五、は永遠に5。
「ちょ、っと待ってくれ」
「もちろん、お話はしましたし、予定表にも入れておきましたので、お分かりだったはずですね」
ぐいぐいと圧をかけてくる深水には、手も足も出ない。
「それはそうだけど、こんなギリギリになるまで申込書を隠しておくなんてだな、」
「別に隠していた訳ではありません。昨日までは、書類審査の都合上、下の部署に下ろしていましたし、戻ってきたのは今朝のことなので」
申込書を手にしている自分の手が微かに震えている。
「だからって、」
「そう思って、今朝少し早めに社長にお渡ししたはずです。それを後回しにされたのは、どなたでしたか?」
意地悪な言い方にも随分と寛大になったはずだが、さすがにこの件に関しては、困りきってしまった。
「頼むよ、深水。面接官を代わってくれ」
鼻から、ふんっと息を吹くと、深水は腰に手を当てて、呆れ顔で言った。
「何を仰るかと思えば。鹿島コーポレーション主催の奨学金制度ですよ。その創設一年目の審査を一介の秘書に任すとは……」
「わかった、わかった。わかったって‼︎」
深水が部屋から出たのを確認すると、くそっと言って書類をデスクに叩きつけた。
「なんだよ、もうっ」
書類には、「小梅 はな」の名前。
鹿島は三十分後には始まってしまう面接の準備をしようとしたが、何から始めていいかわからず、その場で立ち尽くした。




