神速のワイマール第三軍
王城にいよいよ、ワイマール第三軍が集結。
第一王子から第三王子まで、あるいはその家臣や取り巻き連中は、やはり私たちの鉄砲の多さ、飛び道具の数というものに驚愕していた。
われらが大将アーサー王子などは、「兄上たちにアーサーは気が触れたなどと笑われたよ」と苦笑いする始末。
それでも第三軍の鉄砲の数は三〇〇。
私からすればこの倍あってもかまわない。
しかし一国の鉄砲の数というのなら、これは集めすぎというところだ。
ワイマール王国鉄砲隊でさえ一〇〇がいいところ。
帳簿を確認させてもらったことがあるのだが、旧ドルボンドの鉄砲を合わせてもニ〇〇にはならない。
それだけ鉄砲を軽視するのは、仕方ない点もある。
従来の旧式鉄砲は竹を編んだ鎧を着込んでいたら、弾が弾かれてしまうのだ。
火薬の質が違う、発射ガスの力を弾に伝える術が拙い。
さまざまな問題点もあろうが、そんなポンコツをどれだけ並べたところで、鎧武者や騎士の突撃で壊滅してしまう。
それがこの時代、この世界の鉄砲の認識なのだ。
戦い方もショッパいと言えばショッパい。
一発パンと撃ったら後方へ逃げて彈込め、準備ができていないウチは「ちょっと待ってて」状態。
これでは華がなさすぎる。
戦士たるものひとつポジションをまかせられれば、突撃か撤退の命令無い限り、決して持ち場を離れてはならない。
最初から最後まで責任を持って、その場を守り切るのが戦士の誉れとされている。
だから旧式とはいえせっかくの飛び道具、いつまで経っても日の目を見ることが無い。
重用されるということが無かったのである。
そんな頭の固い連中に、今日は目にモノ見せてくれる。
いや、大戦果だけ挙げて、鉄砲隊の有効性というものは秘匿してやる。
貴族会議がはじまった。
貴族会議などというとナニゴトか? と思うであろうが、アーサー王子からの作戦説明である。
アーサー王子からの、とは言ったが、実際にこれを行うのは私である。
まずは行軍、そして現地での築陣。
さらには数日間に及ぶ戦闘を見越して、補給物資の受け取りなどなど。
あれこれと説明させていただいた。
それをアーサー王子の名において説明しているのである。
各貴族、各参謀方の理解を得たところで、いざ出発である。
先頭は露払いのナンブ軍、続いて太刀持ちというかアーサー王子の懐刀たるイズモ軍。
そして王室の兵がアーサー王子を取り囲み、第三軍諸侯がこれに続く。
ワイマール王国を西へ向かって大通りを征く。
見送りの人々が沿道にたかっていたが、どの顔も不安そうであった。
彼らは一軍二軍の立派な騎士や兵団を見慣れている。
その目から見れば第三軍、さぞや見すぼらしかったであろう。
この軍には見栄っ張りな公侯爵や伯爵はいないのだから。
質実剛健なスパルタン、過度の装飾などしている余裕のない子爵男爵の集まりなのだから。
まあ、遠慮のない市民である。
「鉄砲ばっかしあんなに集めて、役に立つのかい」
「今回はワイマールもダメだな、こりゃ……」
などという声が聞こえてきた。
事前の手続きが済んでいたので、隣国との国境は軽くパスできた。
というか、同じ教皇派の国であるというのに、「もう出征ですか?」などと衛兵が驚いている。
それだけワイマール第三軍は神速の対応であると言えた。
慌て過ぎだの焦り過ぎだのと、さまざまな批判もあろう。
口の悪い連中には、「ワイマール第三軍が出張ったせいで、いらなく帝国派を刺激した」などと吹聴する者も出てくるに違いない。
だがあえて私は断じよう。
結果主義《後出しジャンケン》ならばなんとでも言える。
どんな難癖でもつけられるだろう。
しかし事態は現在進行形、つまり「なう」なのだ。
そして何事においても先んじることに不利は無い。
一手先を読む……遅い!
十手先を読む……それでも駄目だ。
真の賭博師というものはイカサマを駆使して、場を支配しなくてはいけない。
このように言うと諸君は、「ギャンブルの場で勝って勝ってまた勝って、俺強ぇえ!」としたくなるだろうが、それではギャンブルの相手がスカンピンになって、相手をしてくれなくなる。
それは真の賭博師とは言えない。
程よく勝ってそこそこ負けて、相手に「次は負けねぇぞ」と言わせてまた次も勝たせてもらう。
それでこそギャンブラーなのである。
何が言いたいかというと、まずは先行して手綱を取る。
そして出た結果、つまり戦果は他人にくれてやる。
その上でこちらは『本当に欲しいものだけいただいてゆく』ということだ。
今回の合戦で大勝ちなどしてみろ、合戦前までは同盟を組んでいた隣国が、戦さの終わった途端に、ワイマール王国へ白い目を向けてくるぞ。
それくらいに教皇派の中で、ワイマール王国は強大になりつつあるのだ。
我一人が強い。
それは一対一、タイマンの話である。
一対ニ、これも可能だろう。
しかし一対三ではどうにもならない。
そして教皇派も帝国派も、戦争というものはもう一対一でする時代ではない。
ということを学んでしまったのだ。
甘い蜜の味を覚えてしまったのである。
これはどういうことかというと、『目の上のタンコブ』も大勢でかかれば怖くない、ということだ。
もちろん目の上のタンコブというのはワイマール王国のことである。
この辺りの話、一度アーサー王子とジックリ話し合う必要がある。
強ければそれで良いというものではない。
力さえあれば良いというものでもない。
ワイマール王国の孤立、これを避けたいところなのだ。
更新を一日休みます。またまた鬼将軍冒険譚を作成中です。




