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美人だらけのドラッグストアで胃薬が止まらない件  作者: 薬師寺 あかね


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ロマンチストな秘密と、フリッカージャブ

シュガーさん直伝のフリッカージャブ作戦を完璧に実行に移したまひろ! 過度なスキンシップを封印し、純愛映画『来世でも、君を見つける』と男性グループ「MiLK」が好きという陣内のロマンチストな素顔を引き出し、二人だけの秘密を共有。圧倒的な手応えを掴んだ甘く温かなエピソードをお楽しみください!

俺――陣内拓海は、人には決して言えない「密かな秘密」を抱えている。

実は俺、根っからの純愛もののドラマや映画が大好きなのだ!

普段は仕事と勉強一筋の堅物として通っているが、本当は意外とロマンチストな一面がある(笑)。

今日は勉強会のあとに府中サントゥリーのビール工場見学、そして映画館へ行く予定になっている。……が、一緒に来ているのはあの小悪魔な有栖川まひろちゃんだ。

(……我慢せねば。まひろちゃんが選ぶ映画なら、きっと流行りの胸キュン恋愛映画か定番のホラーだろう。実は俺……若干怖いのが苦手なんだよな。どう提案してくるだろうか……)

ふと、移動中に聴いているお気に入りの音楽が脳裏をよぎる。

俺は男性グループ『MiLK』の楽曲が大好きだ。別に男色というわけではない! アップテンポで心地よいリズムが作業や移動の効率を爆発的に上げてくれるのだ。

(……そう言えば、涼香さんはどんな音楽が好きなんだろうか。歌とか聴くのかな……『私が彼女だもん!』が頭から離れない……っていかんいかん! 今日はまひろちゃんと来たんだから! 怒られるぞ……!)

自分の思考を打ち消すように首を振ると、待ち合わせ場所でまひろちゃんが可愛らしく手を振っていた。

「拓海さん! 拓海さん!」

俺を呼ぶ声。今日のまひろちゃんは秋らしい落ち着いた装いで、いつもより露出が少なめだ。

……正直、かなりホッとした。

普段はおっぱいが腕に当たると、そこから先脳内で何が起きているのか完全に分からなくなってしまうのだ。

POPコンテストの時に「過度なスキンシップは封印する」と言っていたが、彼女にとっては過度でなくても、俺にとっては十分すぎる刺激があるのだから……。

(くっ……どう出る……!?)

と身構えたが、まひろちゃんは隣に並んで歩き始めたものの、今日はおっぱいを当ててこなかった。

ふぅ……安心だ……。

(……正直、少し寂しいかも。触りた……って俺は何を考えてるんだーーーーッ!?)

サントゥリー武蔵野ブルワリーでつぎたての『ザ・プレミアム・モルツ』を美味しく試飲したあと、まひろちゃんがグラスを置いて首を傾げてきた。

「ビール見学のあとは何を見ましょうね?」

「あっ……まひろちゃんの好きなやつでいいよ?」

「だめですー(ぷくーっ)」

可愛らしく頬を膨らませるまひろちゃん。

「私、拓海さんのこと知りたいの♪ 他の2人(涼香さんやほのかちゃん)は知らない……拓海さんの大好きなもの、教えて?」

お酒の勢いに頼らず、真摯に自分の内面に向き合ってくれるまひろちゃん。

その素直な瞳に後押しされ、俺は今まで誰にも言えなかった「MiLKの歌を聴くと気合いが入ること」や「実は純愛ものの映画が好きなこと」を、ビールを飲みながら照れくさそうに明かした。

過度なスキンシップがなく、胃も至極平穏。

ニコニコと俺の話を嬉しそうに聞いてくれるまひろちゃんは、いつもよりずっと可愛らしく見えたのだった。

映画の演目は、俺に選ばせてくれた。

選んだタイトルは――『来世でも、君を見つける』。

50年間連れ添った夫婦。認知症が進んだ妻は夫の名前を忘れ、夫を「知らない人」として扱うようになる。それでも夫は毎朝初対面のように自己紹介をし、妻を新しくデートに誘う――。

スクリーンに映し出される深い愛の物語に感服し、俺はボロボロと大きな涙を流してしまった。

隣を見ると、まひろちゃんが優しく可愛く微笑みながら俺を見つめていた。

(……まひろちゃんって、こんなに可愛い感じだったか……?)

胸の奥がじんわりと温かくなり、少しだけ安心する俺。

帰り道、駅前のCDショップに立ち寄り、MiLKの最新シングル『超絶愛してる』を購入して解散となった。

【府中駅・改札前】

拓海さんを見送ったあと、私――有栖川まひろは、今までにない凄まじい「手応え」を感じて震えていた。

(……っ! シュガーさん直伝のフリッカージャブ……いいじゃないのよーーーーッ!!)

あの薬局長もほのかちゃんも知らない、拓海さんの秘密。

『純愛もの好き』『MiLK好き』……ふふふ……!

(意外だったわ……! 純愛ものが好きだなんて……可愛すぎるじゃないのよ!? 拓海さんのあの少し浮世離れした雰囲気も、こういう純粋さから来てたのね……!)

私の過度なスキンシップを抑えていたつもりだったけれど、それでも拓海さんにとっては「過剰な刺激」だったなんて思ってもみなかった。

相手の警戒を解き、心の一番柔らかい部分にそっと触れるフリッカージャブ。

(今度白鳥駅前店に来ないかしら……シュガーさん……! 完全に見当違いの攻め方をしてた私を救ってくれた女神だわ……!)

今日は、これまでのどんなデートよりも楽しかった。

まひろはいつにない確かな手応えを全身で掴み取り、すっかりシュガーさんの大ファンになって帰路につくのだった。

【その頃、陣内の自宅】

「ふぅ……今日は本当に良い休日だったな……」

自室のソファで『超絶愛してる』を流しながら、温かいお茶をすする俺――陣内拓海。

胃の痛みは一切なし。まひろちゃんとの秘密を思い返しながら、俺の心と胃袋は至極健やかに満たされていた。

「うん……たまにはこういう平和な一日も悪くないな……」

俺はニコニコと微笑みながら、MiLKのリズムに合わせて優しく指を鳴らすのだった。

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