表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/89

神速のワイマール第三軍

王城にいよいよ、ワイマール第三軍が集結。

第一王子から第三王子まで、あるいはその家臣や取り巻き連中は、やはり私たちの鉄砲の多さ、飛び道具の数というものに驚愕していた。

われらが大将アーサー王子などは、「兄上たちにアーサーは気が触れたなどと笑われたよ」と苦笑いする始末。


それでも第三軍の鉄砲の数は三〇〇。

私からすればこの倍あってもかまわない。

しかし一国の鉄砲の数というのなら、これは集めすぎというところだ。


ワイマール王国鉄砲隊でさえ一〇〇がいいところ。

帳簿を確認させてもらったことがあるのだが、旧ドルボンドの鉄砲を合わせてもニ〇〇にはならない。

それだけ鉄砲を軽視するのは、仕方ない点もある。

従来の旧式鉄砲は竹を編んだ鎧を着込んでいたら、弾が弾かれてしまうのだ。

火薬の質が違う、発射ガスの力を弾に伝える術が拙い。


さまざまな問題点もあろうが、そんなポンコツをどれだけ並べたところで、鎧武者や騎士の突撃で壊滅してしまう。

それがこの時代、この世界の鉄砲の認識なのだ。

戦い方もショッパいと言えばショッパい。


一発パンと撃ったら後方へ逃げて彈込め、準備ができていないウチは「ちょっと待ってて」状態。

これでは華がなさすぎる。

戦士たるものひとつポジションをまかせられれば、突撃か撤退の命令無い限り、決して持ち場を離れてはならない。


最初から最後まで責任を持って、その場を守り切るのが戦士の誉れとされている。

だから旧式とはいえせっかくの飛び道具、いつまで経っても日の目を見ることが無い。

重用されるということが無かったのである。


そんな頭の固い連中に、今日は目にモノ見せてくれる。

いや、大戦果だけ挙げて、鉄砲隊の有効性というものは秘匿してやる。

貴族会議がはじまった。


貴族会議などというとナニゴトか? と思うであろうが、アーサー王子からの作戦説明である。

アーサー王子からの、とは言ったが、実際にこれを行うのは私である。

まずは行軍、そして現地での築陣。


さらには数日間に及ぶ戦闘を見越して、補給物資の受け取りなどなど。

あれこれと説明させていただいた。

それをアーサー王子の名において説明しているのである。


各貴族、各参謀方の理解を得たところで、いざ出発である。

先頭は露払いのナンブ軍、続いて太刀持ちというかアーサー王子の懐刀たるイズモ軍。

そして王室の兵がアーサー王子を取り囲み、第三軍諸侯がこれに続く。


ワイマール王国を西へ向かって大通りを征く。

見送りの人々が沿道にたかっていたが、どの顔も不安そうであった。

彼らは一軍二軍の立派な騎士や兵団を見慣れている。


その目から見れば第三軍、さぞや見すぼらしかったであろう。

この軍には見栄っ張りな公侯爵や伯爵はいないのだから。

質実剛健なスパルタン、過度の装飾などしている余裕のない子爵男爵の集まりなのだから。


まあ、遠慮のない市民である。


「鉄砲ばっかしあんなに集めて、役に立つのかい」


「今回はワイマールもダメだな、こりゃ……」


などという声が聞こえてきた。

事前の手続きが済んでいたので、隣国との国境は軽くパスできた。

というか、同じ教皇派の国であるというのに、「もう出征ですか?」などと衛兵が驚いている。


それだけワイマール第三軍は神速の対応であると言えた。

慌て過ぎだの焦り過ぎだのと、さまざまな批判もあろう。

口の悪い連中には、「ワイマール第三軍が出張ったせいで、いらなく帝国派を刺激した」などと吹聴する者も出てくるに違いない。


だがあえて私は断じよう。

結果主義《後出しジャンケン》ならばなんとでも言える。

どんな難癖でもつけられるだろう。


しかし事態は現在進行形、つまり「なう」なのだ。

そして何事においても先んじることに不利は無い。

一手先を読む……遅い!


十手先を読む……それでも駄目だ。

真の賭博師ギャンブラーというものはイカサマを駆使して、テーブルを支配しなくてはいけない。

このように言うと諸君は、「ギャンブルの場で勝って勝ってまた勝って、俺強ぇえ!」としたくなるだろうが、それではギャンブルの相手がスカンピンになって、相手をしてくれなくなる。


それは真の賭博師ギャンブラーとは言えない。

程よく勝ってそこそこ負けて、相手に「次は負けねぇぞ」と言わせてまた次も勝たせてもらう。

それでこそギャンブラーなのである。

何が言いたいかというと、まずは先行して手綱を取る。


そして出た結果、つまり戦果は他人にくれてやる。

その上でこちらは『本当に欲しいものだけいただいてゆく』ということだ。

今回の合戦で大勝ちなどしてみろ、合戦前までは同盟を組んでいた隣国が、戦さの終わった途端に、ワイマール王国へ白い目を向けてくるぞ。


それくらいに教皇派の中で、ワイマール王国は強大になりつつあるのだ。

我一人が強い。

それは一対一、タイマンの話である。


一対ニ、これも可能だろう。

しかし一対三ではどうにもならない。

そして教皇派も帝国派も、戦争というものはもう一対一でする時代ではない。

ということを学んでしまったのだ。


甘い蜜の味を覚えてしまったのである。

これはどういうことかというと、『目の上のタンコブ』も大勢でかかれば怖くない、ということだ。

もちろん目の上のタンコブというのはワイマール王国のことである。


この辺りの話、一度アーサー王子とジックリ話し合う必要がある。

強ければそれで良いというものではない。

力さえあれば良いというものでもない。


ワイマール王国の孤立、これを避けたいところなのだ。


更新を一日休みます。またまた鬼将軍冒険譚を作成中です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ