熱きバトルフィールドと、15点差の絶望
全社オータム新人研修のバトルフィールドが開幕! 慶旺卒の御曹司・生駒遼が圧巻の座学98点&店舗売上80点満点を叩き出し、合計15点差でほのかを絶望の淵へ追い詰めます。陣内の胃と汗が止まらない中、残された最後の希望「20点満点の症例検討」へ突入する熱狂の展開をお楽しみください!
全社オータム新人研修の会場――そこはまさに、研修という名の熱きバトルフィールドと化していた。
「ふむ……テキストは何周も読み込み、完璧に叩き込んである。事前集計のドリンク・OTC物販実績も、僕が所属する店舗がダントツのトップだ……」
高級ブランドのスーツをスマートに着こなした男――生駒遼は、自分の指先を眺めながらナルシスティックに微笑んでいた。
「流石僕だ……完璧すぎる……!」
隣の席に視線をやると、そこには鬼気迫る形相で直前までノートを見返す白石ほのかの姿があった。
(フッ……我が“妻”になる女だ、流石だな……。気合が全然違うではないか……! そうこなくては!! 我が太正製薬の代表取締役の妻にはなれんなぁ!!)
ほのかがキッと強い視線を生駒に向けた。
自分を畏怖するでもなく、真っ向から勝負を挑んでくるその凛とした激しさ。ただ受け身になって甘い声をかけてほしがっている周囲の女子社員たちとは、完全に一線を画していた。
(ゾクゾクするぞ……! 白石ほのか……!!)
生駒は口角を上げると、チラリと会場の後方へと視線を送った。
そこには、研修の引率・監督役としてパイプ椅子に腰掛けている男――陣内拓海の姿があった。
(あれが……陣内拓海か。確かに西城大をトップで出て最年少エリア長になっただけあり、締まった体と油断のない眼差しをしている……)
だが、生駒は鼻で笑った。
(だが、一庶民である奴がこの僕を超えることなどできん! 出身大学も家柄も実績も、僕がグループ最強だ! フッ……その男に一途な白石ほのかが僕に屈するところが、ますます見たくなったぞ……!)
やがて厳粛な空気の中、緊張の座学テストが終了。
採点が完了し、スクリーンに結果がババンと映し出された!
『【座学テスト結果】生駒 遼:98点』
「「「「おおおっ…………!!??」」」」
会場内が大きくざわついた。
(ぐっ……1問ミスっただと……!?)と生駒が苦眉を寄せかけた瞬間、司会進行の社員がマイクで叫んだ。
「素晴らしい! 98点は全社新人研修における【過去最高点タイ記録】です! 過去にこの記録を出したのは……現・白鳥駅前店薬局長の氷室涼香さん以来となります!」
生駒はフッと不敵な笑みを復活させた。
(氷室涼香……確か白石ほのかの師匠か。やるではないか……!)
続いて、ほのかの点数が表示される。
『白石 ほのか:91点』
ガタッ……! と音を立て、ほのかがその場にパタリと崩れ落ちた。
「ぐっ……!! 91点取ったのに……! 生駒に7点も差をつけられた……! でもっ……でも店舗実績は白鳥駅前店だってオータムフェスで凄く頑張ったんだから……!!」
(ふっ……愚かな。ドリンクの王たる僕に勝てるとでも……?)
さらにスクリーンには、同じ白鳥駅前店から参加している小寺結衣の点数も踊った。
『小寺 結衣:84点』
(ほう……小寺結衣とやらも、あの難問テストで84点とはなかなかやるではないか……。だが、所詮は僕の敵ではない!)
そして、運命の店舗売上・業績点の発表へ――!
『【店舗売上・貢献度評価】生駒 遼:80点(満点・過去最高点)!』
『白石 ほのか:72点 / 小寺 結衣:72点』
ドサッ……!!
ほのかはついに机に突っ伏し、絶望に身を震わせた。
オータムフェスで驚異的な売り上げを叩き出した白鳥駅前店だったが、太正製薬の強大なバックアップと大量のドリンク物販を誇る生駒の店舗には、惜しくも及ばなかったのだ。
生駒は高らかに笑い声を上げた!
「ハッハッハ! 白石ほのか! 僕が優秀すぎて、座学と売上だけですでに15点も差がついたぞ!! あとは任意提出の【症例検討(20点満点)】のみだ!! 僕に勝つには、君が20点満点中『16点以上』を取らなければならん! もはや不可能!! 僕は高みの見物をさせてもらうとしようかね!!」
高慢に言い放つ生駒の横で、ほのかは悔しさに唇を噛み締め、ポロポロと涙を浮かべた。
【会場後方・陣内拓海】
「あ……あかん……! 相手が悪すぎる……ッ!!」
後方で見守っていた俺――陣内拓海は、滝のような冷や汗を流しながらガクガクと震えていた。
慶旺卒の秀才・生駒遼の圧倒的すぎるスペックと、叩き出された「15点差」という絶望的な数字。
そして、神崎課長が企む謎の『生駒のフィアンセ決定化プラン』が頭をよぎり、胸騒ぎと変な汗が全く止まらない!
(15点差……! 任意提出の症例検討で16点以上を取るなんて、過去の新人研修でも一度も聞いたことがないぞ……!? 一体どうなってしまうんだーーーっ!!)
俺は胃を激しく鷲掴みにされるような痛みに耐えかね、ポケットの中で『ラベール胃腸薬プレミアム』の袋を固く握りしめながら、奇跡を祈るように壇上を見つめるのだった。
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