東西バトルと、絶望の点数配分
まひろとのデートから帰宅したのも束の間、白鳥駅前店へ嵐のように現れた神崎葵統括課長!
夫(神崎誠)のブロックに所属する最強の刺客・生駒遼の存在と、絶望的な点数配分【座学100・店舗業績80・臨床報告20】を突きつけ、ほのかと涼香を追い詰めて去っていく大悪魔の暴走劇と、巻き添えで胃をクラッシュさせる陣内のドタバタ劇をお楽しみください!
府中でのまひろちゃんとの甘く平和なデートを終え、帰宅したのも束の間――。
バターンーーーーッ!!
「はいはいはい! またもや白鳥駅前店に葵ちゃんが乗り込んできたわよーーーっ!!」
いつも通りドアをけたたましく開けて突風のように現れたのは、本部の統括課長にして「本部の悪魔たん」こと神崎葵だった!
「神崎課長……っ!? いきなり何を!」
俺(陣内拓海)とまひろちゃんが呆然と立ち尽くす中、神崎課長は調剤室で鬼の形相でノートに向かっている白石ほのかの姿をニヤニヤと見つめた。
ガリガリガリガリガリガリッ……!!
普段の可憐で穏やかな「白衣の天使」からは到底想像もつかない、鬼神のごとき集中力でペンを走らせるほのかの異様な姿に、俺とまひろちゃんは寒気を覚えて慄いた。
「やってるようね……白石ほのか。ハロウィンキャンペーンの次は、いきなりスポ根漫画のような激しい熱量……面白いじゃない……♪」
ほのかがガタッとペンを置き、メラメラと燃える瞳で葵課長を見上げる。
「神崎課長……っ!」
神崎課長はフッと口角を釣り上げ、悪魔のような笑みを浮かべた。
「でも残念ね……! 今回の『オータム最優秀新人賞』は……私たち神崎夫妻が勝たせてもらうわ!!」
「「「「!!??????」」」」
全員が目を見開いた。
「最優秀新人賞でしょ? 貴女が狙っているのは」
「はいっ! 絶対に生駒には負けません!」
「ダメよ……! ウチの旦那(神崎誠)が統括する東京東部ブロックに所属している生駒遼が! 今回の新人賞は絶対に取らせてもらうわ!!」
「なっ……!?」
神崎課長は腕を組み、誇らしげに言い放った。
「ヤツは私立薬系最強の慶旺大学出身、かつ大手製薬『太正製薬』の将来の副社長が確約されている男……! 我が神崎エリア最強の新人であり、これから当グループと物販・ドリンク事業で密に連携を取り合う超・重要人物よ! 彼とあんな約束をしていたなんてね…最優秀新人賞は彼がかっさらい、貴女は彼のフィアンセになってうちのグループの結束を強めるしかないようね!?」
「そうは……そうはさせませんわッ!!」
涼香さんが、ガタッと立ち上がって叫んだ。
「白石さんは拓海さんのために、そして自身の薬剤師としてのプライドのために戦っているのです! いくら本部の課長命令でも、そんな理不尽な言い分は通りませんわ!」
「フッ……威勢がいいわね、氷室薬局長♪」
神崎課長はポケットから一枚の研修概要用紙を取り出すと、指でトントンと叩いた。
「あなたたちに『オータム新人研修の点数配分』を教えないのはフェアじゃないかと思ってね、今日は親切に教えに来てあげたのよ!」
「点数配分……?」ほのかが息をのむ。
神崎課長は悪魔の笑みを深めた。
「配点は全部で200点満点……! ズバリ! 【座学テスト:100点】! 【店舗業績・貢献度:80点】! そして任意提出の【臨床症例報告:わずか20点】よっ!!」
「「「「なっ………………!!????」」」」
ほのかと涼香さんの顔から、一瞬で血の気が引いた。
「症例報告が……たったの20点……!?」
「そうよ? はじめから生駒は臨床報告なんて取りに行かないわ! だって彼の狙撃ポイントは座学と店舗物販の数字だからね! 180点中、99%の点数を生駒は確実に叩き出してくるわ……。あなたは200点満点中、残りのわずかな枠で戦うことになる……いいハンデじゃない!」
神崎課長はクックックと肩を揺らして嘲笑した。
「小寺結衣ちゃんも今回の研修対象だから一緒に行くけれど……白石ちゃん、骨を拾いにこの葵ちゃんが白鳥駅前店に応援にだけ来てあげるわね……♪」
顔面蒼白になって震えるほのかと涼香さん。
圧倒的な数字と戦略の壁を突きつけられ、言葉を失っている。
「ククク……存分にかかってくるがいいわ……白石ほのか! 慶旺トップの生駒を相手に、一体どんな意地の『臨床症例報告』を見せてくれるのか……楽しみにしているわよ!!」
バターンッ!!
言いたいことだけをマシンガンのように言い捨て、神崎課長は嵐のように去っていった。
「……ぐはっ……っ!!」
静まり返った室内で、俺――陣内拓海は、突如として襲いかかってきた激痛に胃を押さえて崩れ落ちた。
せっかくまひろちゃんとの府中デートで平和を取り戻し、胃薬なしで穏やかな休日を過ごしていたというのに――。
東西のブロックを巻き込んだ『神崎夫妻の代理戦争(生駒vsほのか)』の巨大すぎる規模と、あまりにも残酷な20点という臨床報告の配点。
(あ、あかん……! 東西バトルだかなんだか知らんものに巻き込まれているっ!)
俺はダラダラと冷や汗を滝のように流しながら、ガクガクと震える手でポケットから取り出した『ラベール胃腸薬プレミアム』を喉奥へ流し込むのだった。
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