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剣魔神の記  作者: ギルマン
第6章
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22.単眼巨人との邂逅

 エイクは年配のサイクロプスの問いかけに応えて声を上げた。

「私は、この辺りに魔剣を作れる方がいると聞いて、それが事実なら、友好関係を結びたいと思ってやって来たました。

 まずは、あなた方が、魔剣を作れる方か、それとも、魔剣を作れる方について知っていないか。それを教えて欲しいと思っています」

「魔剣の話を、誰から聞いた?」


 エイクが、その問いかけに応える前に、若い方のサイクロプスがまた叫んだ。

「パブロか! パブロの奴が、そんなことを言いふらしたのか!!」


 パブロというのは、魔剣製作者と接触を持ったと言われていた男の名だ。このサイクロプス達はその名を知っている上に、魔剣の情報について気にしている。


(これは、ほぼ決まりだな。やはり彼らが魔剣製作者だ)

 エイクはそう判断した。そして、言葉を返す。


「違います。パブロという者から、直接聞いたわけではありません。その男は死んだそうです」

「は!? 死んだ?」


 激昂していた若いサイクロプスはそう口にして、呆けたような表情をした。エイクの言葉が全く予想外だったのである。


 もう一人の年配のサイクロプスも驚いているようだ。だが、直ぐにエイクに向かって告げる。

「もう少し、近くまで来てくれ。詳しく話を聞きたい」


「分かりました。ただ、剣を装備して行ってもよいでしょうか? 私も戦士として、剣を捨て置けません」

「……構わん」


 この言葉を受けて、エイクはクレイモアとブロードソードを改めて装備し、アズィーダを引き連れてサイクロプス達に近づいた。

 そして、サイクロプス達の攻撃範囲の外と思われるところで止まる。


 その時点でエイクは、このサイクロプス達が魔剣の作り手であるという確信をさらに強めていた。年配のサイクロプスが身につけている胸甲が、魔法の品であることに気付いたからだ。

(きっと、剣だけではなく防具も作れるのだろう。となると、更に重要な存在になるな)


 そう考えたエイクは一層丁寧な口調で語り始めた。

「まず、パブロという男について知っている事をお話します。

 その男は自殺したそうです。しかし、実質的には殺されたも同然だったようです」


「こ、殺された……」

 若い方のサイクロプスが、呆然とそうつぶやき、年配の者も顔を顰めた。


「詳しく説明します。魔剣に関する話の発端は、確かにパブロという男だったそうです。彼が、ある商会に魔剣を頻繁に売ったのが始まりだったと聞いています。

 その商会は魔剣の出所を知りたがったそうです。しかし、パブロはどうしてもそれを教えなかった。商会は、斥候を雇ってパブロの後を付けさせたりもしたけれど、迷いの森の呪いでも掛かったかのように不自然に見失ってしまい、魔剣の出所を知る事は出来なかった、とそう聞いています。


 それで、業を煮やした商会は、パブロを捕らえて自白剤を使って口を割らせようとしのだそうです。自白剤まで使うのですから、恐らく相当の拷問もしたのでしょう。

 それでもパブロは魔剣の出所を喋らず、隙を見て自殺して果てたと聞いています。死んで秘密を守ったわけです」


 その話を聞き、2人のサイクロプスは、まず驚いてその単目を大きく見開き、次いで沈痛な様子で俯いた。どうやら思うところがあったようだ。

 エイクは、少し間をおいてから問いかける。

「あなた方が、魔剣を作れる方で、パブロという人に魔剣を渡していたのでしょうか?」


 年配のサイクロプスが顔を上げて答えた。

「そうだ。わしらが、小さいの、パブロに魔剣を渡した。その時に、わしらの事は誰にも喋らないように約束した。

 あいつは確かに、言っていたよ。絶対に約束は守る。何があってもしゃべらない、と。……だが、何も死んじまう事はない」


 そしてまた、悲しげに視線を下げる。

 その様子を見てエイクも少しだけ感化されたが、同時に違う事も考えていた。

(簡単に人を信じすぎだ。俺が嘘をついている可能性を考えないのか? まあ、俺にとっては好都合だから、別に構わないが)


 その内に、年配のサイクロプスがポツリと言葉をもらした。

「なら、あの魔術師が来たのは、偶然か……」

「魔術師が来た、というのは?」


 サイクロプスは少し考えてから話始めた。

「……4日前の事だ。わしらが住んでいた坑道が突然襲われた。恐ろしく強力な、アンデッドを従えた人間の魔術師に、だ」

「アンデッド……」


「そうだ。わしらは、身を守る事は最優先にして逃げた。魔術師は坑道に居座り、それからずっと、わしらは森の中に避難して暮らしている」

「なるほど……。そんな事が」


「その時わしらは、パブロがわしらの事を喋ったのだと思った。

 何せ、わしらが魔術師共の帝国から逃げ出してから1000年以上、人間が攻めて来ることなど一度もなかったのに、パブロに迷いの森を抜ける方法を教えた直ぐ後にそんなことが起こったからだ。だが、パブロは関係なかったんだな」


「いえ、そうとは思えません」

「どういうことだ?」


「偶然と考えるには、余りにも時期が合いすぎています。その魔術師の襲撃と、パブロの話には関連があると考えるべきです。

 さっきの話の中では言いませんでしたが、パブロが死んだ後、商会は霊媒師を雇ったそうです。パブロの霊から情報を聞き出すために。


 その霊媒師が、本当は霊媒師などではなくて、アンデッドを操る違法な魔術師だったとしたどうでしょう? 

 霊媒師たちが言っている事が正しく、未練を持った者の魂は死んだ後もしばらく現世に残るなら、アンデッドを扱う魔術でその魂を亡霊にでもして操れるのかも知れません。


 そして、もしもそうやって亡霊を操って魔剣を作れる者がいるなどという情報を手に入れたなら、それを馬鹿正直に雇い主に教えるはずがない。自分の為に利用しようとするでしょう。

 例えば、強さに自信があるなら、直接襲って魔剣を奪おうとするとか」


「あの魔術師が、パブロの霊を操って、ここへ攻め込んで来た、と?」

「あり得る話だと思います」

「……」

 サイクロプスは、また考え込んだ。


「ところで、私の事ももう少し話させてください」

 エイクはそう告げて事情説明を始める。


「私は、今言った話を人伝に聞いて、そして、迷いの森の呪いを打ち破る自信があったので、魔剣を作れる方と話したいと思ってここに来ました。

 魔剣を作って欲しいと思ってのことです。何かを奪いたいのではなく、私に似合う専用の魔剣を作って欲しい、と。ですので、魔剣を作れる方と友好関係を築きたいと考えています」


 そこで、一旦言葉を切りサイクロプスの様子を窺う。年配のサイクロプスはエイクの話を真剣に聞いているようだ。

 その事を確認して、エイクは更に話を続けた。


「ですから私は、あなた方の役に立つことがしたいと考えています。これでも剣の腕には自信があります。もしも、私がその魔術師を倒すことが出来たなら、あなた方の役に立ったといえるでしょうか?」

「……それは要するに、あの魔術師を倒すから、代わりに魔剣を作って欲しい。と、そういう事か?」


「そうです。そういう取引が出来ればありがたいと思っています」

「……わしの独断では、決められん。

 とりあえず、避難場所に案内する。みんなで話し合わせてくれ。今の話を、皆にも聞かせたいしな」


「そうしていただけるなら、大変ありがたいです。よろしくお願いします」

 こうしてエイクは、サイクロプス達が避難をしている場所に赴くこととなったのだった。

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