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スライムの召喚魔導師  作者: じぱんぐ
ソムディア
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8

【クレヴ】

「彼の覗きをなかったことにするのでは、駄目だよね?」


「あぁ、仮にクレヴがどうなろうとも、知ったこっちゃないしね」


「なら、話すしかないかぁ」


 彼女はそう言って、少しずつ言葉を漏らしていく。







【unknown】

 私が気がついた時には、もう既に教会にいた。

 物心つく前には、もう教会で働かされていて、周りの人間と自分とが違うと気がついたのは、初めて仕事を失敗した時だったと思う。


 失敗といっても些細なことで、聖水の入ったビンを割ってしまったくらいだ。

 なのに、周りにいた神父はとても怒った。

 どこからか鞭を持ってきて、背中を剥き出しにして、そこに思い切り鞭を振るわれた。

 痛いと言っても、泣いて謝っても、彼らが満足するまで続けられた。

 途中で意識を失えば、水を頭からかけられ、無理やり意識を戻され、抵抗する意志がなくなれば、聖職者にあるまじき性行為を強引にやろうとした。


 そうして心身共に傷だらけとなったところで、彼らは回復魔法を使った。

 私が壊れないように、そして何より回復魔法の実験台として、だ。


 それが今も続いていて、治りきらない傷がまだ残っている、それだけの話。







【クレヴ】

 彼女の話を聞いて、俺には何も言えなかった。

 彼女が話したのは、たった一部分だけ。

 今まで、どんな暮らしをしていたのか、両親が健在で比較的生活の恵まれている俺には、想像もつかなかった。


「逃げ出そうとは、思わなかったのかい?」


 そんな彼女の話を聞いておきながら、リアナは顔色をピクリとも変えずに、質問を投げかける。


「教会関係者の中に召喚魔導師がいたからね。逃げても無駄だった」


 俺のことを言われたわけではないのに、彼女の恨みがましい声が胸の奥に刺さる。

 ……俺も、好きだと言っておきながら、スライムを道具のようにして、扱っていないだろうか?


「いくら逃げようとも、召喚魔法を使われれば全てが無駄になる。もはや逃げることすらできなかった……」


 辛い日々を思い出しているのか、彼女の目から涙がこぼれ落ちていく。

 

「クレヴ、少し質問があるんだが」


 リアナが急に俺の方へと顔を向けてくる。


「いきなりどうしたんだよ?」


「召喚魔法について聞きたいことがある。三流以下とはいえ、仮にも召喚魔導師の君なら答えられるだろう?」


「まぁ、少しくらいなら」


「じゃあ早速。――召喚魔法の仕組みは、一体どんな感じなんだい?」


「……漠然としてるなぁ」


「まぁここで聞きたいのは、召喚魔法全体というよりも、モンスターが召喚魔法で呼び出されるまでの前準備みたいなところの説明を頼む。

 少しわかりにくかったか?」


「もしかして、契約魔法のことか?」


「たぶん、それだ」


「あんまり詳しくは知らないけど、知っている範囲のことを話すので構わないか?」


「いいからさっさと話せ」


「へいへい」

 

 目を閉じて、頭の中にある知識を探る。

 契約魔法――確かモンスターを召喚する際に必要な魔法。

 詠唱する言葉が古臭く、随分と歴史が深そうに感じるがルーツは不明。

 どういったものなのかも、ちゃんとした仕組みがまだ判明していない、曖昧なものだという話だ。

 まぁそれはさておき、契約魔法の効力としては『召喚するモンスターの識別』、ということになるのだろうか。


 俺の場合だとスライムではあるが、この世界にはスライムが無数と存在しており、その中からランダムで呼び出される、ということはない。

 というより、契約魔法で成功したモンスター以外はいくら名称を言っても召喚することはできない。

 また名称が同じであっても、その個体以外を呼び出すことは不可能。

 簡単にいえば、マーキングみたいなものだと考えるとわかりやすいだろうか。

 効力でいうとそれぐらいで、この契約魔法をかけたからといっても、いきなりモンスターが従順になるというわけでもない。

 あくまでこれは召喚魔法の一種なので、洗脳効果という便利なものは有りはしないのである。


 じゃあ一体どうやってモンスターを従えていくのかというと――原始的に力関係を示したり、後は愛玩動物のように手懐ける、といった方法だろうか。

 大変不便なものではあるが、召喚魔導師の人口が少なく、こういった分野には手を出していないため、契約魔法にも進歩がないのである。


 だいたいそんなことをリアナに告げると、


「じゃあ、契約魔法を解除する方法なんか、あるのかい?」


 と聞いてきた。


「えーと、確か契約魔法をかけた本人が任意で解くか、後はその本人が命を落とすぐらいか? って薄々思ってはいたけど、お前さん、まさか……」


「まぁな」


 そう言ったところで、リアナは再び彼女の方へと向き直る。


「ここで一つ提案がある」


 俺も彼女の方を向いてみると、さりげなく服を着てしまっていた。耳まですっぽりと覆える帽子まで被っており、少し残念である。


「さっき彼と話していたことと、関係があることなの?」


「あぁ、君に一つ依頼をしてほしいんだよ。内容はそうさな、君の契約魔法を取り除く、っていうのはどうだい?」


「……それ、本気で言っているんですか?」


「出来そうにないなら言わないさ」


 リアナはそう言って、笑顔を浮かべる。


「おや、どうしたんだいクレヴ? そんなに私の顔を見つめてきて。別段君みたいに面白いところなんてないと思うが?」


「……見つめてるんじゃなくて、睨みつけてんだよ」


 こんな真人間みたいな台詞をリアナが言うはずがない。

 実際、俺なんてリアナから優しい言葉をかけられた記憶なんてないし。


「まさか私が善意だけで言っていると思っているのかい? もちろんその分報酬は頂くさ」


 その言葉を聞いて一安心する。

 こうやって定期的にふざけたことを言っていない時なんて、裏でこそこそと悪巧みしていることが多いのだ。

 目的がわかっていれば、心構えくらいは出来るからな。

 ……まぁ、わかっていても避けられないのだけど。


「報酬かぁ。困ったなぁ、手持ちがあまりないけど……」


 シスターの彼女は、そう言って修道服のポケットを探り、いくらかのE(エギル)を差し出す。


「報酬は金じゃなくて頼み事でも構わないかい?」


「そちらの方が私としても助かるよ」


「報酬はそうだな――新しく宗教を立ち上げてくれ、というのはどうだろう?」


「「……は?」」


 リアナの突飛な発言に、思わずシスターさんと言葉が重なった。


「おいリアナ、言いたいことがあるんだが、いいか?」


「何故、というなら、面白そうだから、としか言えないけど?」


「そうじゃなくてだな……さっきシスターさんは金がないって言ったんだぞ? 仮にノウハウがあったとしても、立ち上げるための金がないじゃないか」


「それくらいなら私が出すさ。まぁ、300万ぐらいなら軽く出せると思うが、足りないかい?」


「300万を軽く、だと……!?」


 いつの間にそんな財力を持っていたなんて、知らなかった。

 あの顔はハッタリで言っている様子もない。

 もしこのことを事前に知っていれば、ルイゼンハルトに出発する日に、母からの金を強引にでも、ふんだくっていただろう。


「それだけあれば、やれなくはないけど……」


 流石に彼女の方もリアナの発言に驚いているようである。


「ならこの依頼、完遂させてみせようじゃないか。途中でキャンセルは不可だからな」


 何かよく知らないけれど、また厄介なことをリアナが始めやがった。


「ちなみに一つ聞いておくが、その宗教を使って一体何の活動をする気なんだ?」


 俺としては、リアナがそもそも宗教自体を知っているのか、甚だ疑問である。

「あぁ、それはだな――」


 リアナは綺麗な形をした唇の両端をつり上げると、


「クレヴ教なんてものを立ち上げたら面白いだろう?」


 ……早速頭が痛くなってきた。


「クレヴを神に祭り上げて、集めた狂信者で凍結されたプロジェクト・サラナのシリーズを実行するなんて、夢があるとは思わないかい?」


「そんな恥を晒すような真似、したくないんだけど。トップならお前さんがやれよ」


「私だって嫌だからそうしているんじゃないか。まぁもしクレヴが大人しく神格化されるというなら――スライムのことを布教しようじゃないか」


 最後の台詞が、魅力的過ぎて言葉が詰まる。

 これならば、シリアに教育を施すよりも、確実な方法だ。

 だが、一旦冷静になって良く考えてみよう。

 確かに引き受けるメリットはあるものの、デメリットが大き過ぎやしないだろうか。


「まぁクレヴが何と言おうとも、強行してでもやるけどね」


 そもそも選択する余地すら与えられないとは、横暴である。

 例え正当な権利を主張しようとも、ここでは一切通用しない。

 ここでの基準は『正しいか正しくないか』ではなく、『面白いか面白くないか』である。


 生憎、俺にはこの案件よりもリアナを面白くさせることなんて、不可能だ。


 悔しさと涙と共に、この不条理を飲み込まなくてはならない。


――随分前に、父が「男は我慢して強くなる生き物だ」、って言っていたような気がするけれど、こんなことなら強さなんていらない。


「最後に一つ聞くけど、そんな大金、どうやって調達してきたんだ?」


「それなら暇つぶしに依頼をこなしていたら、そんな額になってしまってさ。使いどころがなくて困ってたところなんだ」


「……10万でいいから、くれないか?」


「倍にして返してくれるならね」


 ……やっぱり、不条理だ。







「おぉ、ようやく着いたか!」


 護衛の仕事だというのに、シリアが勝手に馬車から離れていってしまう。

 といっても、目的地――ソムディアにはもう到着しているんだけど。


 さて、ソムディアには初めて訪れたが、街が全体的に随分とまぁ、モノクロである。

 正直な感想を言おう。

 白黒だけだからか、不気味すぎる。

 お洒落、とも言えなくもないが、やはり俺には不気味なところに思える。

 街に活気もなく、静かで通り過ぎていく人はせいぜい微笑程度。

 大声を出す人なんて、一人もいやしない。

 良く言えば、落ち着きのある街、なんだろうか。


「ん?」


 そんな街中を闊歩していると、さりげなく多くの視線が集まっていることに気付く。

 正確には馬車に、ではあるが。

 やはり宗教の色が強過ぎるからか、こうした神父やシスターには尊敬の念を抱かれ易いのだろう。

 なんせ、この街を統治している人も教会関係者だと聞いている。


「そういえば、アンタってシスターちゃん、って村で呼ばれてなかった?」


 ルシルが何か思い出したのか、そんなことを言い出した。

 確かにそんなこともあったが、俺の村にいるリアナの印象としては、悪戯小僧ってぐらいしか思っていなかった。

 が、ルシルはどうもリアナのことが気になったらしい。


「別に村にいた人たちが勝手に呼んでいただけさ。少なくとも私から、言っていたわけではないしね」


「でも、回復魔法が使えるのは変じゃない?」


「まぁ例え君がそう思ったとしても、私がそれに答える義理はないね」


「そう、まぁいいけど」


 まぁリアナのことを知らなければ、尤もな疑問である。

 何故なら回復魔法は一般には出回らず、教会内で独占されているからだ。

 とある時代、教会の力が強かった時に力業でその知識を独占したのが始まりなんだという。

 そして教会の他に回復魔法を知る者を徹底的に弾圧して、今に至るんだとか。


 ……これらの知識は全て馬車の窓際に座っていた神父が勝手に話してくれたものである。

 そして何故だか視線が俺の顔ではなく、露骨なほどに股下を見ていたのは気のせいだろうか。

 これ以上考えるのは精神衛生上悪いので、顔をまたあのモノクロの景色へと移す。


「遅かったな」


 ある聖堂の前で、シリアが腕をぶんぶん振っている。

 そこがこの神父たちの仕事場のようである。

 他に比べても、一回り以上も大きく、敷地の広さだけなら、位の高い貴族に匹敵するのではないだろうか。


「確かに、勝手に仕事を放り出した人よりかは、遅いかもな」


「つい気分が高揚してな、すまなかった」


 こうしてみると、何だか小さな子を見ている気分になるのは気のせいだろうか。

 人前に立っている時とのギャップが激しくて、普段は無理して背伸びしている、と考えると微笑ましくなる。

 王族とはいえ、まだまだ子供なんだなぁ、と思う。


「これで依頼は終わり?」


「あぁ、そうだな。報酬の金額を取ってくるから、少し待っていてくれ」


 ルシルの独り言に反応した一人の神父が、聖堂の中へと消える。


「外で待っているのも何ですから、中で待ちます?」


 この依頼中で、ずっと食事を作ってくれたシスターさんが、俺たちを聖堂の中へと招き入れてくれる。

 特に断る理由もなかったので、お邪魔します、と一言言ってから、中へと入る。

 中に入る際にさり気なく、あの亜人のシスターに目線を送ると、頷きを返される。


 中に、例の人物がいるらしい。

 策なんか特に用意してないけれど、大丈夫なんだろうか?

 リアナは、一体どちらの方法を取るのか。

 力で脅すのか、それとも殺してしまうのか。


 リアナに道徳心なんぞ期待出来ないし、すこぶる不安である。


 そんなことを考えていたせいか、足元が疎かになり足に固い感触のものが、ぶつかってしまう。

 何だろうと確認してみると、どうやら足に当たったのは木製で出来た長椅子で、俺の足に当たった部分にヒビ割れていることに気付く。

 これは金属製じゃなくて痛い思いをしなくて良かった、と考えるべきか。

 それとも弁償の話が出る前に修理の方向へと持っていき、財布への被害を前もって減らしておくべきか。


 ……悩んだ末に、見ない振りをすることにした。

 何か言われようとも、『これ、劣化してますよ』の連呼で強引に押し切ってみよう。


 そっと傷のついた長椅子から目を離して、同じ轍を踏まないように、周りに目を向ける。


 まず目についたものと言えば、先ほど傷つけた長椅子と同じ種類のものがズラリと並んでいるところだ。

 数えるのが億劫になりそうな数があり、どれだけ宗教にお熱なのか見て取れる。

 奥の方には、きらびやかな祭壇や、天井に届きそうなほどに高いパイプオルガンがあった。

 初めてお目にかかったのだが、これが普通の聖堂なんだろうか。

 例のシスターさんが、「金がない」とか言っていた割に、内部の構造が随分と豪奢に思えるんだが……。

 こういうのは、見栄えが大事なのかもしれない。


 聖堂の中を進んでいる間にも、ここでお勤めしている人たちと何人かすれ違うが、誰もが口を開かずに黙々と作業をしている。

 騒がしくしないのは、ここが神聖な場所だからだろうか。

 もしそうだとしたら、俺たちみたいなのが、いていい場所じゃないように思える。


「ここには、神様が祀ってあるわけじゃないのね」


「そうですね、そもそも私たちは神様を偶像にしませんしね」


「どうしてです?」


「人が例え神を姿だけ創造するだけだとしても、烏滸がましいとは思いませんか?」


 なんだかルシルとシスターの一人が興味深い会話をしていて、俺も混ざろうと思ったところで、


「そういえば、さっきの人が見当たらないね」


 もっと気になることを、別の人物――リアナに言われた。

 リアナの言葉に、俺も視線をあっちこっちに向かわせるが、本当に見当たらない。

 というよりも、聖堂に金を置いている、という発想は如何なものだろう。


「あぁそれはだな、この聖堂の地下にまで行っているからだよ」


 俺が疑問に感じているところで、一人の神父がその疑問に答えてくれる。

 その際に俺の肩にさりげなく手を置こうとしていたのを、俺は見逃さなかった。


 睨みを入れて軽く牽制すると、彼は苦笑いをしながら渋々といった感じで手を引っ込める。

 最近、何だか知らないけれど、彼らは開き直ったかのように、ボディタッチを狙ってくる。

 理由は、わからない。わかりたくない。


 ただ、こうしてわからないことは親切に教えてくれるので、邪険にも出来ないのである。


 これから俺は教会関係の建物には一切近づかないようにしよう、そう決意する。


「でも下に降りる階段みたいなものがありませんね」


 ルシルも気になったのか会話に混じってくる。


「ここに来る人たちが使うわけではないし、目立たせる必要がないからだよ」


「じゃあ、あなた方はどういった用途で使っているんですか?」


「主に備品を置いていたり、私たちの控え室や休憩室を設けている。まぁ、面白いところではないがね。君たちに寛いでもらうのも、そこだよ」


「そういうところって関係者以外立ち入り禁止なんじゃ?」


「ここでだと寛ぐに寛げないだろう? そもそもここで寛いで貰っては困るのだけどね。

 尤も、喫茶店などの方が迎えるには良いのだけど、生憎この服装ではね」


 彼はそういって俺たちを聖堂の脇の方へと先導する。

 そうして壁にカムフラージュされていた扉を開ける。

 結構簡単に開いてしまうものだったが、実際開けるまでは、なんの変哲もない壁に見えていた。

 何の目印もないし、奥の方にあるため、普通の人なら気付かないようにされているのだろう。


 扉をくぐった先には、下に階段がある。

 明かりはランプだけだからか、薄暗い。


「足元に気をつけてくださいよ?」


 彼を先頭にして、階段を下っていく。

 階段の幅は大体4人くらいが通れるくらいで、なかなか余裕のある造りとなっている。


「…………ここに例の人がいるんですか?」


 さり気なく依頼主であるシスターの元へと近づき、そっと囁く。


「…………えぇ、確かそのはずだったと思う」


「…………そうですか。ところでリアナ、お前さんは一体どうするつもりなんだ? 殺してしまうのだけはやめてくれよ」


「…………それはどうしてだい? それも一つの手段だろう?」


「…………俺の精神衛生上良くないし、その人を殺したら最後、お前さんは街中を歩けなくなるぞ」


「…………君の都合はどうでもいいとして、街を歩けなくなるのは困るかな。でも、それは人に見られた場合だろう?」


「…………仮に殺しているところが見られなくても、証拠の死体が残るだろ?」


「…………私なら、跡形もなく消し去ることが可能だがね」


 この一言が冗談じゃない、ってところが、リアナの怖いところだ。


「…………まぁ、暗殺以外にも考えがないわけじゃない」


「…………本当に大丈夫なのか?」


「そこで何をこそこそと話しているんだ?」


 俺が言葉を投げかけたのと同時に、シリアが介入してきやがった。

 この会話は大っぴらに話すような内容でないから、シリアに教えるわけにはいかない。


 だからこの会話は中断だ。

 聞きたいことがまだあったのだけど、仮に聞ける状況だとしても、はぐらかされそうにも思える。


「あぁ、ちょっとな。地下なのに、どうして息苦しくないのか、ってことを話してたんだ」


 仕方なく、シリアに嘘をつくことにする。


「ん? それがどうかしたのか?」


「あれ? 普通はそう思わない?」


「城の方にも地下があったが、息が苦しいってことはなかったけど?」


 どうやらシリアは、地下でも息苦しくないことを、当然のように思っているらしい。


 地面の下というのは、外とは違って風が吹かず空気の循環がないどころか、空気が入ってこない。

 そうなれば普通は酸欠になってしまうはずなのだ。


 アスタールの魔法学校にあった、レイオッド先生の地下室なんかでは、換気口――つまりは空気の通り道をいくつか作っていたりしていた。


 その換気口を作ったせいで防音遮音の効果が薄まり、その対策に俺まで駆り出されたのは別の話だが。


 とにかく、地下に新しい空気を取り入れるための何かが必要だっていうのに、それが見当たらなかった。

 まさかあの扉のようにカムフラージュされたものがあるのか。

 いやしかし、そんなことをするメリットはないしなぁ。


 そうやって悩んでいる間に、かの人がいるであろう、控え室に着いてしまうのだった。

補足ですが、彼女の名前が【unknown】、というわけじゃないです。


一応、布石みたいなもんです。

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