呼ばれる正中線にほど近い場所から出血している。
撃ち負けたのか? あれだけ居たフォクストロット鉄砲兵が……。
愕然とする思いであった。
軍はこの冬に商家から集められるだけ金を集め、鉄砲の購入に精を出していたはずだ。
そうして構築したはずの、自慢の鉄砲兵が手傷を負って運ばれてくる。
その光景に愕然とせざるを得なかった。
いや、おかしなことを考えるなヘンリー!
我が軍が負けるなど、そんなことを考えてはいかん! 気をしっかり持て!
不吉な予感を頭から振り払うように、頭を振る。
現に聞いてみろ! あれだけ銃声は激しく、そして積極的に聞こえてくるではないか!
そうだ、フォクストロット鉄砲隊が苦戦しているからなのか、各国の鉄砲隊が増援として導入されたのだ。
教皇派がどれだけの鉄砲を揃えているかは知らないが、これで逆転間違いなしだ。
そう考えることにした。
いや、そう信じなければ平常心を保たそうになかったのだ。
鉄砲隊に続いて、フォクストロットを筆頭に各国から弓兵まで投入される。
「飛び道具戦争だな、まるで」と、部下の一人がもらす。
ヘンリーは自分を励ますように宣言する。
「そうだな、今回の会戦は飛び道具一辺倒だ。しかし聞け! 戦場で勝敗を決するのは結局騎士団でしかない!
これは有史以来騎士が誕生してからの普遍な法則なのだ!」
だから、恐れるな! 勇気を失うな!
部下を鼓舞しながら己をも鼓舞する。
しかし混成鉄砲隊もまた、負傷兵として運ばれてきたのには言葉を失った。
負傷兵の群れを見送ると、今度は弓兵まで負傷者として運ばれてくる。
その一人を捕まえて、ヘンリーは訊いた。
状況はどうか! と。
負傷兵は答えた。
勝負になりゃしねぇよ。すでに敗戦ムード濃厚。
いや、兼戦ムードたっぷりの返答であった。
なにが勝負にならないのか? どう勝負にならないのか?
具体的なことを、負傷者は教えてくれなかった。
ただ理解できるのは、戦況圧倒的に不利、ということだ。
「聞け! 中隊長の言うことを聞け!」
よその中隊長が檄を飛ばす。
「戦況かならずしも有利ならざるものなり! されど起死回生の一撃を撃ち込むは、我らジャック騎士団であるぞ!」
これにはヘンリーも奮い立った。
「聞いたか諸君!」
ヘンリーは切り出す!
「国家に! 家族に! 肉親に報いる機会は今ここぞ! 声をだせ!」
「オーーッ!!!」
「どうした、声が小さいぞ、もう一丁!」
「オーーッ!!!!」
「元気を出せ! 奮い立て! 勝って家族の元に帰るぞ!」
「オオーーーーッッ!!!!!」
部下たちの奮起は、ヘンリーの満足いくものであった。




