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地味に開幕

さて、浅いとはいえ雪まだ残る会戦予定地。

旧ゼブラ国とフォクストロット国の国境、まだ雪が至るところにのこる平原に到着した。

少々の丘陵地帯のようにもなってはいるが、国境線となる川までは身を隠す場所すら無い。


まずは測量だ。

最小限の人数で、川からニ〇〇メートルを計測して、目印の棒を立てておく。

なぜ最小限の人数でおこなうか?


平原というのは川水があふれた場合、そこまで水が来るという場所である。

まだ敵も目にしていないのにそんな場所に布陣してたら鉄砲水が来ましたよ、などということがあってはならないからだ。

だから兵はみな、築堤の役割を果たす丘陵部分のこちら側、丘を遮蔽物として休憩している。


川からニ〇〇メートルを計測したら、今度は丘からニ〇〇メートルを計測して棒を立てておく。

そこには篝火を立てられるように脚を組んでおいた。

今夜から松明を焚いて、夜襲に備えておくつもりだ。


そして兵たちに野営の支度をさせる。

雨風をしのぐためのテントの設営、釜場の構築、そして離れた場所で土!を掘り返して柔らかくしておき、便所としておく。

暖を取るための焚き火があちこちで起こされた。


今夜のものと明朝の糧食が、みちのく屋の馬ソリで届けられた。

だけではない。弾薬もたっぷり運び込まれる。

弾薬といっても馬鹿にはできない。


第三軍鉄砲隊の火力だけで一国の軍勢に大打撃を与えるのが今回の方針だ。

弾は一人三〇〇発。

携行して行進するには、かなりの大荷物になる。


そこでみちのく屋に運搬を依頼したのだ。

そして焚き火を行うための薪。

これも十分な量をみちのく屋に運んでもらい、湿気を避けるためのテントに運び込んでもらった。


来るなら来い、フォクストロット軍。

私たちはすべての準備を整えてある。

おっとり刀でノコノコと会戦場に現れ、蜂の巣にされるが良い!


そして見張りを立てながら、私たちは二日待った。

三日目の午前、ついにフォクストロットの兵が姿を現した。

目の良い者が、川の向こう同じく丘陵地帯となっているその稜線に、人影を発見したのだ。


「いよいよだな、ヤハラくん」


アーサー王子は興奮気味である。

しかし私は、それが築陣のための兵……つまり非戦闘員だと知らされている。


「白兵戦部隊、川岸まで前進」


だからまだ鉄砲隊は温存しておく。

鉄砲のもうひとつの弱点、大音量の銃声、これを敵の本隊に聞かれたくなかったのだ。

よって、築陣の兵は投石で片付ける。


白兵戦部隊による投石が始まった。

一〇〇人ほどいた築陣部隊がバタバタと斃れたが、半分くらいは逃げられた。

それでいい。


逃げた兵隊は川の向こう岸に敵がいることを本隊に伝えてくれる。

そうなれば陣地を構築する場所を巡って、敵本隊との戦闘になるだろう。

そのときこそアーサー王子自慢の鉄砲隊が、文字通り火を吹くのだ。


太鼓の合図で白兵戦部隊をさげて、鉄砲隊を前進させる。

例の、棒を立てた川からニ〇〇メートルのポイントだ。

三人ひと組である。


ホンモノ鉄砲一丁とインチキ二丁の組み合わせである。

ホンモノは一番射手であったり二番射手であったり、あるいは三番手である。

鉄砲隊長が号令する。


「狙うはーーっ、築陣部隊が降りてきたーーっ、林道の出口っ!」


ということで、射線は扇状になっている。

これは前に出てくると生き残れるかもしれないが、退いて林道へ逃げ込もうとすると蜂の巣にされる射線である。


「まだ、楽にしておけ!」


鉄砲隊長の指示である。


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