ロックスター桐生の骨密度と、魔女の完璧指導
喉の不調を乗り越えた12万と56歳の往年ロックスター・桐生が再登場! 毎日牛乳を飲んで自信満々で臨んだ骨密度測定で「数値75」という衝撃の結果を突きつけられるも、涼香の理知的で優しさに満ちた服薬・栄養・運動指導(ビタミンD・K、破骨細胞の説明、整形外科連携)に大感動。涼香の可憐すぎる貴族のような佇まいに悶絶する陣内のドタバタ劇をお楽しみください!
俺は桐生。往年のロックスターだ!
半世紀以上生きてくると、体に謎の痛みが出る……本当に謎だ! なんだこの痛みは……!
若い頃に『ドラゴンクエスト』に激ハマりしていた俺はつくづく思う。ドラクエなら宿屋に一晩泊まればHPは全快する! 昔はそうだった。HPは常にマックス! 名前も真っ白な正常状態!
だが、最近はどうだというのだ……。
朝起きた瞬間からHPが半分くらいしかなく、何もしていないのに意味不明な『毒状態』ではないか!!
だが……! 以前、この店舗の「とんでもいたずら魔女(氷室涼香)」に『響声破笛丸』とかいう、まるでドラクエの呪文や魔法薬のようなワクワクネームの漢方薬をもらってからというもの、俺の喉はバキバキに仕上がっている!(喉だけだが……!)
今日もライブで非常に良いシャウトをぶちかましてきたぜ……。古くからのファンも俺の喉の復活ぶりに慄いていることだろう。なんせ俺は12万と56歳なんだからな!!
おっと……いけないいけない。
毎日の日課である牛乳を、この女神たちの住むエデン(白鳥駅前店)へ買いに行くんだった。
(ん……? なんだか店内で『健康フェス』をやっているぞ……? いざ行かん!)
店内を進むと、【骨密度測定ブース】の前に、あのゲキカワ魔女(涼香)が佇んでいた。
今日は魔女の変装ではなく、ただの清潔な白衣姿だ……。なのになんだこの色っぽさは!! 気品があふれてぶっ飛んでいる…
まあ、毎日ここで買った牛乳をガブガブ飲んでいる俺のことだ。骨密度だってバキバキに仕上がっているに決まっている!!
「こんにちは、魔女さん♪」
(おっと……響声破笛丸のおかげで、とんでもねぇ極上のイケボが出ちまったぜ……!)
涼香がパッと顔を上げ、可憐に微笑んだ。
「こんにちは♪ 響声破笛丸をお渡ししてから、お喉の調子はいかがですか?」
(クーーーッ! 可憐すぎるぜ!!)
「貴女のおかげでほらっ! この絶好調さ…」
またしても溢れ出す魅惑の低音イケボ……。こんな超絶美女を俺の歌声で惚れさせちまったら大変だぜ……!
「まぁ♪ お役に立てて良かったですわ。よろしければ、お骨の密度も測っていかれませんか?」
「フッ……毎日こちらで牛乳を頂いてますからね! 俺の骨は筋骨隆々さ!」
ドヤ顔で測定機に足を乗せる俺。
ピ、ピ……ピー♪
どれどれーっ! スカウターの数値を見てみると――。
「なん……だと……っ!?」
スクリーンに表示された数値は『75』!!
なんだこのスカウターは!? 壊れてやがる!?
動揺する俺に、涼香は困ったように眉を下げ、優しく説明を始めてくれた。
「あらぁ……実はですね、カルシウムはただ摂るだけでは骨に定着しないのですわ。適度な運動(衝撃刺激)による定着が不可欠ですし、カルシウムの吸収を助けるビタミンDやビタミンK、骨の土台となるタンパク質も必要です。もしかしたら今、お体内では『破骨細胞』という骨を壊す細胞の働きが優位になっている可能性もありますわ」
「は、破骨細胞…だとっ…!?」
「ええ。測定データを差し上げますので、近隣の整形外科を受診された方がよろしいかと思いますわ。ですが、無理に大好きな牛乳をやめる必要はありませんからね♪ 病院でお薬が出るようでしたら、整形外科の医師の指導のもと、お食事の調整と服薬を一緒に進めていきましょうね♪」
たっ……確かに、ライブ以外で普段の運動はあまりしていない……! 知識と優しさに満ちあふれた完璧な服薬指導指導だ!
「ありがとう……可憐な魔女よ……俺は行く」
「お気をつけて行ってらっしゃいませ♪」
フワッと優しく手を振る涼香。
もはやただの薬剤師ではない……高貴な貴族の令嬢ではないか……!
俺は買い求めた牛乳を手に、ホクホクとした温かな気持ちで店舗を後にするのだった。
【骨密度ブース横・陣内拓海】
「……ふぅ……っ! 涼香さん、ロックスターに対しても、なんて完璧で可憐な服薬・生活指導なんだ……っ!!」
一部始終を陰で見守っていた俺――陣内拓海は、涼香さんのあまりの美貌と、非の打ち所がない薬剤師としての指導力に胸を打たれ、一人でもがいていた。
(響声破笛丸の経過観察から、骨密度75に対する栄養・運動・破骨細胞の説明、そして整形外科への受診勧奨と服薬フォローまで……! 完璧すぎる……っ!!)
「拓海さん……? どうかされましたの? 顔が赤いですけれど……」
指導を終えた涼香さんが、ボルドーのスクエアネックから覗く白い首元を少し傾げ、首をかしげて俺を見つめてくる。
(美しすぎる涼香さんの至近距離アタックで……俺の心臓と脳みそが爆発しそうだーーーーッ!!)
しかし、患者さんへの素晴らしい臨床指導と、平和に解決した桐生さんの笑顔のおかげで、俺の胃袋だけは一切の痛みもなく至極健やかに保たれていた。
俺は真っ赤になった顔をごまかすように「なんでもないですっ! イベント引き続き頑張りましょう!」と声を張り上げ、大盛況の『秋のからだリセット健康測定会』を指揮し続けるのだった。
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