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【クレヴ】
「すげぇ……」
学生寮。歳も何もかもてんでバラバラだったってのに、教わる立場だから、"学生"とされている人が住む場所。
ルイゼンハルトの魔法学校に通う生徒の5割は貴族ということもあり、学生寮も貴族区に置かれており、そのすぐ隣には、リアナたちが通う魔法学校があるっていうんだから驚きだ。
通学が楽そうで羨ましい。
んで、視線は学生寮に戻るのだが、随分と立派な建物であった。
田舎者である俺には、なんかキラキラと輝いて見える、としか言えない。 あまり建築などの知識が少ないために、あの建物がどんな素材で出来ているのかすら、わからなかった。
「どうした? そんなところに立ち止まって?」
そんなことを露知らず、リアナは何の感動もなく、学生寮の入り口へと足を踏み入れていた。
「いや、こんな立派な建物見たことないな、って」
「そうか? 逆に私からすれば、クレヴたちが住んでいたところの方が不思議だったけどな」
何となしに言っているところから、リアナって意外とお嬢様なんだなぁ、と思う。
いや、地位的には自称ではあるが、相当に高いところにあるだろうけど。
……魔王ってどんな所に住んでいるのだろう。知的好奇心がむずむずしてくる。
「んじゃ、行ってらっしゃい」
「なんだ? 君も一緒にくればいいじゃないか?」
手をぷらぷらと振っていたら、その手を掴まれ学生寮へと連れ込まれる。
「ちょ、待てって!」
普通に俺のことを連れていこうとするが、俺はここの生徒ではない。ということは、当然この寮に入る資格はないはずだ。
それに、先ほど気付いたが、入り口を抜けた先に……見張りなんだか受付なんだか分からないが、とにかく番人っぽいおばさんが、こちらを睨んでくる。
たぶん、ここの入り口からは女子専用の寮に繋がっているのかもしれない。
そういうところは、やはり男子禁制の場所、ってのがセオリーな気がする。
まぁ、うら若き男女が一つ屋根の下、とは考えにくいし。
まずい。実にまずい。男の身で侵入することもまずいが、ここの生徒ではないといった時点で、何をされるか分からないのが、まずいだろう。
前の――アスタールの時に中年の教師から教わったことだが、むやみに貴族に接しない方が身のためらしいし。
何でも、逆鱗にでも触れてしまったのならば、その貴族と同じ地位かそれ以上でもない限り……不幸なことが起きるんだとか。
それが闇討ちだとか、突如不幸な事故でお亡くなりになるとか、罪をでっち上げられ社会的に抹殺される、といった展開などなど。
特に、俺みたいな田舎者は、言葉とか仕草とかから、完全に上品な部類ではないだろうし、知らず知らずのうちに失礼に値する態度を取ってしまうこともあるんだとか。
貴族を相手にする場合は、最低限度の"マナー"とやらを習得せねばならないらしいのだが、その"マナー"というのが厄介で、複雑極まりないものらしいというのだ。
いくら教養を学んでいようとも、やはり育ってきた環境というものは、出てしまうものである。
よって、碌に礼儀も知らない者は、貴族とは出来るだけ接触を避けるべきなんだけど……。
まぁ、俺の嫌な勘は良く当たるもので、そういうものには従っておくべきなのだ。
そうやってリアナとくだらない格闘をしていると。
――寮の入り口に向かって、上品そうなお嬢さんが、ゆったりとした歩幅で、こちらに近付いてくるのが見える。
「リアナ、一旦その手を離そうか? な?」
「とか言っておいて、逃げるのが君の常套手段じゃないか」
ちぃ、やはり少しの間とはいえ、普段の生活習慣を共にしてきただけあって、俺の行動パターンを読んでいやがる。
こんな面倒そうな展開、さっさとおさらばしたいものなのに……!!
そうして、俺とリアナが入り口の前で一悶着している間に、貴族様がご到来してしまった。
ルイゼンハルトの制服なのか、どうかわからないが、白を基調とした堅苦しそうなローブに、膝丈まである上品な赤いスカート。
脹脛をすっぽりを覆うような、長いブーツを履いた少女と、目があってしまった。
その大きく、深い青い色をした瞳は、後ろにまとめられている髪と同じ色をしている。
その彼女の周りには、銀色の光沢を放つ鎧を着た女たちがいて……たぶん、彼女の護衛か何かだろう。
そんな彼女たちが学生寮のだだっ広い玄関から出てきて早々に、亜麻色の髪をした美少女のリアナ、は問題ないとして。
俺はどう思われるだろう?
背丈以上の盾を背負った、長髪の少年。まず、顔付き、服装からして貴族だとは思われない。ましてや、この背中の盾はすごく目立つに違いない。
いくら広いといっても、リアナが俺の手を引っ張っている姿は、やはり目立つ。
彼女らの前には、俺たちを素通りするくらいのスペースは存在しているが……果たして目障りにはならないだろうか?
そして、さっきから異様にこちらを見てくるお嬢さん。じぃーっと見つめてくるのだが、何か珍しいことでもあるのだろうか?
「あれー? 誘拐の真っ最中に出くわしてしまったようですねー」
間延びした声だなぁ、とも思った。だが、この人は何を言っているのだろう。
「いけませんっ!」
護衛の方々も、彼女が此方に近付いていかないように、必死で防ごうとしていた。
といっても、立場の問題があるからか、彼女の身体には触れようとせず、俺たちとの間に身体を張って壁を作るようにして、だ。
「えぇー、だってお父様は悪いことをしている人を見たら、やめるように言えって言ってましたよー?」
「だからといって、リュドミラ様が危険になっては本末転倒ですよ!」
「大丈夫だよー、余裕のよっちゃんだよー」
「仮にリュドミラ様が誘拐されたら、怖いことされるかもしれませんよ?」
「それ、誘拐犯の人に聞いたのー?」
「誘拐犯の知り合いなんていません!」
「なら、分からないじゃないー」
「そもそも女性の方があの男の方を引き込もうとしているじゃありませんか。それも、この学生寮にですよ?
だったら誘拐だなんて考えにくいのではありませんか?」
「だとしてもー、私は止められませんー。例えそれが、私自身でもー」
「くっ、強行策だ。後で当主様に怒られようとも、ここで食い止めますよ!」
……なんだあれ。
まぁ、怒られたり、ひょんなことで闇討ちになったりする展開にはならなさそうだけど……本当に何だ、あれは?
口を開くまでは、あの黒に近い青の髪をした少女は、若干垂れ目気味なこともあって、おっとりとした性格なのかなぁ、と思ったら、あの暴走っぷりだ。
人は見かけによらないとは言ったものだが、俺の中にあった貴族像がすぐに倒壊していく。
「何だい、あれは? 所謂変人というヤツかい?」
リアナ、お前が言える台詞ではないと、俺は思う。
そうして、よく分からない貴族とその護衛とが問答を繰り返している間に、俺はリアナを学生寮へと入らせると、その場から即離れる。
リアナが散々渋るために、わざわざ合流地点まで決めて、尚且つ平民区で何か奢らなくてはならなくなってしまった。
来て早々に犯罪者になりたくはないと思っての苦渋の選択だったが、やはり簡単に決断し過ぎてしまったのではないか、と後悔してしまう。
あちらは母に軍資金を貰っているからいいが、俺なんて村の人の手伝いをして、コツコツと貯めてきた侘しい貯金しかない。
こんな理不尽が許されていいのか。頑張って貯めてきた昔の俺に申し訳ないと思わないのか。
いっそのこと、合流地点である平民区に戻らず、このまま訓練所の寮に引きこもってしまおうか……。
まぁ、何にしても、向かう先は騎士たちの訓練所である。
さっさとこんな目立つ盾なんぞ、寮にある部屋の中にぶち込んでしまいたい。
「あぁ……クレヴもここに来たっすね」
そうして訓練所に向かってみれば、随分とテンションの下がったダバルと遭遇。
どうやらルシルたちと共に行動したかったらしいのだが、人混みを利用され、姿を見失ってしまったんだとか。
俺にはストーカーになるから、やめといて正解だったよ、としか励ます言葉が浮かばずに、取りあえず彼と一緒に訓練所に連なってある、寮へと足を運ぶ。
「やっぱり立派だよなぁ」
思わず独り言が漏れてしまうが、それも当然と言えば当然だった。
だってここは、お国の偉い騎士たちが使う訓練所、そして宿舎――ここでは寮ではなく、そう呼ぶらしい――だというらしい。
つまり、ここで学ぶということは、俺たちは騎士見習いとして、訓練所に通うということになるのだとか。
らしい、というのは宿舎に入って早々に、その騎士様に声をかけられたからである。どうやら、住むところまで皆、同じようだった。
「せいぜい頑張りな、新入り!」
俺の背中を強く叩いた後、ケラケラと笑いながら外へと向かっていく騎士様。
装備品などが随分と豪奢なところから、貴族出身なのだろう、と推測。
魔法学校だけでなく、騎士までもが貴族出身がいるとは……。泥臭い仕事を貴族様は好まないと聞いたが、やっぱり噂は噂でしかないのだろうか?
「とにかく、いつまでも落ち込んでないで、ほら行くぞ」
「うるさいっすね……分かったっすよ」
強がりでも、ようやく元気を取り戻したダバルと共に、宿舎の中を歩く。宿舎は全部で3階建てで、縦に長い造りとなっている。
一階は主に国の騎士たちの部屋らしく、俺とダバルなんかの訓練生の部屋は3階。
階段を上がっていく度に、ようやく3階建ての意味がわかってきた。どうやら、1階、2階、3階とで室内のグレードが違うらしい。
1階は貴族の騎士、2階は貴族の訓練生、そして3階は平民の騎士と訓練生、といった構成で、階が上がっていく度にグレードは逆に落ちていく仕組みのようだ。
部屋の大きさも、3階だけは狭く、部屋数も多く作られている。
一部屋に二人で住むようになっているらしく、部屋の中に二段ベッドが置かれていたり、ダバルと指定された部屋が同じだったり、ということで理解出来た。
「オレ、上でいいっすか?」
「あぁ、いいよ」
ベッドの上下を決めた後、俺たちは会話もなく、いそいそと持ってきた荷物を並べていく。
物などしまうところは、木製の大きなタンスが一つ置かれているだけで、後は表面に傷のついた横長のテーブルに、付属してある椅子が二つだけ。
後、他にあるといったら、薄汚れた窓くらいだろうか。
訓練所は、貴族区にあるというのに、設備がこんなにも侘しいなんて思いもしなかった。
貴族区の略は、貴族の住む区画、ではなく貴族の優遇される区画なんだと、改めて思い知らされる。
準備も終わり、2階に降りたところで、薄着の女がある部屋から出てきたところでも、嫌ってほど思い知らされた。
騎士たる者はだらしない生活は厳禁、だというのに、ルールは貴族にだけ、甘いのだ。
たぶん、平民が女を連れ込もうとしたものなら、その女を奪われて、貴族の慰み者にされてしまうことが容易に想像出来る。
「ズルいっすよねぇ、ああいうの」
「俺はあんまりそういうの、好まないけどな」
ああいうのを見ていると、何だか女をとっかえひっかえしているみたいで、イメージが悪く感じる。
「あんな豪華な部屋だったらルシルを堂々と呼べるっすけど……あの部屋じゃ無理っすねぇ」
「こんな男臭いところに、ルシルさんが来るわけないだろ」
「それもそうっすね。あんなのがいるところじゃ、ルシルも機嫌悪くしそうっすしね」
なんだか取らぬ狸の皮算用、という言葉が思い浮かんだが、黙っておくことにする。続けて出てきた沈黙は金、という言葉に救われた感じだ。
同じ部屋だから、というわけなのか、わからないが、ダバルから向けられていた刺々しい態度が随分と和らいでいた。
そういうこともあり、このチャンスを生かしダバルと軽い会話を続ける。まぁ、あちらのことをあまり知らないし、自己紹介を中心にして、話を促す。
「へぇ、ダバルってフヨルドで産まれたんだ。聞いたことない名前だけど?」
「まぁ、クレヴのサラナ村と同じ田舎っすからねぇ。聞く感じ、サラナ村と同じく、特産物もなく、ただ村人が暮らしている集落みたいなモンっすから」
「特産品ね……見世物みたいなものなら、サラナ村にはできたけどな」
「どんなのっすか?」
「あの化け物だよ」
二人して黙り、そしてダバルが村のことで同情してくれる。こんなことをしてくれたのは、産まれて初めてだ。
ここで、俺は彼はいい人なんだと、理解した。
「いい奴だなぁ、お前さんは……よし、お前さんの恋、手伝ってやろうじゃないか!」
「な、なんすか、いきなり?」
確かに、文脈を無視して言った台詞なので、ダバルが若干慌てた表情を見せる。
「ルシルさんのこと、好きなんだろ?」
俺の一言で、ダバルの表情が、固まる。
おいおい、あんなんでバレてないと思ってやがったのか?
こいつ……顔は怖いが、性格は意外とピュアなのかもしれない。
「だったら一応同じ村出身である俺が、一肌脱いでやろうじゃないかって話だよ」
「でも、お前はルシルのこと好きなんじゃないっすか?」
「……違うよ」
今は少なくとも、違う。
「相手のことを知るってのは、大事なことだと思うぞ? 特に好きなものとかは、な」
前にルシルから散々レイオッド先生の好物やらなんやらを聞きだしてこい、と言われていたことがあったっけ。
よくわからんが、仲良くなるためには、その人と色んなことを"共有"した方がいいとか、何とか。
「なら、お願いしても、いいっすか?」
「あぁ、勿論さ、友よ」
「なんか、元気出てきたっす。じゃあ、また部屋で、よろしくっす!」
そういって、初めて彼は俺に笑顔を向けて、平民区へと向かっていった。
「……はぁ」
勢いであんなことを言ってしまったが、どうしよう……。
協力出来ることなんて、本当にそれこそルシルについて知っていること伝える程度のこと。
だが、それを教えても、ダバルにとっては無意味かもしれない。いや、他の男にとっても、そうかもしれないのだ。
だってルシルは、好きな人の前ほど、自分の本音を隠したがる。
小さい頃に、自分の言いたいことを言っていたら、人が離れていったから。
だから、好きな人には離れていってほしくないから、とでも思っているのだろう。
まぁ、そうなると俺には出来るだけ離れていってほしい、という風に聞こえるのが、不思議なことなんだけどね。
さて、そんなルシルだが、大概ルシルの好きになる人は……顔の整った所謂イケメンの人だったような気がしてならない。
レイオッド先生は、確か二人目に恋慕した人で、初恋のお相手は、アスタールに御住まいの商人だった気がする。
あの時はその人が既婚だったということもあり、もはや勝負が始まる前に敗北が決まっていたのだが。
その人といい、レイオッド先生の時といい、彼女は男運に恵まれていないのかもしれない。
さて、ルシルの恋愛事情はこのへんにしておいて、ダバルについて考えてみよう。
ダバル、性別男。
身体つきは、俺のことをひょろひょろと言えるくらいには、筋肉質。といっても、そこまで身体つきがゴツゴツしているか、と言われれば、そこまででもない。
まぁ、一般的にマッチョと呼べるくらいであろう。
んで身長は俺と同じくらいだ。つまり、この国では平均的な身長である。
そして重要なポイントである顔は……怖い。顔が全体的に細く、頬が痩せこけていているところまでは、いい。
だが、問題は目つきだ。生まれつきそうなのかはわからないが、とにかく鋭い。
目が細い、というわけではないのだが、デフォルトで睨んでいるように見えなくもないのだ。
釣り上がった眉も後ろに流した髪型も、その目に拍車をかけているようで、やはり第一印象は、怖いとしか言えない。
まぁ良く言えば、不良系のカッコよさを持っているといった感じだろうか。
に対して、ルシルの好みだが……やはり爽やかスマイルが似合う男、って感じだろう。
夢見る少女特有の、白馬の王子様みたいな人が好き、といったところか。
だが、ルシルには、それを叶えられるんじゃないかってほどの、可愛さがある。
童顔ではあるものの、それは幼女趣味でなくとも、惹かれるものがあるし、高嶺の花といっても過言ではない。
そんな彼女に惚れてしまったダバル。
正直、あの二人が結ばれる運命が……俺には予想できない。
そういえば、前にルシルから聞いた話だが、彼はルシルにストーカーしていたことも、あったはずだ。
そうなれば、現在の印象で言えば最悪に近い。
完全に、負け試合だ。
罪悪感に押しつぶされそうになりながら、俺は平民区に向かって歩く。
もはや、一旦外に出てきてしまったのだから、また中に入るのもおかしいだろう、ということもあり、仕方なくリアナと約束した集合地点へと向かう。
本当に、現実というのは、厳しい。
【ルシル】
「待ってよー、ルシルちゃん」
ルシルは強引にフィリーネの手を引っ張って、平民区の街中を闊歩していく。
流石、国の中心部だけあってか、彼女の暮らしていたアスタールの文化よりも、ルイゼンハルトの方が進んでいる。
今、彼女が歩いているレンガで舗装された道もそうだが、建物やそこに並んでいる商品、歩いている人の服装までもが、彼女の眼には素敵な物に映る。
周りに向けていた視線を、次は彼女自身へと落とす。やはり、自分の服装はどう見ても、みすぼらしく見えてしまった。
――郷に入っては郷に従え。
昔、書物の収集が趣味の母親を持ったクレヴから、こんな言葉を聞かされたことがあった。
なんでも、その環境に行ったならば、そこの風俗や習慣に従うべきだという意味らしい。
「フィリーネ、次は服を見にいこう!」
ルシルはその言葉通り実行すべく、華やかな服が飾られる店舗へと足を運ぶのだが。
「つーん」
彼女が振り返ってみれば、感情を言葉に出すフィリーネの姿が目に入った。
というのも、ルシルの都合でフィリーネを振り回していたからだろう。
「ごめんねー、私が悪かった。だから許して、ね?」
フィリーネの身長に合わせて身体を屈ませ、ルシルは上目遣いをしながら謝る。
童顔、ということもあり、こうした手は結構有効だということは、他の男たちには実行済みであった。
「つーん」
が、フィリーネは同性。しかも、彼女は傍でその光景を見ているためか、効果は無い様子である。
仕方なくルシルはフィリーネに合った服を探して、ご機嫌取りに骨を折ることにした。
――つまらない顔をしているより、楽しそうな顔をする方が、絶対いい。
人生を楽しくする秘訣だ、とルシルは胸の内でそう豪語していた。
――まぁ、そんなに生きているわけじゃないから、絶対とは言えないけど。
そうしてルシルが奮闘している姿を見てか、フィリーネの機嫌が治り始める。
――うん、やっぱり笑うとこの子は可愛い。
顔としては美しい、と言った方が正しいのかもしれないけれど、やっぱり身長が小さいせいか、雰囲気としては可愛らしい。
彼女達にとっては少々物価が高く、物品を買い過ぎたこともあってか、財布に大打撃を受けたけれど、二人は自然と笑顔を浮かべていた。
早速、気分を一新しようと買ったばかりの服を身に纏い、店を出る彼女達。
「あっ」
が、ルシルはフィリーネと向き合っていたせいか、前を向いておらず、誰かとぶつかってしまう。
「ごめんなさい、あの怪我とか――」
そこで、ルシルの言葉が止まる。
というのも、そこには……彼女にとって素敵な出会いが待っていたのだから。
彼女にとっては多少身体を鍛え過ぎかも、とは思ったものの、顔はとても爽やか笑顔が、良く似合っている。
二度目の恋をしたレイオッドは、中性的で少し女っぽい、とも思えたけれど、彼は随分と男らしい。
髪はルシルと同じく金髪で、瞳の色は明るいブルー。鼻が高くて、少し尖っているように見える。
「大丈夫かい?」
そうして、声も穏やかそうで――彼は完全にルシルの心をうちぬいた。つまりは、一目惚れというやつだ。
「は、はい!」
「ならよかった」
そういって彼はすぐに立ち去ろうとするんだけど、ルシルはすかさず引き留める。
何かお礼でも、と会話を繋げて。
「ル、ルシルちゃん……?」
ルシルの突然で、人見知りによりオドオドとし始めたフィリーネもいたが、生憎、彼女にとっては目先の男性の方が優先順位が高かった。
――悪いけれど、フィリーネにも手伝ってもらうことにしよう。
ここで諦めてしまっては、彼と恋人どころか、知り合いにもなれはしない。
恋愛は、待っているだけじゃ駄目。
攻めて、攻めて、攻めて、たまに引くくらいがちょうどいい。
……恋人が、出来たことはないけれど、きっとそうなんだ。
――だって、それで私の母親は、父を落としたのだから、私にも、きっと出来るはず!
やはりダバルというキャラは、不憫な立ち位置になりそうです。




