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スライムの召喚魔導師  作者: じぱんぐ
ソムディア
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9

【クレヴ】

 部屋の中は、階段のあったところに比べて明るいところだった。

 というのも、まず明かりの設備がランプなんかではなかったのである。

 天井に、いくつか発光した物体が吊り下げられており、その光は直接見るには、少し眩しいくらいである。

 かといって、太陽光のように熱を感じるわけではなく、今まであった価値観が崩されそうになっていた。


「あれ? クレヴは発光灯を知らないのか?」


 シリアが俺のことを不思議そうな目で見てくる。

 むぅ、不思議なのは、この発光する物質の方だと思うのだが。


「見たことすらないな」


「ここ十数年である鉱山から、これの原料となる発光石が出てきたことで、有名だぞ?――」


 シリアの説明に耳を傾ける。

 どうやらこの発光灯と呼ばれるものは、今話題を呼んでいる商品となっているんだという。

 というのも、発光石というやつは、こちらが何もしなくとも、自ら光を発する物質らしく、熱もないのに炎よりも明るいのだとか。

 確かにそんな便利なものがあれば、ランプが使われなくなるのもわかるかもしれない。


 ただ、この発光灯は便利な分、お値段も高いところから、主に書類仕事なんかが行われる場所にくらいしか取り付けられないという。


 アスタールでは田舎だし、暗くなる前にはみんな仕事を止めて家に帰ってしまうし。

 訓練所ではそもそも必要なさそうだし、俺の知る機会など、なかったのだ。


「……?」


 シリアと話している間に、何やら舐めつけられるような嫌な視線を感じて、そちらを見てみれば。

 何やら微笑らしきものを浮かべているように見えるが、目つきだけでいえば、修道服さえ着ていなければ、犯罪者として突き出すレベルの男がこちらを見ているではないか。

 ……いや、俺じゃなく、シリアを見ているのか。

 周りの人間もそんな眼つきをしているのか、といえばそんなことはなく、此方(こちら)を見ているとしても、珍しいお客さんだ、という程度。

 

 多分、顔面に嫌らしさ満載なこの男こそ、あのシスターさんが言っていた召喚魔導師なのだろう。


 ターゲットの姿を確認したところで、今度はリアナを探す。

 リアナは何やら部屋をうろうろとしている。


「何やってんだよ?」


「前準備さ。標的ならわかっているから、君は黙って見ていればいいさ」


 そう言って、リアナは少しの間部屋の中を動き回っていた。

 その間に俺たちは用意された椅子に座って、おとなしく待つことになった。

 周りが働いているところで、俺たちだけ休んでいるのは気まずいと思うのは、俺だけなんだろうか。

 

 そうして、俺が罪悪感を感じている間に、リアナが彼へと近づいていく。

 迷いなどなく、堂々とした足取りで近づくリアナ。

 対して彼の方はリアナを気にした様子もなく、視線はシスターさんの方へと釘付けになっているようだ。


「ちょっといいかな?」


「ん?」


 そうしてリアナに声をかけられたところで、ようやく彼の目がリアナに向く。

 リアナは彼の反応に何か了承を得たと思ったのか、右腕を彼の身体へと伸ばしていく。


「おっ、なんだ? 俺に惚れたのか?」


 変なことを言うくらいに慌てて見える彼だったが、リアナは気にした様子もなく、手を修道服の中へと突っ込んだ。

 奇怪な行動ではあったものの、幸いリアナの無駄に綺麗な顔だったおかげか、彼はあまり抵抗を示さない。

 不可解とは思ってはいるものの、むしろ少し喜んでいるようにも見える。

 だが、次の瞬間にはその緩んだ顔もすぐに強張ってしまう羽目になるとは、予想もつかなかっただろう。

 俺としても、このまま胸を貫くのか、と戦慄したところで、リアナはある一言を発した。


「こういうことするのって、いけないことだと思うがね」


 修道服に突っ込んでいた手を引き抜くと、その手の中には何か握られているのがわかる。

 あれは……誰かの財布だろうか?


「は? いや、ちょっと待てよ」


「何を待てばいいんだい? 物を盗んだ後に『待て』という動詞を使うのは、おかしいと思うけどね?」


 二人の声に、周りで働いていた人たちの目が一斉にそちらへと向く。


「お、俺は盗んでなんかいねーよ」


「じゃあ一体これはどこから出てきたんだろうね?」


 慌てる男に、笑みを浮かべて落ち着いている美少女。

 リアナの言動と、手に握られていた財布が、彼が盗人だと、みんなに思いこませたことだろう。

 慌てる様子の彼は盗んだことをごまかしているように見えるし、やはり冷静にしている人の言動の方が、信じやすい。


「俺に惚れたからって、そんなアプローチしなくたっていいんだぜ?」


 突然の事態に、また変な言葉を発する男。


「私以外にも、彼が盗品を隠し持っていることに気付いた人もいるだろう?」


 に対して、リアナは彼に背を向けて、ここにいる全員に話しかける。

 そして俺の顔を見てニヤリと笑ったところで、リアナのやったことが把握できる。

――あの男に、窃盗の罪を着せやがった。


 会った時から自分は器用だと言ってはいたが、ここまでの芸当が出来るとは。

 多分袖の辺りに財布を仕込み、彼の服から取り出したように見せかけたのか。


 先ほどまでうろうろしていたのは、本当に前準備だったというわけだ。

 これで彼に襲いかかる大義名分が出来たわけだが、なかなかに悪質な手である。


「あぁ、私のがない!」


 騒ぎの中心にいた二人を見ていた神父の一人が、自分の荷物を探ってみると、財布が無くなっていることに気付く。


 周りの目が召喚魔導師の彼を責める。

 が、誰一人として言葉には発しない。


 彼が神父の彼らより、立場が上だから、何も言えないのだろうか。

 いや、だとすれば、これは彼の地位を引きずり落とすチャンスでもある。

 聖職者が犯罪を犯すなど、あってはならないことだしな。


 じゃあ、どういうことか。

 冤罪の可能性もあるから、口に出来ないとかだろうか?

 人前では、人格者で通っているなら、考えられる。


 まぁ何にせよ、判断材料が少ないから、これ以上のことはわからない。

 が、リアナには関係なさそうだった。


「君も見ただろう、クレヴ?」


「そうだな」


 まぁ、あのシスターさんに結構酷いことをしてきた一人でもあるし、俺としては遠慮する気はない。

 目的は契約魔法の解除だ。彼を助けても、解除してくれる可能性は限りなく低いしな。


「彼は盗みを働いた。ならばそれ相応の罰を与えるのが当然だ」


「それもそうだな、うん」


 シリアからも賛同を得られる。

 ルシルは……どうやらあんまり関わりたくないみたいだ。

 確かに関わっても面倒なだけだしな。


「普通なら騎士に彼を突き出せばいいのだが、こんなことで手を煩わせてしまっていいのだろうか」


「だから俺がやったんじゃねぇよ!」


「だったら、やってないという証拠はあるのかい?」


「俺がやってないと言ってんだから、やってないんだよ」


「君は証拠という言葉をしらないのかい? 無駄口を叩くのなら、黙っているといい」


「流石の俺もキレちまうぜ。謝るなら今のうちだ。謝るならそうだな、一緒にデートでもしてくれるなら、考えてやってもいいぜ?」


「ここまでしらを切るのは見苦しいね。私自身が断罪してやってもいいんだけど――」


 そう言って、リアナは再び俺の顔を見る。


「――ここは、騎士見習いのクレヴに罪を裁いてもらおうかな」


 ここで、俺に来ますか。こじつけにも程があるし、またもや展開が強引だ。

 たまにはスマートに、そして俺が関与していない時にやってもらいたい。


「はぁ? 仮に俺がやってたとしても、見習いにはそんな権利があるわけがねぇ」


「確かに権利なんてないさ。でも君が窃盗をやった事実は変わらない」


「だからやってねぇって言ってんだろっ! いい加減しつこいんだよ!」


「じゃあどうしたら君は罪を認めるんだい?」


「やってねぇもんはねぇんだよ。認める以前の問題だぜ」


「こうなったら、実力行使でわからせるしかないね」


「やってもいねぇのに、いちゃもんばかり付けやがって。いいぜ、その喧嘩、買ってやるよ!」


「そうかい、じゃあ負けたらその罪を償ってもらうからね。後、これだけ迷惑をかけられたんだ、一つくらい君に命令させてもらうよ」


「迷惑かけられたってのは、こっちの台詞だ! じゃあそっちが負けたら全裸で謝罪してもらおうじゃないか」


「あぁいいよ、負けたら全裸になってあげるよ――クレヴが」


 本人の意志を無視しての、理不尽な口約束をするリアナ。

 男は頭に血が上っているからか、リアナの台詞を最後まで聞かずに、了承してしまう。


「ということで、出番だ、クレヴ」


「いや、言い出しっぺのお前さんが戦えよ」


「いいのかい? 彼があまりにも頭が悪くて思い上がってるのに、私も随分頭にきているんだ。

 戦えば間違いなく殺してしまうけど、それで良いかい?」


「……わかったよ、やればいいんだろ、やれば」


 こうしてリアナのお望み通りの展開となってしまった。







 突然のことにも関わらず、意外と神父達の対応は早かった。

 身内の恥は晒したくないと考えたのか、騎士には連絡を入れず、戦える充分なスペースを確保してもらった。

 場所は街の外れにある草原で、その近くにある教会で働いている神父達にはもう既に人払いしてもらっているんだとか。

 情報伝達の速さもそうだが、指示したらすぐに動く姿勢も素晴らしい。

 人払いをしたのは、この私闘を住人に見られたくないことと、騎士にバレて途中で止められても困るかららしい。


「いいか、負けたらちゃんと約束は守ってもらうからな!」


 修道服から動きやすそうなローブへと着替えた彼が、リアナに向かって叫ぶ。

 神父たちやルシルたちと共に、少し離れた場所にいるリアナは、適当に頷くだけ。

 彼の声を聞くだけでも、うんざりといった感じだ。


「本当に自分が戦わなくていいのか?」


「まぁ、相手が指定してきたのも、俺だからな」


 正直俺としては、シリアに任せておきたかったのだが、あの男が何を考えたのか、俺を戦う相手として選んだのである。

 理由も、一応わからなくもない。

 というのも、こちらの服装を見て判断されたのだ。

 戦いを申し込んだリアナ、そしてルシルは今、ルイゼンハルトの魔法学校の制服を着用している。

 このルイゼンハルトの魔法学校に通っているものは、魔導師の卵ではあるものの、エリートなのである。

 実践経験が少ないとはいえ、普通の魔導師に比べても、魔法のレパートリーは多く、魔力も強い。

 あのシスターさんから聞いた話だが、彼もなかなかの腕前らしいが、戦いたいとは考えないだろう。


 んで、残ったのは俺とシリアだが、リアナの口から名前の挙がっていた俺の方が、やはり選ばれ易い。

 それに、傍目から見て美少女三人の中に一人の男がパーティーに入っているのだ。

 軽い嫉妬くらいは覚えるだろう。


 後考えつく理由としては、騎士は接近戦しか戦えないから、魔導師の方が有利だし、彼女らの前で強さをアピールする目的もあるかもしれない。


「そろそろ始まるだろうから、みんなの所に戻っとけよ」


「あぁ、わかった。クレヴ――」


「なんだ?」


「――負けるんじゃないぞ」


「善処するよ」


「クレヴ。勝つぞー、っていう気持ちが伝わったこないぞ!」


「応っ! ――これでいいか?」


「あ、あぁ」


 よくわからないが、顔を少し赤くして、離れていくシリア。

 満足してもらったのはいいが、驚かせてしまっただろうか?


 ……やはり、父みたいに豪快な返事は向いていないっぽいかもな。


「そろそろ始めようぜ」


 ここまで来ておいて、気乗りしない。

 戦わずに、さっさと金を受け取って帰り……たくもないか。

 ルイゼンハルトに帰れば、またあの身体を苛める日々に戻るんだ。

 マゾヒストになりたいと言っているようなものだ。

 どうしよう、勝負をしたくないのに、長引かせたくなる。


 どうにかして勝負を後日にしてもらえないかな。

 でも相手はやる気なんだよな。

 身体が疲れているから、明日にしたいとか駄目なんだろうか。


「……明日にしません?」


「何言ってんだ? まさかここにきてビビってんのか? でっかい盾は飾りか何かかぁ?」


「ビビっている、ってことでいいんで、今日は休んで明日にしませんか? 疲れてるんですよ」


「戦う前から、負けた時の言い訳してんじゃねーぞ」


 駄目だ、相当我が強いからか、話を聞いてくれやしない。

 

 仕方ない、諦めて戦うか。

 人生妥協の連続だって、誰かが言っていた気がするけれど、俺の人生だけ妥協の配分が多過ぎるのは気のせいなんだろうか?








【ルシル】

 面倒な依頼もようやく終わったかと思ったら、良くわからない内にクレヴと口の悪い神父? が戦うことになっていた。

 こうなったのも、全ては隣にいる女――リアナのせいだ。

 人をおちょくるような態度ばかり取ってきて、とても性格がひん曲がっていて、今回のこともあの神父もどきにちょっかいを出したことから、こんな事態に発展してしまった。


 私としてはさっさとルイゼンハルトに帰って、ジェフさんと近づくきっかけの一つや二つを作りたいと思っているのに……。

 この依頼を受けるだけでも、時間が大分ロスされていっているのに、これ以上無駄な時間なんて過ごしたくはなかった。

 まぁ依頼を受けたおかげで、ジェフさんの情報がある程度知ることができたのだけど。


「ねぇ」


「ん? なんだい?」


「どうしてアンタが戦わないで、クレヴにやらせようとしたの? アンタならあの男ぐらい楽勝で倒せるじゃない」


 必要な時以外には、リアナと話すことはないのだが、この時はつい聞いてしまっていた。

 だって、クレヴが戦うよりも、リアナの方が手っ取り早く事が済みそうだと、そう思ったからだ。

 ……まぁ、引き延ばすという可能性も否めなくはないけど。


「どうして、と言われても、面白そうだからとしか言えないな」


「面白い? どこがよ?」


 いつものごとく、この女の行動原理である『面白そう』であるが、私にはちっとも理解できなかった。

 まぁ、人の困っている顔を見るのが好きな女の考えなんて、理解できなくても当然かもしれない。


「私だと一瞬でカタがついてしまうからな。それではつまらないだろう?」


「そう? スカッとして、気分がいいんじゃないの?」


「まぁ、人の感性なんて人それぞれだからね。私は、クレヴが戦うところを見て、面白いと感じているんだよ」


「スライムしか召喚出来ないのが、そんなにおかしいこと?」


 まぁ、実際の戦闘でそれしかできない奴なんて、確かに存在がギャグかもしれない。


「まぁ、それもあるけどね。でも、クレヴって本当に可笑しいんだ。

 身体能力が高いのに、剣を含め武器の扱いがてんで駄目で才能を感じられないし、普通よりも魔力の貯蔵量も多いし、回復も早いっていうのに、召喚魔法しか使えない。

 スペックとしては大分優秀な部類に入るっていうのに、それを発揮することができないんだ。これほど可笑しなことって普通はあるかい?」


 ケラケラと楽しそうに笑うリアナ。

 確かに才能に恵まれているのに、恵まれていない。

 矛盾した才能を持っているというのは、確かに不思議なことかもしれない。

 でも、私はそんなことよりも、気になったことがあった。


「で、何でそんなにクレヴのことを知ってんの?」


「まぁ、暇つぶしに観察していてね」


「そう、本当に暇だったのね」


「あぁ、暇だったのさ」

 

 サラリと答えるリアナに、私の頭の中で、前からずっと疑問に思っていたことが、再び浮かび上がっていく。


――リアナは一体何者なのか。


 思えば、リアナは突然現れた。

 私が最初に目にしたのは、アスタールの魔法学校でだった。

 その時、既にクレヴとは親しげにしていたことを良く覚えている。

 クレヴから親しげにしている理由を聞いた時には、


「新入生繋がりだから」


 と答えられたが、どうにも怪しいとは思っていた。

 そしてそれと同時期辺りに、村で『シスターちゃん』という少女の噂が流れていた。

 彼女は、あれほどクレヴの母親を悩ませてきた病気を、治してしまったのだという。

 だが私は自分のことで忙しくて、半分聞き流していたのだが、その少女の正体がリアナと分かった時、その時も疑問に思ったのだ。


――リアナは一体どこから来たのだろう、と。


 私が気がついた時には、リアナはもう既にサラナ村に住みついていた。

 シスターちゃん、として有名だが、実際どこから来たのか、とか詳しいことは良くわかっていない。

 リアナが訪れたと予想されるのは、サラナ村にゴーレムが襲ってきた時ぐらいだろうか。

 混乱の中、誰かよそ者が来ていても気付く余裕はないのだが、ここでまた新しい疑問が浮かんでくる。


――なんでここに来たのだろう。


 あんな騒ぎの中に近づこうとするなんて、普通はしない。

 仮にリアナがシスターだったとして、怪我をした人を助けようと勇んで入ってくるのだとしたら、理解はできなくもない。

 が、リアナは今までクレヴの母親以外に回復魔法を使っていないのである。

 怪我人が出そうで大変だと思ったから、近づいたわけではないのなら、リアナの目的は一体なんなのか。


 積極的に知ろうとは思っていなかったので、今でもそれはわかっていない。


 先ほどリアナはクレヴが『可笑しな奴』なんて言ってはいたが、私にとってはリアナの方がおかしいと思う。

 言動や行動はもちろんとして、魔法の理解度についても、やっぱりおかしかった。

 リアナとは結構授業で被ることが多かったのだが、リアナは詠唱魔法について無知過ぎた。

 だというのに、回復魔法は使えるという。

 これだけでもおかしいのだが、詠唱魔法について学んだ一時間後には、詠唱魔法が使えていたのだ。

 しかもその使ったというのが『ブラスト』という魔法で、初心者にはまず出来ない代物だった。


 そもそも魔法というのは、詠唱さえしていれば誰でもできるというものでもない。

 まず適性がないと駄目だし、適性があったとしても、『定める』という感覚を理解しなければ、魔法を発動することはできない。

 『定める』――つまりは魔法についてある程度の理解が必要になってくるのだ。 

 いくら曖昧なものだといっても、全くわからないものでは、私たちには使いこなせない。

 どんなものなのか、私たちなりに把握しなければ、『定める』ことなんて出来はしないからだ。


 例えば、『ブラスト』は火系統、もしくは火属性の魔法と呼ばれるものだが、ただ火を発生させるだけでは、『ブラスト』とはなりえない。

 火にも、色々と形が存在する。

 それがゆらゆらと上に立ち昇るものであったり、球体であったり、細長いものであったりと様々だ。

 これが、『魔法として放出する形』とでもいうべきか。

 

 『ブラスト』は目の前の物を全て焼き払う、そんな感じだ。

 具体的に言うと、その場に炎が発生するだけというのではなく、私の目の前で発生した炎が前方に向かって広がっていく、といった感じか。

 

 また、把握しただけでも、魔法を使うことはできない。

 魔法を使うには、その魔法を使う分、代償が必要だからだ。

 その代償が、魔力と呼ばれる力である。

 これもまた曖昧なものではあるものの、確かに私たちの中に存在するもので、誰もが持っているとされているらしい。

 ただ魔法が使えない人のほとんどが、この魔力の貯蔵量、もしくは許容量が少ないからだとされている。

 鍛えればその量もどんどん増えていくものらしいけれど、人によっては、のびしろが違うんだとか。

 私なんかで言えば、相当多い部類に入るらしく、ルイゼンハルトのエリート集団の中でも、引けを取ってはいないと思う。

 

 そんな私に、リアナは短い期間の間に追いついてみせた。

 

 リアナは天才、という奴なんだろうか。

 それに加えて、素性もよくわからない。

 そんなリアナが、おかしくないわけがない。


「おっ、始まるみたいだ」


 リアナの声で思考の底に沈みこんでいた意識が、現実に引き戻される。

 

 まぁ、今更だけど、リアナについてわからないのなら、考えるだけで無駄だ。

 ならいっそ、ルイゼンハルトに帰ってから、どうやってジェフさんにアプローチをかけるのか、そっちを考えた方がよっぽど有意義だと気付く。

 

 私はリアナのことと一緒に、クレヴたちのことなど頭の脇にやり、頭の中でルイゼンハルトに着いた後のシミュレートを開始するのだった。



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