演習地伯爵領へ!
赤地に白く誠を染めた、ナンブ軍の旗が晴れた冬空に翻る。
ナンブ軍、冬の大演習に出立である。
いざ、通いなれたイズモ領地へ!
雪を蹴立てて行進するは、ナンブ・リュウゾウ親衛隊とみちのく屋から選抜の三〇名。
そして有志からの隊長格四〇名である。
合計一〇〇人の実働部隊だ。
なにしろ大将の婚約者の実家に入るのだ。
みな威容をもって足並みそろえて行進した。
親衛隊は鉄砲を担ぎ、徴募の兵は槍をかかえ、みちのく屋の兵も腰に刀を落としている。
直通道路はまだ完成していない。
よって既存の街道をゆく。
雪の進軍である。
氷こそ踏んではいないが、みな士気は高い。
これまで準備に準備を重ね、鍛えに鍛えてきたのである。
演習とはいえその成果を存分に発揮する場だ。
この訓練をもってして春の大戦さに挑むことになるのだから、やる気は溢れ出ている。
なんとしてもこの一戦で敵の帝国軍を駆逐し、平和を取り戻さなければならない。
故郷の家族、恋人、友人に吉報を届けたい。
あるいはここで手柄を立てて、立身出世をと考える者もいよう。
そういえば、少年兵が志願してきたこともある。
学園の生徒だそうだ。
ナンブ・がイズモ・キョウカに面会したときに、その場にいたそうだ。
それを機に、天神一流を学び始めたそうである。
よく励み、よく鍛えたのであろう。
わずかな期間で切紙に到達したそうである。
しかし入隊条件は目録以上。
それに年も若すぎる。
イズモ・キョウカと同い年だそうだ。
さすがにそんな若者、というか少年を戦地に案内する訳にはいかない。
ナンブ・リュウゾウの一言で不採用となった。
「もう少し勉学に励まれよ、俺が助けとして呼ぶのはそれからだ」
その意見には私も賛成だ。
若年というのは興奮しすぎる。
命を無駄に捨てやすい。
その結果、それを救おう庇おうとする熟練兵が盾になってしまう。
それは大損失だ。
自制の効かない小僧のために、歴戦の古兵を失うのは算盤に合わなすぎといえる。
というか未来に目を向けるべき少年が戦場に立ちたがるなど、どうかしたのか? と問いたくなるではないか。
きっと、何か極端な性格を持っているのだろう。
勝手な憶測だが。
だとすれば余計に平均を求められる軍隊には向かない。
その戦力が極端すぎるナンブ軍ではあるが、性格の極端は必要ない。
あの、死を目指す眼差しもいらない。
ということで不採用。
少年はなにもかも捨てて募集に応じて来たらしく、学園も中退したらしい。
しかしそこは学園の理事長である鬼将軍にナンブ・リュウゾウが取り計らい、復学させることに相成った。
若者の情熱は極端だ。
だから危ういと極端すぎる男ナンブ・リュウゾウが語る。
お前が言うなとツッコミたかったが、今回ばかりはツッコまない。
なんしろ国家存亡の危機であり、それを脱するための究極兵器を投入しているのだ。
おかしな小僧の相手をしている暇は無い。
そしてイズモ領地に到着。
私たちが一番乗りである。
ここにこれから集う者たちは、ただ一途に我が国の勝利を願う者たちである。
ここに不純物はいらないのだ。
いや、ある意味の純粋すぎる者が必要ないとも言える。
宿に入る。
指揮官とその側付、鉄砲隊、白兵戦部隊。
そのようにナンブ軍がわかれる。
というか、これからはそれぞれの部隊で活躍するのであって、ナンブ軍ではない。
私たちはワイマール第三軍なのだ。
アーサー王子のもとで一丸となって戦う部隊なのである。
目的はただひとつ。
我らの平和を乱す者、帝国軍を打ちのめす。
それだけである。
どちらが正義でどちらが悪か?
それは勝者が決めることである。
宿で正装に着替えると、伯爵さまの元へご挨拶におもむく。
正装と言っても、舞踏会に出るような服装ではない。
タスキ掛けの戦闘服装。
狂気の眼差しも忘れるな。
我らは戦さに臨む兵なのだから。




