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人生で為すべきことは多すぎる、急げ!

王都を目指すにはイズモ領地を通過しなければならない。

しかしさすがはイズモ・ダイスケ率いるイズモ軍。

ナンブ兵たちに先んじて王都へと出発したあとだった。


「さすが兄者だな、すでに準備はできていたということか」


「少し早足にしましょうか?」


「そうだな、あまり遅れるのもよろしくない」


ということでシンガリが到着してから、一服だけつかせて、それから早足の行軍とした。

ザカザカと足音を立ててナンブ軍がゆく。

その数たるや実に七〇〇。


しかもそのうち鉄砲隊が一〇〇、弓兵も一〇〇。

ちょっと男爵家の軍とは思えない軍勢である。

それが伯爵領やら侯爵領をまかり通るのだ。


どの領地でも将兵が顔を並べ、「なんだあの鉄砲の数は……」と目を剥き絶句していた。

あるいは時代遅れの石頭などが、「飛び道具ばかり数を集めて、ナンブ軍は腰抜けばかりだ」と嘲てくださることもあった。

私としては笑止千万。


ドルボンドの戦さもゼブラ国との一戦も、状況を有利に運んだのは、大量の弓兵であり飛び道具だったのだ。

それを未だに「鉄砲なんぞ」と侮って、有名無実の騎士団だの家の格式だのと役に立たないものばかり重宝して下さる。

もう新たな波がすぐそこまで押し寄せているというのに、まったくそのようなことに目を向けないでいる。


見ていろ上級貴族どもめ、我ら第三軍がお前たちの時代の終焉を思い知らせてやる。

そのためにも、まずは情報収集だ。

行進中でも届いてくるのは、やはり帝国陣営で動いているのはフォクストロット国のみ。

これがまず陣地を構築して、そこへ帝国軍が乗り込んでくる。


その傾向がますます色濃くなっている、という情報が入ってきた。

帝国軍は動くには動いている。

しかしいま現在はフォクストロット国に留まっているそうだ。


これは築陣資材をわざわざ自国より運搬する手間を省く、というメリットを考えたものらしい。

そして我らは、諸国連合の露払いというか急先鋒として、ワイマール第三軍がこれを討ち取りに出向くのである。

築陣目的とはいえ、一国の軍勢を三軍が迎え撃つ。


本来ならばまったく話にならないような戦力差なのであろうが、我々第三軍は新式鉄砲隊が中心の軍隊である。

効率よく戦えば、この戦力差は埋めることなど難しくはないはずだ。

いや、ワンサイドゲームでフォクストロット軍を殲滅するのが私の目標である。


忍びたちの報告によれば、フォクストロット軍もまた旧式の槍と馬を中心とした軍勢である。

不可能を語るならば、これを一人残らず討ち取りたい。

キララ式新式鉄砲隊の存在を知る者は、一人たりとも生かして返したくないからだ。


キララ式鉄砲、その存在は一切闇の中で処理されるのが一番である。

誰も知らない状態でこの銃が活躍し、誰にも知られぬうちに時代遅れになっている。

それが私の理想であった。


いま現在の常識では、鉄砲は火縄銃である。

しかしもしも、敵の中に鉄砲職人ガンスミスがいたとして、この銃を見ればすぐに同じ物を造りだすだろう。

問題は発想なのである。


発砲から再装填を経て再度の発砲まで、これだけ時間を短縮できる。

その事実を体験する、実現できる、実現した者がいるとなれば、絶対にヤル者がでてくる。

人間には可能性があるのだ。


そして誰かがそれを実現したとなれば、それを乗り越えようとする。

むしろ恐るべき発明品が存在するというのであれば、喜んでしまうような変態というものが乗り越える人間の特徴だ。

挫けている暇などない。


人生は一度きりでやるべきことは数多い、急げ!

そのように考える、感じる者が乗り越える人間なのである。

そしてその手の人種は、私のすぐそばにいる。


ナンブ・リュウゾウだ。

この男だと言えば分かりやすいだろう。

馬車馬か猛牛のように人生を突き進む。


何をどうしてもやり遂げる。

障害なんぞなんのその、すべて蹴散らして目的地へと到達してしまう。

たとえいかなる犠牲を払おうとも。


いや、それは少し違うか。

成果に対する損耗が過ぎる場合、この男ならば退くだろう。

そして捲土重来の時期を待ち、そのときこそ大暴れのときである。


そこまでのことをあの男は剣から学んだのだ。

剣術流派は指南所において、『兵法指南所』と看板を掲げていた。

すなわちこの男は先人の濃厚な知恵を全身で浴びてきた、ということになる。


あれこれと思いを巡らせているうちに、私たちはイズモに追いつきともに王都へ入ることができた。


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