1。
おばあちゃんが倒れて入院した時、私はこれ以上に、悪いことがあるだろうかと思った。入院したおばあちゃんは一命を取りとめたものの、意識はまず戻らないだろうと、病院の先生は気の毒そうな顔をして言った。
天涯孤独の四文字が、頭の中をぐるぐると回る。
けれど、死んでしまったわけじゃない、おばあちゃんは生きているんだから。
そう思うと、希望のようなものが湧いてきて、そう何度も自分に言い聞かせて、私は自分を奮い立たせた。
「……上手くいったら意識も戻るかも知れない」
これ以上、悪いことは起きないような気がしていた。
無理矢理、笑う。
そうすると、気持ちも軽くなった気がして。
そして、両親が遺してくれた通帳を見る。その金額に驚いた。一財産あるからだ。 けれど、それは高校生の私が見て、との前置きがあった。
おばあちゃんの入院費で、あっという間にその『一財産』は泡のように消えて無くなっていった。
「……働かなくちゃ」
家からほど近い、スーパーで求人のポスターを見つける。高校生だから時給は安いけれど、履歴書を持って臨んだ面接では、優しそうな店長が、心配そうに声を掛けてくれた。
「大変だったね。うちで頑張ってみる?」
「はい、ありがとうございます」
泣いている暇などない。私には、泣いている暇などないんだ。




