白石ほのかの宿敵と、調剤室の同盟
まひろが府中デートで不在の調剤室で、白石ほのかの宿敵――慶旺大学出身&太正製薬御曹司の超絶高慢イケメン薬剤師「生駒遼」の存在が発覚! 陣内エリア長を「ただのドラッグストアの課長格」と見下す生駒を倒すため、ほのかと涼香が熱いタッグ(同盟)を組むドタバタ&熱血エピソードをお楽しみください!
ガリガリガリガリガリガリッ……!!
有栖川まひろが府中での出張&デートで不在の『ドラッグラベール白鳥駅前店』の調剤室。
静まり返る薬局内に、白石ほのかが狂おしいほどの勢いでペンを走らせるノートの音が響き渡っていた。
その尋常ではない殺気に耐えかね、調剤監査の手を止めた氷室涼香がおそるおそる声をかける。
「あ……あのう、白石さん? 一体どうされたの……? ノートが破れそうな勢いですけれど……」
ほのかはガタッと椅子を鳴らして立ち上がると、メラメラと青い炎を瞳に宿して涼香に詰め寄った!
「薬局長ぉ……っ! 私には……私には絶対に倒さなければならない【宿敵(男)】が居るんです……ッ!! 次の『全社オータム新人研修』で、私はソイツを完膚なきまでに叩きのめさなきゃいけないんです……っ! 私に勉強の指導、協力してくださいっ!!」
「いつになく熱い執念ね……! 一体どうしたというの?」
ほのかは悔しそうに歯噛みをしながら、事の経緯を語り始めた――。
【白石ほのかの解説:宿敵・生駒遼】
「私の同期には……『国宝級イケメン薬剤師』にして、慶旺大学薬学部出身、さらに大手製薬会社『太正製薬』の御曹司である、生駒遼という男がいます……!」
「太正製薬の御曹司……!?」
「はい……! 彼は春の合同新人研修の時、女子社員たちにチヤホヤと囲まれながら、私に向かってこう言い放ったんです……!」
『フッ……君が噂の白石ほのか君だね。確かに同期の中で一番可憐なようだ……。僕の“妻”にしてあげても良いぞ?』
「なっ……!?」と涼香はボルドーの唇を尖らせた。「なんて不躾で高慢ちきな男なのかしら! 酷いですわ!」
「まあ、そこは別にいいんです! 相手にするのもバカバカしいですし! 問題はそのあとです……!」
ほのかは拳をギュッと握りしめた。
『僕は太正製薬社長の次男だ。恐らく本社の社長職は兄が継ぐだろう。だから僕は、ドリンク・OTC物販のメインクライアントであるこのドラッグラベールに研修として入社した。僕の妻になれば、将来の取締役の妻になれるのだよ!』
「そうやって上から目線で言われたんですが……私には当時から『気になる人(拓海さん)』がいることが周りの同期にもバレバレだったので、見かねた周りの女の子たちが庇ってくれたんです。『彼女には気になる別の方がいらっしゃいますし、私たちとお話ししましょう!』って」
「素晴らしい同期の連携ね!」
「ですが……生駒のヤツは鼻で笑って『誰だそれは?』と聞いてきたんです。誰かが『陣内エリアマネージャーです』と答えたら……アイツ、なんて言ったと思いますか!?」
ほのかの額に青筋が浮かぶ。
『ハッ……ただのドラッグストアの課長格風情ではないか。そんな男より、僕を選び給え!』
「「……っ!!」」
涼香の目つきが一瞬で冷酷な氷のように変わった。
「そう言われた瞬間、私、頭に血が上っちゃって! 『先輩は西城大学薬学部をずっとトップで走り抜けて、29歳の最年少でエリア長に上り詰めた凄い人なんです! あなたなんかに馬鹿にされる筋合いはありません!』って言い返したんです!」
「よく言ったわ、白石さん!!」
「そしたら生駒の奴……『フッ、なら秋の【最優秀新人決定戦】で、僕より上位を取ってみせ給え。僕に勝てなければ拓海とやらの評価もそこまでだ……諦め給え。まあ、僕が圧勝するのは目に見えているがね』とか言ってきたんですーーーーっ!!」
話し終えたほのかは、ゼーゼーと肩で息を荒げた。
「絶対に……絶対に負けたくないんです! 拓海さんの努力も実績も馬鹿にしたアイツを、新人研修のテストで絶対にボコボコにしてやるんです!!」
話を聞き終えた涼香は、静かに白衣の袖をまくり上げると、ガッとほのかの両腕を強く掴んだ!
「本気で許せませんわね……その生駒とかいう男……ッ! 家柄と出身大学のネームバリューだけで……現場での『臨床能力』や『患者様への誠実さ』が変わるわけではないことを、思い知らせてあげるわ!!」
「薬局長……っ!」
「私も協力しますわ! 私の持てる薬学知識と試験対策テクニックの全てをあなたに叩き込みます! 一緒にその鼻持ちならない御曹司を完敗させて差し上げましょう!!」
「はいっ!!」
ガシッと固い握手を交わし、陣内拓海の名誉と愛のために最強の【同盟】を結成した涼香とほのか!
二人の背後でメラメラと燃え上がる執念の炎を前に、転属してきた小寺結衣と実習生のあげはは「うわぁ……白鳥駅前店の女性陣、全員熱量がヤバすぎるっしょ……」とドン引きしながら震え上がるのだった。
【その頃、府中から戻る電車内の陣内拓海】
「……はっくしょんっ!?」
まひろとの平和で甘い府中デートを終え、電車内で余韻に浸っていた俺――陣内拓海は、派手なくしゃみをひとつ漏らした。
(……ん? なんだか急に背筋がゾクッとしたな。風邪か……?)
自分が知らぬ間に「ただのドラッグストアの課長格」と生駒に煽られ、そのために店舗の2大トップ(涼香&ほのか)がガチ同盟を組んで激しい猛勉強を開始したことなど、知る由もない。
「まあ、今日は胃薬も飲まなかったし、まひろちゃんとも二人だけの秘密ができたし……本当に平和な良い一日だったな!」
俺は胸の『ラベール胃腸薬プレミアム』にそっと感謝しながら、ほくほく顔で帰路につくのだった。
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