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美人だらけのドラッグストアで胃薬が止まらない件  作者: 薬師寺 あかね


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涼香の思考回路と、地獄の倍プッシュ

昼間の大暴走告白を経て完全に脳内フィルターが「拓海さんの彼女」モードへ覚醒した涼香(リアル美月ちゃん)! 自宅アパートに上がり込んで語彙力とIQが激減しながらも幸せいっぱいの涼香と、意地のおつまみ対決を繰り広げるほのか&まひろ、そして視線のやり場に困り倍量の胃薬を流し込む陣内のドタバタ劇をお楽しみください!

私、氷室涼香は、空前の混乱の渦の中にいた。

大好きな女優・美月ちゃんが主演を務める大ヒットオフィスラブコメドラマ『社内恋愛は御法度です!』。

あの作品を、私は一体何周鑑賞したことだろう。もはや全てのセリフと胸キュンシーンを空で再現できるレベルに達している。

そして……何度も何度もドラマを繰り返し観ているうちに、私の脳内にはひとつの「真実」が打ち立てられてしまったのだ。

(そうよ……私は、拓海さんの彼女だったんだわ……っ!)

我ながら、客観的に考えれば「相当キモい思考回路に陥っている」という自覚はある。

だが、仕方がないではないか! これまで三十近く生きてきて、男性を好きになったことなど一度もなかったし、恋愛になんて微塵も興味がなかったのだ。

そんな私が初めて心から恋に落ちてしまったのだから、感情のキャパシティが完全に決壊してどうにかなりそうなのだ!

(さっきのショッピングモールでは……私、とんでもない爆弾発言をしてしまったわ。どうかしていたわね……)

だが――後悔はしていない!

もしあんなに泣きじゃくりながら「私が彼女だもん!」と公開告白して、それでも私の気持ちに気づかないというのなら……拓海さんの恋愛センサーは完全にバグっている!私と同じ穴の狢だわ

(でも、良いわ! 私、拓海さんの前なら何回だって言えるもの! 自分でも自信があるわ……多分、私が世界で一番拓海さんを愛している! だって、さっきの私の告白を見た有栖川さんと白石さん、あまりの熱量にドン引きしていたもの……!)

ふと見ると、拓海さんの妹・有珠さんが、お兄ちゃんにおねだりしながらニコニコと笑っている。

(それにしても……妹の有珠さん、異常なまでに可愛らしいわね。拓海さんに目元が似ているからかしら? 世間一般の男の人から見たら、有栖川さんや白石さんの方が人気かもしれないけれど……私にとっては有珠ちゃんがダントツで一番可愛いわ。なんなら今すぐ抱きしめてキスしたいくらいだわ……♡)

はっ……! と我に返る。

訳が分からない妄想を繰り広げているうちに、私はいつの間にか拓海さんの自宅アパートの室内に鎮座していた。

すっきりと整頓された、ミニマリストな2LDKの空間。

部屋全体から漂う、大好きな拓海さんの清潔で優しい匂い……。

(あぁ……だめだわ……頭がポヤポヤして、語彙力が小学生レベルまで低下していくのが分かるわ……。今の私の薬学的な知識と学力、たったの「5」くらいだわ……ゴミね……)

けれど、もう知ったことではない! 今夜は最大限にこの空間を楽しむのだ!

私はドサクサに紛れ、リビングの隅に畳まれていた拓海さんの綿毛布を膝に掛け、そのぬくもりを全身で噛み締めた。

(……もしかして私、ただの変態なのかしら……?)

ふと冷や汗が流れる。

明日から、職場で有栖川さんと白石さんの前で「氷室薬局長」として威厳を保てるのだろうか。

見られてしまったのだ。いい大人が、ショッピングモールの真ん中で泣きじゃくって甘甘なダダを捏ねる姿を。

(……でも、最初は引き気味だった二人も、今はキッチンで拓海さんのためにおつまみ対決に夢中になっているわ……。ふふっ、なんだかあの二人も、一生懸命でとっても可愛らしいわね……♪)

語彙力「5」になった私の脳内は、ただただ幸福なピンク色の霧で満たされていくのだった。

一方その頃――。

「あ、あの……みなさん? 俺、どこに目をやればいいのか全く分からないんだけど……」

自室の真ん中で、俺(陣内拓海)は完全に立ち尽くしていた。

ソファには、俺の綿毛布を頭までスッポリと被り、「拓海さんの匂い……♡」とボルドーのリップを引いた顔をトロけさせてポヤポヤしている涼香さん。

キッチンでは、「先輩! 私特製の『胃に優しい出汁巻き卵』できましたよ!」と割烹着姿(持参)で胸を張るほのかと、「拓海さ〜ん! ビールが進む『小悪魔風ピリ辛枝根』食べてくださいっ!」とショートパンツ姿でアピールしてくるまひろが、火花を散らして料理バトル。

そして妹の有珠は、その光景を動画で撮影しながら缶チューハイを美味そうに煽っている。

(あ、あかん……!! 目の毒すぎる!! 視線のやり場がどこにもねぇぇぇーーーーッ!!)

自分の部屋でありながら全く居場所がなく、全ヒロインからの凄まじすぎる愛の奔流と刺激に、俺の心臓と胃袋は留まるところを知らない大ダメージを受けていた。

「くっ……! こうなったら……飲むしかないッ!!」

俺は震える手でポケットから『ラベール胃腸薬プレミアム』を二袋取り出すと、激しく悲鳴を上げる胃袋に向けて、禁断の【倍量同時投入(※注:皆様は用法用量を正しくお守りください!)】を一気に喉奥へ流し込むのだった

「少しでも『面白かった!』『続きが気になる!』と思ってくださったら、下部の【★で評価する】や【ブックマーク】を押していただけると執筆の大きな励みになります!」

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