君の心に少年は残っているか?
なんともまぁ、ナンブ男たちの元気の良いことか。
まだ冬であり、出立は春というこの計画。
それなのにもう、よその土地で指南所を開くのだといきり立っている。
もちろんナンブの若さまが資金をバックアップしてくれる、というのもあるだろう。
だがしかし、それ以上に男たちの冒険心が刺激されたようだ。
見知らぬ土地へ。
戦場としては立ったが、住民としてはまだ住み着いていないドルボンド。
あるいは遠く旧ゼブラ国。
生まれ故郷に不満がある訳ではない。
だがしかし、若者というのは、男というものは旅立ちたがるのだ。
生まれ故郷を捨ててきたのは私も同じ。
やはり少々の才能をたよりに、自分を試したくなっての入学であった。
今の私、ヤハラならばどうするだろう?
正直申し上げると、あまり旅立ちたくはない。
いま現在が安定していて、波に乗れているからだろう。
そして学生時分に比べれば、冒険心も無くなった。
少しは大人になったのか?
それとも刃のような若さが、鋭さを失ったか。
私の仕事、私の責任もある。
そこも大きい。
そして主君にして友、ナンブ・リュウゾウがいる。
つまらない人生、つまらない世の中を面白おかしくしてくれる男の側にいる。
これだけでもう、旅立つ理由がなくなってしまう。
これから先、どれほどどん底の貧乏に落ちようとも、ナンブ・リュウゾウの側にある日々だけで私の人生は勝ち越しなのだ。
まさかとは思うが、世が平らいだあとでナンブ・リュウゾウ、領地も爵位も捨てて「旅にでも出るか!」などとは言い出すまい。
故に私も旅立つ必要が無いのだ。
しかし剣ひと振りに命を託して、という男たちは違う。
恋ある者は恋を捨てて、名のある者は名をすてて、それどころかこの地上にたった一つしか無い己の命まで捨てにかかるような者たちである。
故郷を捨てて旅立つことに、何を厭うところあらんや、である。
そして挑むという言葉。
これが剣士たちを突き動かすのだ。
挑戦!
いやしくも剣士たる者、この言葉に血沸き肉おどるようでなくては、なんのために稽古を積んでいるものやら。
やはり男の子というものは、常に何かに挑んでいなければ気が済まぬ。
そういう生き物なのであろう。
腕試し。
その要素も大きい。
ナンブ領にあっては、やはりナンブ・リュウゾウという存在が大きすぎる。
しかし彼の者を無くして勘定するならば、おれは一体どれほどのモノなのか?
それを確認したいという、そうした欲もあるに違いない。
しかし問題点もある。
「時に諸君、君たちは師匠の許しを得てこの場に参じたのか?」
ナンブ・リュウゾウが問うと、みな一様に目を伏せた。
「なんでぇ、どいつもこいつも! 師匠の許可なく集まったのかよ! とんでもねぇ不良どもだな!」
そう言って笑うのはクサナギ先生である。
「おう、リュウの字。春までにこいつらの指南所片っ端から当たって、お師匠さんの許しを得るしかないぞ」
「なるほど、なかなかに骨が折れますなぁ。しかしクサナギ先生、先の合戦に参じてくれたのも、もしかすると師匠の制止を振り切っての参戦だったやも知れませぬぞ?」
「どこまで悪タレなんだよ、ナンブ剣士ってやつぁ」
その不良の代表格二人が、ゲラゲラと笑い声を上げた。




