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美人だらけのドラッグストアで胃薬が止まらない件  作者: 薬師寺 あかね


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ギャル実習生は優等生

派手な見た目とは裏腹に、驚異的なコミュニケーション能力と真面目さで患者さんを味方につけていくギャル実習生あげはと、彼女の予想外のポテンシャルに激しく焦るヒロイン3人の攻防

「涼宮さんは八大疾病の予習完ぺきにしてきたのね、驚いたわ、なかなか実務に入る前からここまでできる子はなかなかいないわ」

厳しい涼香薬局長が褒めている

(こんな優しい顔するんだなぁ、薬局長…しかし美人だな…俺も何か手取り足取り教えてもらいてぇなぁ…って違う違う、俺が本当は担当なのに甘えすぎてるな…ありがとう氷室薬局長)

「ちょっとー白石先生〜うかうかしてられないわよーっ、この間の出張からずっとニヤニヤしてるけど?薬歴とか残しちゃったりしてないでしょうねー?」

「ん?にゃ…?薬局長?私をもしかして舐めてんですか?私だってエリア長や薬局長程じゃないにせよなかなかやるんですから!バッチリなんだもんね!」

ほのかはから口をたたきながら発注業務にあたっている

「なんだか白石さんは、前より…なんだかツヤツヤしてるわね…なんか陣内さんのことも微妙に呼び方変えてタクミセンパイなんて呼んでるし」

「ふふーん!薬局長ー私はサイジョー君ありますからねーゲキカワのサイです♪」

「むー…なによそれー…理科大にはなんかないのかしら…全く」

「あのう…氷室先生〜っ! 白石先生とお話してる所失礼しまぁす…服薬指導入る準備、これでバッチリですかぁ〜?あっやっぱ陣内先生にも聴かないとかなぁ」

「あぁ…うんバッチリよ…あなた凄いわね…」

「実はこんなナリですけど〜トップテンから落ちたことないんすよ」

「えぇ?そのお胸で?半端じゃないわね…」


実習2日目の午前中。調剤室のデスクで、涼宮あげはがキラキラのネイル(でもアルコールでベロベロにならないようにきちんと配慮はされている)をカタカタと鳴らしながら薬歴(服薬指導の計画書)を提示してきた。

(……マジかよ…この子完璧すぎる……そしてでか過ぎる…ってこれじゃ変態薬剤師じゃないか…)

俺はスッと涼宮から提出された書類を見て、思わず内心で目を見開いた。

ギリギリ茶髪&ナチュラルメイクの範疇ギリギリのバッチリメイクのギャルでしかもデカすぎる何もかもギリギリに見せかけ成績はトップ状態という派手にチート状態な彼女から提出された薬歴は患者さんの病歴や併用薬、相互作用まで完璧に整理されている。

「うーん…うんうん…おー…スゲー…すごくよく書けてるよ、涼宮さん。相互作用のチェックも的確だし、指導薬剤師としては直すところがないね」

「きゃー♡ 陣内先生に褒められた〜! やったね〜!」

「ふふっ…今日もカッケェー…腕最高」

二言目は小さめにつぶやく

「あなた…見どころいいじゃない…」

涼香は呟いた

「あれー氷室先生ぇー…それはどっちの話ですか?」

「やっ…薬歴や薬学のことよ!私も血管は好きだけど!!」

「ん?今は脳血管障害の所だなー脳神経が得意なのか?」

「も〜!陣内先生ズレズレ〜」


しかしあげはは「イエーイ!」と無邪気に両手を叩いている。

「ん〜…私も…」涼香はどさくさに紛れた!

(ん?何か分からんが皆機嫌良さそうだからハイタッチしとくかぁ…)

パンパンと手の音が鳴る

「はぁ…ムキムキじゃん…カッケェー…」

「わぁ…陣内さんの手ゴツくて尊い…」

2人に乗り遅れてしまったほのか

「なっ…ちょっ…何やってんのよぉ…拓海先輩!拓海先輩!私も」

(なんだ?なんだ?)謎の流れでほのかもハイタッチする


その弾むようなリアクションに伴い、白衣の上からでも隠しきれない『圧倒的な胸囲』が揺れ、俺は咄嗟に目を逸らして冷や汗を流した。

(あ、アカン……! 優秀すぎて指導の隙がないうえに、このスタイルは理性が試されすぎる……!)

「「ちょっと…目線いやらしいですよー」」

2人に注意されふと目を逸らす俺


その時、投薬カウンターに一人の常連客――近所で有名なお小言の多いおばあちゃん、吉田さんがやってきた。

「あら、 今日は見ない子が居るわね?新人さん?」

(ヤベー…吉田さんか……! 挨拶や言葉遣いにかなり厳しい方だから、ギャルっぽいノリだと怒られるかもしれん――)

俺が慌ててフォローに入ろうとした、次の瞬間。

「吉田様、こんにちは〜! 北海薬科大から実習に来ています、涼宮です! えーと…処方箋はお持ちですか?それとも何か商品をおさがしでしょうか?ご用命であればなんなりとお申し付け下さい♡」

あげはは満面の笑みでカウンターに立つと、丁寧かつハキハキとした美しいお辞儀をしてみせた。

「あら……ずいぶん可愛らしいお嬢さんねぇー随分おっぱいも大きいわねー…って違う違う、冷えてちょっと膝がねー」

「吉田様、医療用ではあまり温感ラインナップありませんもんね、ご処方の方は冷感ですよね?何か血行わるいかんじでした?」

「そうなのよ! なんか冷えちゃったみたいなのよ、なんだかお腹も少し緩くて…喉も薬つっかえちゃうし歳は取りたくないわねー氷室ちゃんならわかると思ったけど学生さんなのにすごいわぁ」

「えへへ、しっかり勉強してきましたから♪ 喉につっかえにくい飲み方のコツ、おさらいしましょ〜♡」

広い守備範囲と見事なコミュニケーションだな、ギャルならではの物怖じしない圧倒的な懐の深さ。

おっぱい言われてもノーダメージだ…

さすがギャル…

実習生に指導させたり許可を取る間もなくスムーズに対応してしまった、吉田さんはすっかり笑顔になり、「こんな良い子に指導してもらえるなんて幸せだわぁ」と大満足で帰って行く。

「ふぅ〜! 吉田さま、めっちゃ優しくて良い人でした〜!」

汗ひとつかかず、爽やかに戻ってくるあげは。

「ひゃー…あの人難しい人なのにすごーい」

ほのかは感心している

(……本物だ。ただのギャルじゃない。患者さんの心を開くコミュニケーションの天賦の才を持ってる……!)

指導薬剤師として感心する俺の横で、物陰から様子を窺っていた2人は過去最大級の衝撃に打ち震えていた。

「……嘘でしょ……。あの吉田さまを、ものの3分で陥落させたというの……!?」

調剤室の陰から覗いていた氷室涼香が、眼鏡の位置を直しながら戦慄していた。

「な、なんですかあの子のポテンシャル……! 見た目完全なギャルなのに、接客技術と愛嬌がプロレベルなんですけど……! 私のコスメ接客のポジションまで脅かされてます〜っ!」

有栖川まひろが、売り場のPOPを握りつぶしそうな勢いで焦りを露わにする。

ほのかは自室のバッグについた『サイジョーくん』のぬいぐるみをギューッと抱きしめる。

ただの「チャラチャラしたギャル」なら排除(警戒)するのも容易かった。

だが、「圧倒的な胸囲」+「優秀な知識」+「神レベルの対人コミュニケーション能力」という無敵のハイブリッド。

3人の中で、「このままじゃ拓海先生(エリア長)を完全に奪われる」という危機感が限界突破した。

「陣内先生ぇ〜! 午後の投薬チェック、一緒にやってくれますかぁ〜?」

昼休み明け、あげはが「先生♡」と無邪気に距離を詰めてくる。

「あ、ああ、もちろんいいよ。涼宮さん、本当に飲み込みが早くて助かる――」


「陣内さん…そろそろ日誌記載の時間でも作ってあげたらー?調剤室の監査業務は私が手伝うので! ほら、涼宮さんはまとめノートを綺麗に整理するのー」

涼香が割って入り、壁のように俺をガードする。

「もー何か私がよくわかんない難しい話ばっかりしてーエリア長〜! コスメコーナーも一緒に確認してくださいよー! ほのかちゃんやあげはちゃんだけじゃなくて、私にも『指導』してくださいーっ!」

まひろが俺の反対側の腕をガシッと抱え込み、必死のアピールを始める。

「拓海先輩っ! 私にだってかかりつけにしようとしているファンの方いるんですから!まだ経験年数少ないからかかりつけにできないけど〜今日の夕方の服薬指導、涼宮さんに負けないように完璧にやりますから! 私のこともちゃんと見ててくださいねっ!」

ほのかが真剣な眼差しで、俺の目の前まで顔を寄せてくる。

「えっ、なになに〜? みんなで陣内先生の奪い合いですかぁ〜? 超ウケる〜♡ モテモテで大忙しですねっ♪」

渦中のあげはは、パチパチと手を叩いて楽しそうに爆笑している。

(……あかん。優秀な実習生が来たと思ったら、店舗のラブコメ圧力が過去最高値まで跳ね上がってしまった……!!)

指導薬剤師としての誇りと、ヒロイン3人からの猛烈な対抗心、そしてあげはの無自覚な距離の近さ。

あらゆるプレッシャーが俺の胃袋へ一気に集中する。

「あ、あのさ……みんな、業務中だから……落ち着いて……うっ…」

みぞおちに激しい痛みが走り、俺はそっとポケットに手を伸ばした。

(頼む……ラベール胃腸薬プレミアム……! 11週間の実習期間が終わるまで、俺の胃を……命を持たせてくれ……!)

俺は3人の熱視線とギャルの爆笑に包まれながら、本日何度目かの胃薬を一気に喉へ流し込むのだった。

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