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禍福はあざなえる縄の如し と言いつつも禍は来るや否や

そして人々は冬に鍛え山に鍛え、雪に鍛える。

寒中床板も凍るのではないかという指南所の稽古場で、技を磨き心身をイジメ抜く。

あるいは新型鉄砲を背負って雪山へ挑み、冬の食料である野生肉を求めた。


さらには人力による除雪部隊である。

雪などサラサラのフワフワと思うなかれ。

それは凍てつく寒さの凍えるようば気温の雪山なのだ。


日中シバレがゆるみ、雪が溶けて水分を含むと俄然重みを増すのだ。

しかもその雪が夜間早朝に冷えて固まれば、氷のように固くなる。

とにかく面倒くさくて厄介なのが雪というものなのだ。


それを掘り起こしてソリに山積みにし、一回一回捨てにゆく。

たまったものではない大自然の洗礼なのだ。

しかしこの努力が富を生む。


そのことをナンブ領地の民は一人一人が知っている。

だから困難に立ち向かえるのだ。

そして人員は確実に増えていた。


旧ドルボンド、旧ゼブラから、鬼将軍が人材を寄越してくれていたのだ。

彼らは冬の間、まったくと言って良いくらいに稼ぎが無い。

だからワイマール王国のナンブ領まで『出稼ぎ』に来ているのである。


確かにこの除雪部隊、金がかかる。

しかしそれに見合っただけの商いが動いているのである。

仕事がある。


備蓄の底を心配せずに食っていける。

そして商店には品物があるのだ。

労働は過酷だ。


しかしやればやっただけの成果が出るのである。

人々の生活が潤うのだ。

努力が実を結ぶというのであれば、第三軍の男爵子爵領地に続々とキララ銃とインチキ鉄砲が届いているという。


各領地で本物十丁インチキニ〇丁の割合で到着しているそうだ。

これでワイマール第三軍は実銃三〇〇丁を有する鉄砲戦力となったのだ。

マスターキララの教えをよく守り、銃鍛錬に励まされますよう希望します、などと文をしたためたくらいに気分は晴れやかであった。


「殿、これは一度合同演習などしてはいかがでしょうか?」


「ふむ、次なる戦さは鉄砲が肝となるか。……よし、兄者に意見してみよう」


ナンブ・リュウゾウは乗り気である。

イズモ・ダイスケにさっそく一筆。

その間にも私はアヤコたち忍びを使って、敵の情勢を探っていた。


やはりタンゴ国フォクストロット国、いずれも時代遅れな騎士隊、槍によるファランクス陣に力を入れている。

鉄砲隊は少ない……とも言えない。

やはり敵も国中から鉄砲をひっかき集めているようだった。


一瞬ギクリと来る情報であったが、戦さへ臨むのに鉄砲を準備しないバカはいない。

ただ安心すべきことは、敵の鉄砲は火縄銃で、二重三重四重五重の数を揃えていながら再装填に時間がかかるために、ろくな機能をしないということ。

そして射程がキララ銃の半分以下ということである。


しかもどうやら、数の上でもかなり圧倒的な有利性アドバンテージがあるようであった。

そうなると勝負は、いかに効率よく敵を葬るか? という点に尽きる。

なにしろ情報を精査するに浮かび上がってくる事実は、敵軍全体の火器を集めても、ワイマール第三軍鉄砲隊に叶わないのではないかという規模に過ぎないのだ。

されば気になるのは、敵の陣形である。


なにを中心に陣をかまえ、いかなる策でこちらを打ち倒すつもりなのか?


「それがヤハラさま……帝国側では諸国連合の足並みが揃っていないようで……」


珍しくアヤコが困り顔だ。


「決定していない策略を探るのは無理ですよ……」


そこまで堕ちているか、帝国側!

しかし無理もなかろう。

ゼブラ国をとられて、なおかつ冬対策をしていないのであろう。


帝国側の経済はいま、どん底なのである。

兵士を集めようとしても金が足りぬのである。

いいのか? こんなに美味しい状況で。


神がワイマールに勝てと言っているようなものではないか。

私の大嫌いな言葉、俺強ぇぇぇ! な状況を自ら演出してしまいそうである。


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